まろの陽だまりブログ

顔が強面だから
せめて心だけでもやさしい
陽だまりのような人間でありたいと思います。

斎藤さんが亡くなった。

2020年09月24日 | 日記
俳優の斎藤祐介さんが亡くなった。
と言われてもすぐには思い出せない人もいるかも知れない。
この独特の風貌にご記憶がないだろうか。
しゃくれた顎がとにかく印象的で
その演技も存在感も実に個性的な俳優さんだった。



数々の映画やドラマで活躍されていて
最近はバラエティー番組などにも幅を広げておられた。
脇役と言えば脇役だったが
単なる脇役には収まり切れないようなスケールがあって
私は隠れた「斎藤さん」ファンだった。
忘れられないのは1970年代に山田太一さんの脚本で放送された
土曜ドラマシリーズ「男たちの旅路」である。
鶴田浩二さんや水谷豊の主演で
ガードマンたちの姿を通して現代の社会問題を描いた
NHKの人気ドラマだった。



その中の「車輪の一歩」という回に
斎藤祐介さんが出ておられて彼のデビュー作だった。
さまざま事情で身障者となった若者たちが
勇気を出して車椅子で社会に飛び出していくドラマだった。
人に迷惑をかけないという社会の最低限のルールに
あえて「迷惑をかけてもいいのでは」と
アンチテーゼを唱える山田さんらしい社会派ドラマで
評価も高かったしさまざな波紋も呼んだ。



障害者に対する差別や偏見と戦いながら
車椅子の若者たちは懸命に社会の中に飛び出して行く。
古尾谷正人や京本政樹の俳優陣に交じって
斎藤さんは新人とは思えぬ熱演だった。
最も「車椅子が似合う」俳優さんとして記憶に残っている。
ハンディを抱える人間の痛みを
誰よりも体現している存在感があったと思う。



とりわけ印象的だったのは
健常者と同じようにポルノ映画を観てみたい・・・
トルコ風呂で女性の肌に触れてみたい・・・
という若者の健康的な性的欲求を正面から扱ったシーンで
ことごとく拒否され門前払いされた斎藤さんは
屈辱のあまり号泣してしまう。
その体当たりの演技は鬼気迫るものがあって
脇役をはるかに超える演技だった。
そんなシーンを懐かしく思い出しながら冥福を祈りたい。