思えば既に大昔のことでございますが、
もしかすると今でもそしてこれからもありそうなお話です、
カラーテレビの空き箱を竹刀で叩き、
何度も何度も叩きつけ「売るぞー」「やるぞー」と叫ぶ集団があります、
交代で入れ替わり立ち代り行うのです、
そうした全員の心を一つにするのです、
某カラーテレビメーカーの主催する、
一泊二日のカラーテレビ販売研修のクライマックスであります、
そして目標宣言をいたします、
「私はカラーテレビ5台を本日完売いたします」
「よーし」全員からの拍手です、
メーカーや関連会社の見送りを受けながら、
軽四トラックに積まれたカラーテレビと共に出発です、
売れるまでは帰って来なくて良いのです、
大事なことは売ることです、
どうして売るかを考えねばなりません、
買っていただくためにはどうしたら良いのかを考えるのです、
夜遅くなっても売れなかった私は、
最早訪問できるお客さんがありません、
そこで夜遅くても開いているところはどこかと考えました、
そして交番の見ず知らずのお巡りさんに、
カラーテレビを買ったもらったのです、
とてつもなくすばらしい美談です、
美談は全国を駆け巡ります、
メーカーから関連会社そして販売店に、
大本営発表として美談は流れます、
夜開いているところには病院もあるとだれかが言えば、
消防署もそうだとなります、
こうなると「やればできる」の大合唱が始まります、
「やらねばならぬ なにごとも」などとすごい勢いになるのです、
売れないのは努力が足りないだけで、
買っていただくお客さんはどこにでもいるのです、
悪いのは全て私の努力の足りなさであります、
売れなかった者の反省文はこうなるしかないのです、
売れない人間は犯罪者同然です、
売るかもしくはその場を去るしか、
選択肢は無いのです、
企業の研修などというものはこうした危険性を概ね孕んでいます、
これに抵抗することは構成員である限り、
ほぼ不可能です、
経済団体と国が自衛隊への企業社員の研修を想定しているようであります、
何年間か出向して研修を受けさせる計画です、
これから戦争法案が通れば、
どのようなことも容易にできるようになります、
人間は弱い生き物です、
価値観なんかはどうにでも変わってしまうのです、
非常事態を煽って徴兵制でも総動員法でもなんでも出来てしまいます、
昨日は国会を包囲する大々的なデモが繰り広げられました、
あまりにも不遜な国の暴走を許してはならないと、
犬の私も考えます。