『次の足跡』の個性的だが何かが足りない曲たち。（ときめき研究家）

『ボーイハントの方法　教えます』。
指原莉乃、島崎遥香、木崎ゆりあ、矢倉楓子の4人が歌う、古典的なテーマのアイドルソング。
AKB48にも『ボーイフレンドの作り方』という曲があったし、松田聖子の『Let’s boy-hunt』なども思い出す。
今回は、さしずめ指原先生が、若い3人に教えているといった風情だろうか。自分から誘わずに、相手から誘わせることとか、言い古されたような「秘訣」だが、それはそれで永遠の真実なのだろう。
ところどころにAKB48らしい「くすぐり」も入っていて、これは秋元康の得意技。
「脈打つ場所に軽くパヒューム」とは『恋するフォーチュンクッキー』のイントロの振り付けを想起させる。
「釣ったとしても釣られたように」とは、「釣り」というAKBワードを上手に使っている。
「男の子って信じているのよ　私たちが清純だって」とは『清純フィロソフィー』に感動したファンを、一転嘲笑うような仕掛け。これには参った。
「カレも（カレも）カレも（カレも）」というテンポのいい掛け合いは、うしろゆびさされ組『天使のアリバイ』を思い出した。

『シャワーの後だから』。
小嶋陽菜、柏木由紀、松井玲奈の3人が、ささやくような声で色っぽく歌う。SDN48にあったような曲だ。
シャワーを浴びた後で、身体が火照って仕方ない。早く愛し合いたいというようなエロティックな歌詞だ。この状況で「あなたの気持ちはわからない」もないだろうが、あまりに露骨に欲情しているので、少し引いてしまう。山口百恵の『イミテーションゴールド』のように、欲情だけでなく背後にドラマが感じられる方が、むしろそそられると思う。

『スマイル神隠し』。
てんとうむChuの3曲目。悪くはないのだが、1曲ごとにパワーダウンしている気がする。
『ロマンスかくれんぼ』の姉妹曲のようなタイトル、彼を困らせたくてちょっと隠れてみたというありがちな状況を歌った歌詞は無難。伸びやかな歌声を引き出すメロディーも悪くない。そして、7人の歌唱は相変わらず元気で瑞々しい。しかし、もっと心が揺さぶられるようなときめきの期待をしていたが、外された感覚が残る。
7人の天使を映像で見た時のときめきと、この曲だけ聴いた時のときめきの落差が大きすぎて、楽曲としての評価が厳しくなっているのかもしれない。

3曲ともそこそこ個性的な曲だが、何かが足りない。通勤中ずっとリピートで聴き続けたくなるような、圧倒的な魅力を感じない。その足りない何かが何なのかを知りたくて、アルバム『次の足跡』を聴いている。

『次の足跡』の曲に関する過去記事はこちら。
『他人行儀なSunset beach』は『涙の湘南』のプロローグ。
タイトルが少し残念な『悲しき近距離恋愛』。
『わたし　リーフ』『Stoicな美学』の元歌は？
島崎遥香『動機』の、推理小説を読むような愉しみ。
物騒な歌、『JJに借りたもの』『10クローネとパン』『確信がもてるもの』。