「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

防災学の学術的な意味での母体は何だろうか

2015-04-04 23:58:36 | 防災学
土曜日午前中、入学式前なれど、学部新入生100余名への学部オリエンテーション。
合わせて教員の自己紹介も行われた。で、一つ考えたことがあった。

日本最初の防災学部である富士常葉大学環境防災学部は、
2000年4月から2013年3月まで、静岡県富士市に存在していた。
理事長の極めて強い業務命令により防災学部が潰された後、その後身として残ったのが、
社会環境学部社会環境学科(1学部1学科)地域安全コース。
学部名からも学科名からもコース名からも、防災の名前が消されているところに、
いずれ、何らかの記録に残しておかなくてはならない事情があるのだが、それはさておき。

過去はともあれ、現状で社会安全コースに属している専任教員は5名。
うち3名が建築を、1名が理学(津波)を学んでおり、4名が理系人間。
文系人間は、国際関係論を学んでいた「旅の坊主」一人。
明らかに、文系理系のバランスが取れているとは言い難いが、
学部定員100名の小さな学部ゆえ、少なくても教員間ではコースの垣根は大したことではない。
(ちなみに、社会環境学部にあと2コース、環境の自然科学系コースと、環境の社会科学系1コースがある。)

地震学や火山学、水文学や地質・地盤学を専攻している先生方に、
防災学とは似て非なるものながら、外力としての災害現象を教えてもらっているし、
(面白いもので、純然たる自然現象に関する学問は防災学そのものではないのだが、
でも、これを防災学と考えている人は意外なほど多い)
さらには、社会学、心理学、文化人類学を専攻している先生方にも、
防災を考える上で必要不可欠な周辺領域について教えてもらっている。
と、考えるならば、狭義では5名の陣容なれど、間接的なものや非常勤教員も含めれば、
広義には15名を越える方々が防災学という学問分野に携わっている、というのが本学の現状である。

東日本大震災後に防災学や地域防災学といった名称のついた大学附属の研究所が幾つも出来、
学部名でこそないが学科名に防災を冠した大学も出来てきた。

すべての大学の実情を確認した訳ではないのだが、
15名を越える教員が防災をテーマに集っている大学は、
京大防災研や東北大の災害科学国際研を別とすれば、決して多くはないと思っている。

もちろん、これでも十分とは言い難いのが、防災という学問の広さ深さ。
特に、政治学や経済学、財政学や法学の素養の上に成り立つ防災論議などは、
本学でも十分とは言えず、このような分野の充実も求められている。
(ただ、それを教え得る人物が日本にいるのか、と問われるならば、
戸惑ってしまうのが偽らざるところではあるのだが。)

ともあれ、この広さ深さに加えてそれなりの体系性を示したものが出来ればこそ、
いわば防災学原論のようなものが出来るのだろうなぁ、と思っている。
日本最初の防災学部が出来て16回目の春ともなれば、この種の著作が出来ていてしかるべき。

災害学は自然科学系の学問だが、防災学は社会科学系の学問だと思っている「旅の坊主」ゆえ、
常勤5名中唯一の社会科学系出身者として、己が果たすべき役割を果たしていなかった、
と言わざるを得ない、ということ、か……。

実際のところ、政治学か行政学か、その辺りの学問的な蓄積の上に防災学の体系を作ることが、
もっとも「座りがよい」のではないか、との思いはある。
新年度は、その辺りも含めて、しっかりをモノを書いて世に問え!という年にしなくては、
なのですよね。

改めて、己に、その覚悟を問うのみ。

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