新・日曜炭焼き人の日記

炭遊舎のホームページで書いていた「日曜炭焼き人の日記」を引きついで書いていきます。

歴史とは何か

2020年10月12日 | 日記

 1988年に出版されたジョン・スカリー「オディッセイ/ペプシからアップルへ」を読了した。読んだのは1994年のペーパーバック判だが、アップル社がたどった軌跡を読みとることができた。著者スカリーは1988年、毎朝早起きして出勤前に自伝の原稿を書き、その日に書いた分だけをサンフランシスコ近くの自宅から米国東海岸のニュージャージーとバージニアに住む二人の編集者にAppleLinkと呼ばれるネットワークで送ったという。クリックするだけで送信できる装置がすでに設置され、実用化されていた。アップル社と出版社がネットワークで結ばれ、原稿のやりとりがクリックするだけでできた。それも1988年という早い時期にすでに可能だった。
 ひるがえって私(たち)はそのころ原稿を書いてどのような方法でやりとりしていたか。1988年といえばワープロ専用機をはじめて買った歳だったような気がする。シャープの書院という箱型の機種だった。その後ノート型になり、2年に1度のわりで買い換えたが、一貫してシャープの書院を使った。1988年当時は手書きで原稿を書かなくてすむようになった喜びを感じていた。汚い字を相手に見せなくてすむようになったことは安堵感を伴い、爽快感さえ感じさせる出来事だった。やりとりは3.5インチのフロッピーディスクを使っていた。相手方へ原稿を送るのも、自分で持ち歩くのもフロッピーディスクに入れた状態で十分だった。2000年ぐらいまで続いた。
 わずか26文字ですべてを表現できる英語と異なり、日本語の場合、何千とある漢字を含んだワープロの開発が必要であり、それは不可能に近いと思っていた。それが実現したこと自体が驚きだったのに、われわれ庶民に手の届く価格で提供されたことが画期的だった。
 いまではもちろんメールに添付する形で簡単に原稿をやりとりすることができるが、それが1988年という時期にすでにおこなわれていたことをこの本の後書きで知った。歴史を知るとはこういうことでもある。
 世に歴史好きはたくさんいる。日本全国に、世界中に史跡が遺されていて、そこを巡り歩く人がいる。私はそのような歴史とは違う、自分が知らない過去を発掘することを好む。1988年に自分がいま知っているインターネット社会の原型がすでに存在していたこと、それを知ることが楽しい。自伝を読むこと、社史(ある会社の歴史)を読むことなどを通じて、自分が知らなかった過去の世界に関する知識を今後もさらに広めていきたいと思っている。

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