ロシアによるウクライナ侵攻で、政府与党内には「台湾有事」が取りざたされる中国の動きに影響を与えかねないとの懸念がある。識者も同様の見方を示し、在沖米軍の訓練が活発化する可能性を指摘。在日米軍司令部によると、在沖米軍のウクライナへの派遣予定はないという。

 「ウクライナ情勢がインド太平洋地域の安全保障環境にいかなる影響を及ぼすか、強い問題認識を持って注視している」

 陸上自衛隊トップの吉田圭秀陸上幕僚長は24日の記者会見で懸念を示し、日本の防衛力や日米同盟の抑止力・対処力を強化していく必要性を強調した。ロシアのウクライナへの軍事侵攻は力による一方的な現状変更に他ならない。「台湾や尖閣諸島周辺で同様の試みを進めている中国も、ロシアの動きを注視しているのではないか」(防衛省関係者)と分析する。

 中国の習近平国家主席は台湾統一を「歴史的任務」と位置付け、武力行使の可能性も排除していない。自民党内からは、ウクライナと台湾は「同質問題」と懸念する声が出ている。

 台湾の蘇貞昌行政院長(首相)は中国を念頭に「ウクライナ情勢に便乗して外部勢力が台湾海峡の平和と安定を破壊することを厳重に警戒しなければならない」と反応している。

 琉球大学の山本章子准教授(安全保障論)は「ロシアがウクライナ東部の武力併合を実現した場合、中国が同じ手法で台湾を武力統一しようとすることは十分に考えられる」と話す。

 そのため「在沖米軍は中国が台湾対岸に軍を展開する動きがないか警戒監視の態勢を強めているはずで、昼夜を問わない訓練は活発になるかもしれない」と指摘した。(東京報道部・嘉良謙太朗、政経部・大城大輔)