「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

プレクルソ打ち上げ

2010-11-03 23:10:55 | 国際防災協力
プレクルソ3日目(最終日)。
昨日に引き続き、PCMのセミナーが続く。

最初に同僚Kさんが、問題を分析することの重要性について、
簡単なスピーチをする。
「風が吹けば桶屋が儲かる」
とまでは言わないが、
問題の本質は、パッと見でわかるものとは限らない。
否、じっくりとした分析が必要な事例がほとんどだろう。

分析には時間がかかる。
だが、そのことをしっかりやらないと、
本当に意味ある対策は打てない。

また、この種の問題分析を行うということが、
JICAの国際協力の共通言語だ、とも。

上位の目標があり、その中で具体的な行動がある。
具体的な行動、例えばリスクマップ作りは、
もっと上位の目標があり、そのための手段として行われているのであって、
リスクマップ作りが自己目的化するようなことを、
私たちは考えている訳ではないのだ。

Kさんのスピーチを一般化するならば、
こんな感じとなろうか。

今日も第一列ではなく、事務局席に座る。
メールでの調整など行いつつ、ワークショップ全体の雰囲気を見る。

休み時間だったか、
Sリーダーから、プロジェクトの理想形についての話が出た。

プロジェクトは、

「プロジェクト・マネージャー(現地のカウンターパート機関の幹部)」
「ナショナル・コーディネーター(プロジェクトが雇用し、業務の調整に当たる者」
「JICA事務所(当地の事務所で、金銭面から活動をチェック)
「専門家(「旅の坊主」のような者)」

のカルテットで、かつ、
専門家が何を言わなくても動いていくようなものが理想なのだ、と。
2ヶ月に1回程度の定期的な情報共有の会を持てればそれで済む、
そのような状態まで持っていければ、と。

なるほど!と思うところは大だが、
さて、そのような体制(態勢)作りがどれほど大変か……。
コスタリカ一国を相手にするのでもなかなか頭が痛いのに……。

PCMのセミナーについては、いろいろと思うところはある。

分析のための枠組み(フレームワーク作り)と、
その「網の目」があればこそすくい取ることが出来た(明文化出来た)問題

一般化可能なものと個別事情の区分
分析手法の習得と、実際のケース分析の混同

ケース・スタディー用の資料をしっかりと読み込む、というよりも、
ケース・スタディー用の資料には書かれていないことまで意識をめぐらすこと

問題の構造化(あるいは可視化・図式化)の議論
(単純な因果関係や樹形図だけでは整理出来まい……)
(少なくとも、派遣前研修ではそういう話であったが???)

グループワークの人数、
グループワークとラップアップに配当する時間の割合、

等々。

それでも、最後には、何とか、
分析結果を標準的な枠組みの中に示せたようで、
研修員もそれなりの達成感を持てたようであった。

修了式、終了証の授与等、公式セレモニーも無事終了。
一旦自宅に戻り、改めて19時から会場で打ち上げパーティー。

中米だから、ではなかろう。
「同じ釜の飯を食った間柄」というのは、
日本ではもう死語かもしれないが、
この地には、それは、厳然として存在している。

同じ時間を共にし、同じ課題に取り組み、同じように悩み……。
広域プロジェクトゆえの6ヶ国+1国際機関の関係者間に、
同期としての連帯感をはぐくめるような演出を行えるかどうか。
プロジェクトに携わるというのは、そういうことでもある。

アルコール分は、我々専門家のポケットマネーから出ている。
「人づくり、国づくり、心のふれあい」とは、
JICAが昔使っていた標語なのだそうな。
心のふれあいに役立つならば、多少の自腹など安いもの。
(ただ、こういう額を経費として認めないということは、
自腹を切って当たり前と思う者が少なくなっていけば、
絶えていってしまうものかもしれない……)、

USBにダンス・ミュージックを入れて持ち歩いているのはさすが中米人。
(ただし、ダンスの技はドミニカ共和国の人間には負けるらしい……)
(まだ水曜日だというのに)まわりの迷惑省みず!
大音量でBGMを流しつつの、飲み、食べ、踊り。

結局のところ、頭での理解ではなく、
この種の人間の素の触れ合いが、
問題を解決していくのだろうなぁ、と、単純に思う。
もちろん、我々専門家の場合は、そこに専門性が求められる訳で、
飲みまくり踊りまくりの翌朝、
バシッとした講義やワークショップができてナンボ、
という話ではあるのだが。

流れ解散となり、22時過ぎ、自宅に戻る。

                           (11月6日アップ)


2 コメント

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Unknown (mayumita)
2010-11-08 18:29:21
電話ありがとうございました事前研修で、自国の防災の課題を洗いだしてから来日するのかと思っていました。PCMはどちらかというとJICAの仕事をやりやすくするためのツールであって、防災のためではないような気がします。ところで、先日の自治体職員向けの防災研修でT先生が「旅の坊主」様の名前を引用しつつ、DIGの命名は僕らなのだ!と熱く語っていらっしゃいました。
返信する
神戸での研修は今週末からですね (「旅の坊主」)
2010-11-10 14:39:25
mayumitaさま

「旅の坊主」、
今宵の宿はホンジュラスのテグシガルパです。

今週一週間はホンジュラス週間でして、

サンサルバドル→
テグシガルパ(2泊)→
チョルテカ(2泊)→
サンサルバドル

という行脚の予定です。

お説の通りで、
PCMは方法論なのですよね。
共通言語を作るという意味は認めるにせよ、
せっかく高い金を出して
あの震災の教訓を伝えようというのであれば、
もう少し別の方法はあるように思います。

それは、来年度の
「旅の坊主」の課題、
でもありますが。

T先生&熱く語る、となると、
某山口大のT先生、と見ましたが?

ご無沙汰してしまっているなぁ……。
そちらからも、よろしくお伝え下さいませ。
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