Kantele-Suomiho-Fuga

フィンランドと音楽(カンテレ、音楽療法)をキーワードに!

奈良へでかける

2011-03-13 23:48:58 | 季節

毎年恒例の<お水取り旅行>。今日13日(日)から1泊2日の予定、いろいろあったが私は今、奈良にいる。

地震翌日の昨日土曜日、人がいない都心の繁華街で、明日から沖縄へ行くというAさんと「こんなときに旅行? という感じよね~。いまいち気乗りしない」とお互いに話していた。夜中に一緒に奈良へ行く予定のBさんから「実家が大変で行けない」と連絡があった。ご実家が福島とは聞いていたが、そのどの辺りかは詳しく知らなかった。大変とは、津波より原発のすぐ近くなので避難命令がでてご両親や親戚がパニックになっているという。「すごく残念。これでは無理、行けない」という思いを聞き、もうひとりの友人Cさんと「私たちは行こう!」と決めた。

平城宮跡

京都までの新幹線は驚くほどすいていた。奈良までの近鉄も、いつもならお水取りクライマックスの奈良を目指していく人でいっぱいなのに、ガラガラ。そして降りた奈良駅。「ご協力、お願いしま~す」の若い声が響く。『東日本地震』と書かれたダンボールと手作りの募金箱、そして英語のチラシを掲げた奈良高校の生徒たちだった。その純粋な一生懸命さに本当に頭が下がる涙がでる思い、そして行く先々のお店もホテルも義援金箱が置かれていた。金曜日の地震からまだ3日目、それぞれができること、痛みを分かち合おうという思いがヒシヒシと伝わってくる。

東大寺

夜はお水取りへ。東大寺二月堂の舞台で、火を目の前にする場所を確保するためにまだ陽が高い3時間前から場所取り。ここにいればお松明のかけらが手に入る。お松明の火の粉をあびると厄除け、1年間無病息災、災いがふりかからないといわれている。キリスト教の私は、「お水取りが終わると春がくるという<日本の季節行事>」ととらえているが、今年の思いはプラスアルファ。近しい周囲に様々な困難や悩みを抱えている人が多い中、同行のCさんは「私たちが代表して火の粉をたくさんあびましょ~」

大仏殿に陽が沈む

 お水取り行事が始まる前に、東大寺の管長様のメッセージがあった。もう6年きているが、これは初めてのこと。「今日ここに集まった皆さまにお願いがあります」と・・・

「私や東大寺と共に
1つは、被災され亡くなられた方々のご冥福をお祈りいただきたい。
2つは、今、困難な状況にいらっしゃる方々へ思いをはせ、共に苦しみを感じましょう。
3つは、社会復興の為に、皆様がそれぞれのお立場で、各々が持っておられる力を尽くして下さるようお願いしたい。1260年前、聖武天皇の発願によって造像された大仏さまが開眼されます。聖武天皇は造像の詔(みことのり)で、自分1人で造るのではなく、「一枝の草、一把の土」を持ってでも造像に協力したいという多くの人たち(当時の人口の約半数)と共に、大仏さまの造像がなされました。大仏さまの造像にこめられた聖武天皇の思い、精神を今の時期に再現したく、皆様にお願い申し上げる次第です。もちろん私ども東大寺も尽力いたしてまいります」という内容だった。

何千人といる会場が静かになった。この祈りを共有しようという思いは宗教をこえていると思った。そして私は火の粉をたくさんあびた。全身スモークの香り、これがとっても心地よい。お松明のかけらもたくさん拾ってきた。ここにいることに感謝しようと、Cさんとしみじみ語りながら東大寺をあとにした。

目の前を火が走る

この夜のワイン、味と思いは格別。古都の夜は静かに美味しくふける。