「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

高校生中越沖地震現地調査・ボランティア体験ツアー(2日目)

2007-08-17 23:39:33 | Weblog
 8月17日

 0645集合。早起きツアーということで、7時から2時間、バスの中から
ではあったが、被災地の全体像をつかむべくいろいろと見てまわる。駅前仮設
住宅、海岸近くの仮設住宅、がけ崩れで線路が飲み込まれた信越線青海川駅、
中央跨線橋近くの震災ごみの一時集積所、鉄鋼団地、鯖石川沿いの集落、柏崎
刈羽原子力発電所、リネン、等々と、ぐるっとひとまわり。

 それにしても、東電柏崎刈羽原発の警備員の対応はおそまつ極まりない。
国道から原発入り口の写真を撮ろうとしたら、三回行って三回とも「撮るな!」
と警備員が寄ってくる。一体どういう理由でやめろというのだろうか。問い
かけても「上から言われています」の一点張り。東電が原発を見せたいのは、
広告費を盾にとって無理やりにでも言うことを聞かせられるメディアでは
あっても、普通の市民ではないらしい。東電の広告指南をしている代理店は、
よほどの無能ぞろいなのか……。ま、それはさておき。

 9時過ぎ、昨日に引き続き比角コミセンへ。ツアー参加者にそれぞれ仕事を
割り振っていただく。全員が何かしら活動できるくらいの仕事があってよかった。
高校の先生方3人はここで本隊から分かれ、本学Yさんの案内で市内の高校へ。
学校が被災するとどうなるか、職員はどう対応したか等々は、お三方にとっては
当然のことながら極めて深刻な関心事。というので、こちらは昼までの予定で
ヒアリング。

 コミセン主事のYさんから1時間近く、いろいろと説明していただく。おかげで、
ここ比角地区と比角コミセンがなぜうまくまわっていたのか、かなりイメージを
持つことが出来るようになる。これもやはり人ゆえ、か……。

 昼までにそれぞれの活動をしていた参加者が戻ってくる。12時から午後の
行動についてのオリエンテーション。仮設住宅を訪問するもよし、昨日に引き
続きまちを見て歩くもよし、ボランティアするもよし、各バディに任せることと
する。ただ、お土産を買うならば、こういうことを意識してもらいたい、という
ことで、昨日の八幡屋の話をする。バディ毎に打ち合わせの後、それぞれに出発。

 前日に引き続き、Hさんとまちを歩く。
 今回のツアーで高校生にやられたかったのは、どういう家が倒れ、どういう
家が倒れなかったのかを、自分の目で確かめるということ。地震では人は
死なない。建物につぶされて人が死ぬ。人生最大の買い物(=家)が無事
だったならば、被災後の生活再建も、まだメドが立つだろう。しかし、普通の
人はダブルローンには耐えられず、60代70代になって自宅を失うことが
何を意味するか、容易に想像できる話である。高校生が「我が家」を考える
ことは、そうはないだろう。でも、親元から離れる時や家庭を持つ時といった
節目節目に、今回のツアーのことを思い出してくれるならば、少なくとも彼ら
彼女らが震度6強レベルの地震で生命を失うことはないだろう。それが今回の
ツアーの成果だと思いたい。

 いつものように(?)、「えんま通り」の「パスタとコーヒーの店パレット」へ。
元気カレー500円、サラダ100円、ホットコーヒー350円。地震後5回目
の訪問。えんま通り商店街は、アーケードが取り外され、明るい印象を受ける。
2回目の訪問時に比べても、再開した店が増えてはいる。とはいえ、被害が
大きかったこの地区ゆえ、すべての店が……、とはいかないのが悲しい現実。

 パレットにお昼を食べにきていた自衛官に声をかける。陸上自衛隊東部方面
総監部広報担当の3佐とWAC(ワック、陸上自衛隊の女性自衛官の呼び名)の
2曹。前職の防衛研究所時代にお世話になった方がいまや東部方面総監、諸外国で
いう陸軍中将の階級に昇進された。雲の上の方であるが、お二方に託した名刺を
見て、昔を思い出してもらえれば望外の幸い。ともあれ、益々のご活躍を祈念
するのみ。

 今回の陸自の活動は、I陸将のご指導もあったのであろう、被災規模に比べて
極めて手厚い。いつでもどこでも、このレベルの活動ができる訳はない。また、
言葉遣いはともかく「過保護」ゆえの問題点もあろう。ただ……。「自衛隊の
災害派遣の研究をしたい」と言ったら「止めろ!」と言われた往時を思い出す
時、隔世の感がある。今回の災害派遣では、地元のコミュニティFM「FM
ピッカラ」に女性自衛官が生出演して自衛隊の活動報告をしていた。大いに
評価したい。

 まじめに?まちを歩いたり、被災者の話を聞いているバディもあるのだろう
が、Hさんには申し訳ないが、小村のバディはエアコンの効いた店内でもっぱら
おしゃべり。「パレット」を出て、えんま通り商店街の中ほどにある「趣味の
陶器 中村」へ。前回の訪問の際面識を得た若女将から、1時間余り話を聞かせて
いただく。

 商売をしている人への支援は、やはり物を買うこと。というので、今回は
ちょっと面白い萩焼の徳利とぐい飲みのセットをいただく。若女将と話し込んで
いる間に、チームの面々が続々と顔を出す。嬉しいことに、みんな、何かしらの
買い物をして下さった。これも(これが、かな)被災地支援なんだよ、高校生
諸君。

 こういう、こだわりを持ち、地震の前から地域活性化に取り組んでいた店には、
何がなんでもふんばってもらわなくては困る。というので、またまたお店情報を。

 趣味の陶器 中村
 新潟県柏崎市東本町2-7-46
 電話 0257-22-4041 FAX 0257-22-6926

 16時半、市役所前に集合。昨日お世話になったNHKのF記者、わざわざ
挨拶に来て下さる。全員で記念写真を撮った後、バスへ。関越道が事故で通行
止めとの情報があり、北陸道⇒長野道とまわり、静岡へ。

 車中で全員に何かしら感想を話してもらった。肉体的には大変疲れたが、
参加者の感想を聞くだけでも、大きな手応えがあった1泊2日であった。
なるべく早く、簡単でもいいから報告書をまとめなければ、という必要性も
感じた次第。

 御殿場、裾野、沼津、富士とまわり、大学に戻ったのは23時半過ぎ。
最後まで手伝ってくればYさんと学生諸君に感謝!

(8月29日 芦屋から富士に戻る新幹線の車中にて記す)


コメントを投稿