豊田剛 2018/5/09
那覇地裁が下した高江抗議活動めぐる二つの判決
米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事が進む中、移設反対派は4月下旬、組織的な抗議活動をキャンプ・シュワブのゲート前で行い、近隣住民は長時間の足止めを余儀なくされた。こうした行動に対する警備に関して、那覇地裁はこれまで、警察による検問は違法との判決を下した。その一方、反対派による民間人への「私的検問」は不問としたことに地元保守派から批判が出ている。(那覇支局・豊田 剛)
違法行為にお墨付き与えるな、反対派の「私的検問」受けた依田さん
キャンプ・シュワブのゲート前で車道に飛び出す移設反対派=4月25日午前、沖縄県名護市辺野古
「奇跡の1週間」と銘打って、4月23日から28日まで、組織的な座り込みデモがキャンプ・シュワブのゲート前で行われた。通常、平日のデモ参加者はわずかだが、革新系市民団体がつくるデモの実行委員会は「ゲート前に500人が集まれば工事は止められる」と呼び掛け、期間中は連日、約500人を動員。ゲートに出入りする車両を体を張って妨害した。
デモは地元の住民にとって迷惑なものでしかなった。初日は砕石を運ぶ工事車両の通る国道329号の南向き車線が、キャンプ・シュワブのゲートを先頭に最大で4時間渋滞した。また、北向きは1時間だった。その影響で、翌日から路線バスは辺野古を避けるルートへの変更を余儀なくされた。
辺野古で飲食店を営む飯田昭弘さんは、「清明祭(お墓参り行事)のピークが終わり、期待していた矢先の反対活動で、昼間の客は激減した」と話す。従業員も国道を迂回(うかい)しての出勤となった。
それにもかかわらず、月末に開かれた辺野古区民総会では、座り込みデモについて話題にならなかった。そこで業を煮やした飯田さんはこう切り出した。
「これだけ反対派が押し寄せて公共機関も止められ、生活に支障を来している。皆は何も感じないのか」
自身の訴訟について語る依田啓示さん=4月25日午後、沖縄県東村
すると、参加者から拍手が起きたという。
2016年7月には、同様の激しい抗議活動が東村高江で繰り広げられていた。辺野古に集まる反対派は高江の米軍ヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)工事現場に集結したのだ。抗議活動がエスカレートしたことで、警察機動隊が県外から派遣されるなど、警戒態勢が強化されたが、抗議活動に伴う検問トラブルが発生し、2件の訴訟に発展した。
一つは、16年11月に、東村高江の県道で、沖縄県警の指揮下にあった警察官に車両の通行を2時間制止されたのは違法として、反対派を支援する沖縄弁護士会の三宅俊司弁護士が県に慰謝料の支払いを求めたもの。この訴訟で、那覇地裁は1月16日、県警の対応の違法性を認め、県に30万円の支払いを命じた。
判決理由で、「警察官職務執行法5条で制止が許されるのは『犯罪がまさに行われようとする場合』であることが必要」と指摘。付近の路上では抗議活動に伴う犯罪行為が起こる可能性が一定程度あったとしながらも「原告の言動からは犯罪行為に及ぶ可能性があると認めるのは困難」とした。
県警は控訴の意向を示していたが、翁長雄志知事は、基地負担に対する県民感情に言及した上で、「総合的に勘案して控訴しない」と説明した。
この事件の2カ月前には、東村在住の農業経営者、依田啓示さんが高江で移設反対派に車両を止められた。反対派による、いわゆる「私的検問」だ。男女5人とトラブルになり、うち2人を依田さんが押し倒したなどとして起訴された。この訴訟で那覇地裁は4月9日、検察の求刑通り、罰金30万円の判決を言い渡した。
依田さんは「正当防衛」と主張したが認められなかったのだ。検問については事実を認めたものの、不当性に言及していない。依田さんは、控訴審では「私的検問」の違法性が証明されることに期待する。また、県警の検問が違法と判断され県が30万円を支払った問題で、依田さんの支援者は今月中にも那覇地裁に住民訴訟を提起する意向を示している。
那覇地裁が警察の検問は違法とする一方で、民間人による検問を黙認していることについて、依田さんは「司法はこのまま過激派を含む反対派による違法行為にお墨付きを与えていいのか」と指摘する。こうした司法判断に保守派からも批判の声が強まっている。
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参考過去ブログ
沖縄、暴力革命の標的に、県警検問・控訴断念で 2018-02-25
「世界遺産 奄美、登録延期に落胆 自然保全、一層努力を /鹿児島 2018年5月5日」
https://mainichi.jp/articles/20180505/ddl/k46/040/314000c
>世界自然遺産登録を巡り「延期」の知らせが入った4日、登録を目指していた奄美(鹿児島県)では関係者にショックが広がった。
>2003年に環境省と林野庁の検討会が「遺産の登録基準を満たす可能性が高い地域」に選定してから15年。
>昨年3月には登録の前提となる国立公園にも指定された。
「世界遺産登録延期 首長ら「厳しい勧告」 驚き、体制再構築言及 2018年5月5日 10:57」
世界自然遺産 世界自然遺産登録 世界遺産登録延期 国際自然保護連合 IUCN 奄美・琉球
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-713084.html
>大宜味村の宮城功光村長は「勧告内容に驚いているが、一方で安心している気持ちもある」と話す。
>「環境省や各自治体で取り組みを進めてきたが、増加する観光客の受け入れ体制が整っていないなど準備不足な部分もあり、そこが不安要素だった」と述べ、延期となったことを契機に体制をいっそう整える考えを示した。
15年も前から登録に向けてやってきたのに、何? この言いぐさ。
鹿児島県の今回の登録範囲の屋久島と奄美では、↓のように。
「「登録延期」の波紋 奄美・屋久島では 05/07 20:23」
http://www.mbc.co.jp/news/mbc_news.php?ibocd=2018050700029390
>屋久島と奄美では観光などで連携を目指す取り組みが進んでいて、今年3月には住民やNPO団体が連携してエコツアーなどを行なう「奄美・屋久島まち歩き連絡協議会」を立ち上げたばかりでした。
やんばるの森を観光資源とみなす動きは、北部訓練場の存続を認めることになる=反基地団体に睨まれる。
があって、積極的に観光資源開発をしてこれなかった思われる。
「基地がー、基地がー」が沖縄の経済を疲弊させる。
「奄美 世界自然遺産“延期”勧告 「候補地分断」の課題は? 05/07 20:27」
http://www.mbc.co.jp/news/mbc_news.php?ibocd=2018050700029391
>候補地は、奄美大島から沖縄の西表島まで700キロほどの距離の4つの島にまたがっています。
>さらに奄美大島だけをみても9つの地域に分かれます。
>「連続性がなく、将来的な保護の継続に疑念がある」とされたのです。
>IUCNでは、ひとくくりの大面積の保護区が望ましい。
>これは欧米流の自然保護の考え。
>アメリカの国立公園もみんな大面積。
>ところが、日本の国立公園を見ると、たくさんの人が住んでいて、いろんな内容もある。
>その中でギリギリの調整をして設定されたのが、日本の国立公園。
>その国立公園の仕組みをうまく使って遺産の価値を守る。
>遺産区域には含まれていないが、バッファーゾーン(緩衝地帯)として、しっかり守るという説明をしてきたので、これが十分な理解が得られなかったというのは残念なこと
基地があるから「分断」では、ない。
そもそも、地域が分かれているのだ。
欧米流の大面積の自然保護の考えに風穴を開けようとチャレンジ。
欧米の価値観に固まっているユネスコ改革の一環だったと思われる。
【参考】
2017年6月21日にキャンプ・シュワブ前、道交法違反(禁止行為)逮捕された坂尾美知子さんは、高江の座り込み運動について↓のように語っている。
「大量の砂利 連日搬入 沖縄・着陸帯建設 森伐採悲しむ声 2016年9月30日」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-09-30/2016093015_01_1.html
>5年前から泊まり込みながらヘリパッド反対の座り込みを続けてきた那覇市の坂尾美知子さん(65)は「世界遺産にしようという森を無残に伐採するなんて本当に悲しい。圧倒的な権力の前にくじけそうになるけど、国内的にも国際的にも反対世論を高めて持ちこたえたい」と話しました。