この春、
おとは、
やたら桜を眺めては喜んでいるようです。
よほど暇になってしまったのだ、
と思ってしまい、
私は大粒の涙を流します。
鬼じゃなくて、
犬の目にも涙です。

しかしながら、
煙草やお酒こそやりませんが、
じっくりと見るわけでもないのですから、
どの桜も大して変わりはなく、
ぜーんぶ同じに見えてしまいます。
元来同じ桜という類なのですから、
そんなに変わるはずもないのです。
あちこち行っていろいろ見て眺めて、
あれこれしたがるのは、
人間の悪い癖なのであります。
所詮同じということが理解できないのです。
人類はわざわざ、
無駄な努力ばかりをしたがるのであります。
こんなものだ、
と諦めることが大切なのですが、
それに気付かないのであります。
犬に解ることが、
偉そうに言っている人には解らないのですから、
人はずっと永遠に、
彷徨うしかないのであります。
困ってしまいますが、
おと曰く、
それが人間よー。