「旅の坊主」の道中記:常葉大学社会環境学部・小村隆史の防災・危機管理ブログ

日本唯一の防災学部はなくなっても、DIGと防災・危機管理を伝える旅は今日も続いています。

エクアドルからの津波防災研修のお客さまをお迎えして:津波防災は避難じゃない、土地利用だ!

2015-08-30 23:42:19 | 国際防災協力
日曜日の午後、小雨の中、毎度おなじみの静岡県地震防災センターへ。
JICAの招きで静岡に滞在中のエクアドルの防災&地方自治関係者20名ほどを対象に、
コミュニティ防災の話をさせていただく。
カタコトのスペイン語と英語で何とかなるか、と思っていたが、
ほとんどの研修生が英語は使えない、とのことで、
日本語=スペイン語の通訳さんの「強制介入」となってしまった。
(ここはちょっとお粗末でありました……。)

ともあれ、1時間弱という時間ではあったが、
日本の国際防災協力の一端を、特に住民参加型の小規模土木工事のあり方と、
津波防災について、実体験に基づいて話をさせてもらった。

その後、研修団の皆さんは、地震防災センターの映像資料や地震動の体験施設などを見学、
それなりのものを得て下さったと思っているのだが……。

今ごろになって、ではあるのだが、内閣府が作った津波防災についてのビデオを初めて見せてもらった。
(センターのスタッフが、いわば手持ち資料の紹介としてお見せしたもの。)
(今年3月、仙台での国連防災世界会議で配布されたものなのだそうな。)
なるほど、映像としては大変質の良い、お金をかけて作ったのだろうなぁ、とは思うものだった。
だが、「旅の坊主」のメッセージとは根本的に合わない。そのことを再確認した。

なぜ、世界に向けて津波防災を語るビデオを作る際、避難を中心に当ててしまったのか?
致命的な判断ミス、と思う。

これが、日本人の「下士官根性」というものか……。
あえて言えば、全世界に、日本の恥を晒してしまったのか、とすら思ってしまった……。

与えられた条件下でベストを尽くせば、それでよいのか?
何かあれば避難すればよい、ではなく、そもそも避難しなくてすむようなまちを作ろう、ではなかったか?

エクアドルの方々へのメッセージとしてこだわったのは、「危険な場所には住まない・住まわせない」ということ。
まず考えるべきは「土地利用」、Land Use Managementでなくてはならないはず。
人工構造物で守るというセカンドベストもある。避難を教えることで命を守るというサードベストもある。
でも、追求すべきは、やはり、土地利用だ、と思う。
そのことは、理解するのにそんなに難しいことなのか?それほどまでに理解してもらえないものなのか?

研修団のアテンド担当者が友人だったので、彼にも話を聞いてみたが、
来日時に彼らが行ったプレゼンの中では、土地利用についての議論はそれなりにあった、とのこと。

しかし、そのセンス(ポテンシャル)を持っていながら、
静岡の者が(内閣府の資料を使ってとはいえ)わざわざ津波避難を教えることで、
間違ったメッセージを持ち帰らせてしまうのではないか?そのことが大変気になった。

内閣府が作るものに影響力を行使し得ない現状は甘んじて受け止めるとしても、
これは違う、と思った。

そして、それを、防災先進県静岡の地震防災センターが、
海外から津波防災を学ぶために来た研修員向けのプログラムとして示すべきではない、

そのことは、今回、トータル2時間半ほどという短い時間ではあったが研修団にお付き合いして、
はっきりわかったように思う。

静岡で国際防災協力に恒常的に携わっているほぼ唯一の身として、
ここはしっかりしなくては、と思ったような次第。がんばれ自分!


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