まろの陽だまりブログ

顔が強面だから
せめて心だけでもやさしい
陽だまりのような人間でありたいと思います。

あの人に会いたい

2018年05月27日 | 日記

NHKに「あの人に会いたい」という番組がある。
毎週、土曜日の早朝にやっている10分ほどの短い番組である。
NHKが保存するな膨大な映像ライブラリーの中から
毎回、時代の先駆者や各界の第一人者を取り上げ
その人となりを丁寧に紹介している。

今週は俳優の大杉漣さんを取り上げていた。
ご存じのように先日、66歳の若さで急死されたばかりで
私も仕事で何度かご一緒した経験があるだけに
その衝撃を今も引きずっている。

漣さんが役者としての原点を語るインタビューだった。
役者はどう演じるかではなく
どう生きるかが大事だと熱っぽく語っておられた。
俗に「300の顔を持つ男」とか「カメレオン」などと呼ばれ
その迫真の演技力と演技の幅は特筆すべき存在だった。
歴史上の偉人から平凡なサラリーマン、テロリストや公安刑事、
性格破綻者やホームレス、校長からヤクザまで
まさになんでもござれの俳優だった。



そんな漣さんの原点が「無言劇」にあったことは
意外に知られていないのかも知れない。
23歳の年に太田省吾の「転形劇場」に感動して研究生に。
明治大学を中退して本格的に舞台役者となる。
セリフが全くない「沈黙劇」とは一体どのようなものか?
私も一度だけ観たことがあるのだが
緊張感はあるものの実に退屈極まりない舞台だった。
私のようなテレビを生業とする放送人は
セリフに空白が出来るとすぐに「放送事故」を心配するが
空白も空白、全編、空白だらけでドッと疲れた。
そう言えば北野映画のHANA-BI』でも岸本加世子を相手役に
寡黙すぎる元・刑事役を存在感タップリに演じておられた。
沈黙嫌いの私などイライラし通しだったが
ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞だから大したものである。
漣さんの演技が沈黙劇で鍛えられたとすれば
なるほどと思うしかない。

僕は生涯下積みでいたいと語っていた漣さん。
演技論など語ったことはないが
もっとゆっくり語り合う機会があったらなあと思う。
もう一度「あの人に会いたい」と思う。