イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

ストックポートの中心で異彩を放つ玉虫色の妖しいビル、数年前に表面加工を施された公営住宅の安全性は?

2021年02月08日 08時00分00秒 | ストックポートとその周辺
霧雨が降ったりやんだりの土曜日、近所の商店街まで歩いて買い物に出たついでに足をのばしてタウンセンターの手前まで行きました。
運動のためです。



玉虫色の妖しいビルが、ストックポートのタウンセンターを横切る国道A6をちょっと奥に入ったところに4棟、規則性なく並んでいます。
16階だての集合住宅です。

ずうっと以前にもストックポート日報で紹介しました。
(2番煎じで恐縮です)
そう、みる方角によって表面の色が変わるのです。

これはそのうちのひとつモットラム・タワーズ Mottram Towers。


裏へまわり、古い建物が多く残る、景観保存地域の Higher Hillgate という通りから「タワーズ」群を擁する集合住宅ブロックを通り抜けて、表通り、国道A6に出てみました。








離れるにしたがい、玉虫色があずき色に変化します。
見る位置によってはエメラルドグリーン一色になるのですが、この時は立つべき位置が特定できませんでした。

角度だけではなく距離でも色が変わります!けっこうスゴくないですか?!

夫も子供たちも「だからどうした?」とあまり興味を持ってくれないのですが。

イギリスではタワーブロック towerblock (高層住宅)が戦後、空爆によって破壊された都市の復興とそれまで依然としてそこら中にあったという「スラム」解体計画推進のためとてもたくさんたてられたそうです。

すべてが、低所得者を優先的に入居させる家賃の安い公営住宅です。

1950年代から70年代にかけてが最盛期だそうです。
70年代にもなれば、初期の建物の表面が黒くすすけたりひびがはいったり、コンクリート建築特有のみすぼらしさが目立ち始めます。
公共エリアが荒れ、エレベーターがしょっちゅう壊れ、治安の悪さも話題になり人気がガタ落ち。

この16階だての4棟は1963年に完成だそうです。(今 調べました)
こげ茶色のタイルで覆われていたのですが、数年前にこの怪しげな表面加工が施されたのです。

別の棟、ラトクリフ・タワーズ Ratcliff Tiwers です。




エメラルドグリーンの状態をお目にかけたくて!!

ね、A6まで出ると玉虫色を経てあずき色に変身です。


ああ、うーん....左側のもっと奥のを見てください。


(真ん中にちょこっとのぞいているのがモットラム・タワーズ です)

日本では大人気、不動産価値も高いというタワー・ブロック(タワマンっていうんですよね)、イギリスでは初期の構想を裏切って次々と取り壊されている問題建築です。
上にあげたような理由の他に、イギリス人って本当にコンクリート建築がきらいだというのも1970年代以後にはっきりしてきました。

コンクリートの外壁がむき出しの建物は1990年以来、ほとんど建てられていないのではないでしょうか。
モダンな建築物の表面はガラス張り、タイル張り、鏡面仕上げ、などツルツルしていることが多いように思います。

多くの地域では建物の高さに制限があるため、現在5,6階以上の住宅ビルが建てられることもあまりないようです。

2017年6月にロンドン、ノースケンジントンの24階だてのタワーブロック、グレンフェル・タワー Grenfel Tower の大火災が世界中の話題になりましたっけ。
一説には80人以上亡くなったとか、いたましいことです。
公営住宅の間借り人が格安で借りて法外な家賃をとる「また貸し」をしていたり、不法滞在の移民が住民登録せずに住んでいたりで、誰が火災の時いて、誰が行方不明なのか今だに完全にはわかっていないそうなのです。

イギリス人が大っ嫌いな灰色のコンクリートビルのグレンフェル・タワーがにょきっとそそり立っているのがケンジントンのお金持ちエリアから丸見えで評判が悪かったのだそうです。

そこで見栄えを向上させるために市が取り付けたピッカピカ鏡面仕上げのクラディング(外壁に貼った緩衝材)が実は可燃性の高い悪質な安物で炎を外壁伝いにあっという間に広げる原因になったのでした。

ごつごつした暗い色のはんぱにモダンだった高層公営住宅ビル「玉虫色のタワーブロック群」も、ロンドンとカーライル(イングランドとスコットランドの国境地)を結ぶかつての大街道 A6と、歴史的景観が残る Higher Hillgate に挟まれて思いっきり景観を損ねていました。

玉虫色の怪しげなクラディングの取り付けが完成したのはグレンフェル・タワーの大惨事のほんの少し前です。

大惨事のあとテリーザ・メイ首相(当時)が「国内すべてのタワーブロックの安全調査と工事責任者の責任追及、処罰を決行する」と大宣言して....600ちょっと不適格な集合住宅が見つかって大さわぎになりましたが、工事関係者の責任追及に関しては続報を聞かなかったように思います。

この玉虫4棟はだいじょうぶなのか?

はい、資材を納品した緩衝材の業者のウェッブサイトを見つけました。
「弊社が手掛けた成功例」に3色変化の玉虫色に輝く外壁がおもいっきり妖しげな4棟のうちのひとつモットラム・タワーズ の写真が使われていました。

安全規格すべてにパスしているようです!



ラトクリフ・タワーズの脇、右の隅近くに第一級保存建築!Saint Thomas's Church の鐘楼がちょこっと見えています。













コメント (3)
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