ISISは昨年(2014年)タラビヤドを確保した。ISISに参加する志願兵はここを通ってラッカに行った。ISISは武器と火薬の原料を運び込んだ。火薬の原料は化学肥料である。トルコのアクチャカレの検問所はこれを黙認してきた。
今年6月16日、ISISはYPG によってタラビヤドから追い出された。
<逃げたISISが帰ってくる>
6月28日、ISISの小さなグループがタラビヤドに忍び込んだ。30日、激しい戦闘の末、ISISはタラビヤドの東部の地区を確保した。
同日、YPGは、ISISを包囲し、戦闘が開始された。
翌日7月1日、YPGはISISを追い出し、タラビヤドの支配を回復した。この日の戦闘で4人のISISが死亡した。一人は腰に巻いた爆発物で自爆した。
少なくとも3人のYPGが死亡した。
タラビヤドのYPG
<ラッカ空爆>
7月4日、米空軍はラッカに集中的な空爆を行った。4日から5日の夜間に16回以上の爆撃がおこなわれた。標的に対する精密爆撃である。シリアでは、一晩でこれだけの回数の空爆が行われたことはない。10人のISISが死亡し、多数が負傷した。
「 ISISが管理する建物と道路を破壊した」と米空軍報道官は語った。
「今回の空爆の目的は、シリアとイラクで軍事行動をするISISの能力を無力化することである。ISISが戦闘員と武器・装備を移動させる経路に爆撃を集中する。通信と輸送手段を失うことにより、ISISは大きなダメージを受けるだろう。軍事拠点としてのラッカの役割を終わらせる」。
ラッカでISISに抵抗している組織ががある。この抵抗運動の名は「ラッカは静かに殺される」という。この組織が「空爆により10歳の子供を含む8人が死んだ」と発表した。空爆の対象は次の通りであったという。
①市の中心にいるISISのメンバー
②市の入り口の検問所
③レンガ工場の大部分
5日の夜も爆撃が行われ、2夜連続の集中爆撃となった。英国の人権団体によれば、5日夜の爆撃と地上でのYPGの攻撃により、ISIS戦闘員78名以上が死亡した。
YPG は、米国にとってシリアで唯一の同盟者となっている。
米国の職員は語った。
「今回の空爆は昨年9月の空爆開始以来、最も持続的なものだ。目的は、ISISがラッカを本拠として作戦することを不可能にするためだ」。
前夜80名近い戦闘員を失ったにもかかわらず、明けて6日の朝、ISISはラッカの北50kmの町を攻撃し、町を占領した。
町の名前はアイン・イッサと言い、ラッカとタラビヤドの中間にあり、ややタラビヤド寄りである。ラッカとタラビヤドの距離は80kmである。
ISISはアイン・イッサの町の周辺にも進出しようとしたが、すぐに撃退された。町の北東部に散在する11の村はYPGが守り抜いた。アイン・イッサは、アレッポ方面とハサカを結ぶ道路が東西に走っており、戦略的に重要である。
6月16日のタラビヤドでの勝利後、6月23日にYPGがアイン・イッサ確保していた。
<有志連合、さらに空爆を継続>
7月4日と5日の空爆に続き、7月8日から12日までの4日間、有志連合はラッカのISISを空爆した。爆撃の対象となったのは、ラッカ周辺のISISの基地など、70か所を超える。ラッカに対する爆撃としては、これまでで最大である。
オバマ大統領は「我々はISISのラッカに対する攻撃を強化している」と述べた。「石油とガスの施設に対する空爆を続ける。これらはISISの活動のための最大の資金源となっている。ISISの指導層を攻撃し、宣伝活動の基盤を破壊する」。
7月8日、女性部隊も加わったYPGがアイン・イッサを取り戻した。
YPGは米国に協力する有効な地上軍となった。しかしYPGは自分たちの土地を守る戦いしかしない。シリアの他の地域で米国に協力する軍事勢力は存在しない。
米国は穏健な反政府軍を養成していているが、1000人にも達しない。お金に困って応募するが、不適格者と判断される者が少なくない。合格しても、アサドと戦うためでなくISISと戦うのだと知ると、去ってしまう。
(参考)