米軍北部訓練場で進むヘリパッド建設工事に反対する東村高江の住民が起こした、「高江ヘリパッド差し止め訴訟」。10日に第1回口頭弁論が開かれ、住民側と国側が主張をぶつけ合った。だが、7月から本格的に始まった工事は12月にも終わる予定で、判決が間に合わない可能性が高い。住民側は、判決前に一時的な決定が下る仮処分に工事差し止めの望みを託す。(社会部・国吉聡志、北部報道部・城間陽介)

ヘリパッド建設工事が進む米軍北部訓練場内N1地区=12日(桐島瞬さん撮影)

ヘリパッド建設工事が進む米軍北部訓練場内N1地区=12日(桐島瞬さん撮影)

 
ヘリパッド建設工事が進む米軍北部訓練場内N1地区=12日(桐島瞬さん撮影)

 「双方、仮処分に全力を注いでほしい」。10月20日、住民側が工事禁止を申し立てた仮処分の第1回審尋で、那覇地裁の森鍵一裁判長が双方に呼び掛けた。国側には「騒音測定のデータがあれば、速やかに出してほしい」と求めている。

 森鍵裁判長は24日の第3回審尋で、国側の反論を聞き、追加の主張がなければ結審したい考えを示した。住民側の小口幸人弁護士は「裁判所も、完成前に仮処分の結論を出す必要があると感じている」と読む。

 政府は、現在建設を進めている四つのヘリパッドを12月中に完成させ、北部訓練場の年内返還を実現させる構えだ。防衛省関係者によると、7月に着手したN1地区2カ所はほぼ完成し、G、H地区も円形に木々の伐採は終わり、工事は最終段階を迎えているという。

 横田達弁護士は「抑止力や軍事戦略と関係なく、騒音で高江住民の人権が侵害されているかが訴訟の焦点。侵害が認定されれば、工事は止まる」と指摘する。

 仮処分で一時差し止めが認められなければ、工事を止める法的手段はなくなり、ヘリパッドは完成する。それだけに原告が仮処分にかける期待は大きい。

 原告の屋良洋子さん(64)は「ここで諦めてしまったら終わり。現場に駆けつけ声を上げてくれる人もたくさんいる」と前を向く。石原理絵さん(52)は「オスプレイが飛び交う下で暮らしはどうなるのか。こちらの訴えをちゃんと受け止めて判断することを信じたい」と裁判官に訴えた。

 横田弁護士は冷静に語った。「裁判官は騒音被害の実態に興味を示しており、勝機は十分ある。あとは、国の反論を待つだけだ」

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北部訓練場の過半の年内返還が決まり、来月の20日には返還式の予定である。

ということは、反対派暴徒の妨害にも関わらず、ヘリパッド建設は粛々と進んでおり、遅くとも12月20日以前には工事は完成していることになる。

今頃「高江ヘリパッド工事差し止め訴訟」など提訴しても後の祭りと言われる所以である。

高江ヘリパッド騒動では沖縄2紙や極左暴力活動家に引導が渡される寸前だ。

一方、現在開店休業中の辺野古埋め立て工事はどうなっているか。

 

ここらで辺野古埋め立てをめぐる国と県の対決について整理をしておこう。

国が、知事の埋め立て取り消しは違法であると主張して県を相手に提訴した「違法確認訴訟」は、10月16日県の全面敗訴の一審判決が出て、現在上告中である。

最高裁の判断が下るのは沖縄2紙によると、年明けになるとの見立てだが、筆者が得た信頼できる情報によると、早くて11月末、遅くとも12月一杯には最高裁で確定判決出るという。

理由は、最高裁は事実認定はせずに、高裁判決の法令違反、憲法違反を審議するので、既に審議は完了しており、もったいぶって年越しをする必要はないとのこと。

 

これ以降の論議は国の勝訴確定という前提で話しを進める。

 

最高裁の確定判決(国の勝訴)が、年内に行われたとしたら、どのようなことが想定できるか。

辺野古関連のもう一つの裁判の重要度が浮上してくる。

宜野湾市民による住民訴訟。

宜野湾市民が、翁長知事の埋め立て取り消しは、普天間の固定化につながるとして昨年10月に県と翁長知事に「取り消しの取り消し」を求めて提訴した住民訴訟のことだ。

 

原告らは訴状で、翁長知事が取り消しの根拠とした埋め立て承認の法的瑕疵(かし)について、「存する余地はない」と指摘。「個人的な政治的パフォーマンスが目的で、知事権限の乱用だ」と主張している。 

 

同住民訴訟は、「(普天間の固定化が)確定していない状況で、将来起こる(固定化する)可能性の騒音被害や危険性を訴えることは出来ない」として原告が敗訴しており、現在控訴中である。

その控訴審の第一回口頭弁論が11月10日高裁那覇で行われた。

しかし、控訴審の時点で辺野古移設をめぐる状況は大きく変化している。

先ず「宜野湾市民住民訴訟」で敗訴した時点では、国と県の「違法確認訴訟」の判決は出ていなかった。

だが、その後10月16日、高裁那覇の多身谷裁判長は、県に対し全面敗訴の判決を言い渡して、「埋め立て取り消しは、普天間の固定化につながり騒音被害や危険性があり得る」と認定しているのだ。

そして、11月10日の第一回控訴審の裁判長が「違法確認訴訟」で県に全面敗訴を言い渡したあの多身谷裁判長なのだ。

多身谷裁判長が「違法確認訴訟」で自ら下した判決を、「宜野湾住民訴訟」で否定することは100%あり得ない。

第一回口頭弁論の次回が判決日(2月7日)という前代未聞の日程にしたのも、第一回口頭弁論の時点で既に高裁判決は決まっていたという証左である。

国と県が対決する「違法確認訴訟」も、宜野湾市民が提訴した「住民訴訟」も基本は同じであるが、次の点で微妙に争点が異なる。

1)「違法確認訴訟」の場合、国は翁長知事の「(埋め立て)取り消し」が違法か否かが争点であり、最高裁で違法が確定しても、「取り消しを取り消す」という強制力はない。

2)「住民訴訟」の場合、「(埋め立て)取り消し」により普天間の固定化が生じるので、「(埋め立て)取り消し」により宜野湾市民の「生活権」が侵されるから、「取り消しを取り消せ(取り下げろ)」と請求する訴訟である。

つまり、両訴訟で県側が敗訴しても翁長知事の対応に違いが生じるのだ。

1)の場合「取り消し」が違法と確定しても、「ハイ分かりました」と一応従がう振りをして、その一方、民意を盾に「あらゆる手段で辺野古阻止」と主張する可能性がある。

2)の住民訴訟の場合、請求の趣旨が「違法性の確認」に止まらず、さらに一歩踏み込んで、「取り消しを取り消せ」であるから、翁長知事が法治国家の首長である限り、最高裁に確定判決に従がわざるを得ない。

翁長知事としては国との対決で敗訴して「取り消しの取り消し」を余儀なくされるならまだしも、当初勝訴し歯牙にもかけていなかった「住民訴訟」の判決で「取り消しの取り消し」を行うことは、「オール沖縄」の象徴を自負する翁長知事の面子は丸潰れである。

2月7日の「住民訴訟」の判決で、県民の前に大恥を晒すより、「違法確認訴訟」の上告が却下された時点(年内)で、翁長知事自ら「取り消し」を取り下げることになるだろう。

事実上の翁長知事の敗北宣言である。

 

 

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