ショートシナリオの館

ボケに抵抗するため、日常生活の中から思いつくままに書いています。月2回・月曜日の投稿を目指します。

ひな祭り

2014-03-03 07:55:02 | 日記



男雛:久々に明るい場所に出されて、いささか眩しい思いをしておったが、ようやく慣れ

    てきたぞ。そなたはどうじゃ。

女雛:眩しさには慣れてまいりました。ですが、暗い場所に置かれている時は退屈な

    らものんびりと気ままにしておりましたのに、このように晴れがましいところに

    出されてすまし顔を続けるのが、少しばかり苦痛になっているところでございま

    す。

男雛:そなたの気持ちも解らぬではないぞ。しかしながら、そう長いことではない。また、

    近いうちに暗い場所に連れて行かれるはずだから、今しばらくの辛抱じゃ。

女雛:さようでございますね。では、とびきりのすまし顔を続けることに致します。

男雛:それにしても、あそこに座って我らを見ている女の子の笑顔には降参じゃ。

女雛:ほんに、あどけなく可愛らしい笑顔でございますこと。私どもはあの娘の母親に連

    れられてこの家にやって参りましたが、あの娘は母親以上に私どものことを気に

    入ってくれているようでございますわ。

男雛:母親も我らを大切にしてくれたが、あの娘はさらに大切にしてくれそうじゃな。

女雛:あのつぶらな瞳をご覧下さいませ。純真無垢な眼差しが美しゅうございますね。

    あの娘には辛いことが降りかからないように祈りとうございます。

男雛:そちはすっかり母親の気持ちになっておるようじゃ。だがな、人生、良いことばか

    りではないはず。むしろ、辛いこと・悲しいこと・苦しいことに出会った時にこ

    そ、逃げたり取り乱すことなくきちんと向き合って、冷静な判断をし、くじけな

    いで前に進もうとする芯の強さを、あの娘には身につけて欲しいと思うぞ。

女雛:さすがでございます。まことにご立派なお考えで。まもなく私どもはまた暗い場所

    に連れて行かれますが、再びあの娘に会う日が楽しみでございますね。

男雛:そうじゃ、その時はどのような表情を見せてくれるのであろう。次に会う時のことが

    今から待ち遠しくてたまらぬわ。肩が凝ってきたが、あと少しの間、威厳のあるす

    まし顔を続けることにしようぞ。

女雛:ハイ、頑張ります。
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