朝玄関の脇で蝉が一匹死んでいました、
厳密に言えば蝉は瀕死の状態でその抜け殻とともにいたのです、
可哀想にしばらくして動かなくなってしまったのですが、
どうやら産まれたての蝉のようでした、
桜の木の下には、
屍体が埋まっていると仰ったのは梶井基次郎さんですが、
実は桜の木の上には、
パステルグリーンの綺麗で痛い毛虫がいるのでございます、
知らないうちに毒を刺すのです、
被害者は右腕を凸凹にされてかなり痛痒いようで、
やたらメンソレータムやムヒを塗りまくっているのですが、
しばらくは治りそうにもありません、
街中は夏祭りで賑わっているようです、
夏恋や夏の花々が咲きまくりです、
こちらは悲しいかな連日虫たちの話ばかりでございます、
色気がないというかなんとも申し上げようのない状態で、
私じっと空を見上げて、
コホンと咳をいたします。