ストックポートのタウンセンターを走る交通量の多い、国道A6。

ロンドン(の近く)と、バクストン、ストックポート、マンチェスターも通ってイングランドの北限で、スコットランドとの国境の町、カーライル(の近く)を結ぶ、長い長い、しかも古い道路です。
古代ローマ人が基礎を築いたというA6の、ストックポートのタウンセンターからロンドン方面に2㎞ほど行ったあたりは現在、かなり国際色豊かです。おなじみのインド、中華、をはじめ、トルコ、キプロス、ギリシャ、ジャマイカ、アメリカ南部、南米、そしてイタリア料理のレストランやテイカウェイ(持ち帰り)ショップが数㎞にわたり点在しています。
娘を歯科医の診療所に送って行った後、診察が終わるまで近隣をぶらつきました。
見つけてはいったのが比較的あたらしくオープンしたらしい、「複合食文化系」スーパーマーケット。このあたりは「景観条例無法地帯」みたいですね。

インド、イラン、アフガニスタン食料品店と書かれています。
広い!

見なれない、エキゾチックでナゾに満ちた食材がいっぱい!
件のイラン食品店にあった、イラン製のリンゴ酢やザクロのお菓子がありました。紅茶をよく飲むというイラン人向けの充実した紅茶売り場もありましたが夫が探すダージーリン茶葉はありませんでした。
彫りが深く浅黒い顔立ちのインド系らしい男性が店番をしていました。インド人経営の、やはり主にインド系住民をターゲットにした店なのでしょう。
日本の、「コシヒカリ」とか「ナントカホマレ」のような産地による銘柄の違いとは違い、長いの丸いの、茶色いの...と米粒の形状が違う、どうやら品種が違うらしいインドのお米...種類の多さに圧倒されました。
かわいいお米袋のデザインが気に入りました。

イラストの、はだしでお買い物する若奥様が手に持つ同じお米袋には同じお米袋を持つ同じ若奥様のイラストが、そのイラストのお米袋にも同じお米袋をもつ若奥様が描かれていて...キリがありません。
別のお米バージョン。丈夫な素材でできた、持ち手付きのこの袋、買い物袋としての再利用が可能です!

チャツネィ chutney とピックル pckle の種類の多さにも圧倒されます。

全てインドのレシピかどうかは確認していませんが、ありとあらゆる種類の果物や野菜のチャツネィや酢漬けの瓶詰め(ピックル)が売られています。
チャツネィは、植民地だったインドから取り入れた、野菜や果物をスパイスや甘味料でトロトロに煮込んだ、英国ではおなじみのソースです。
ハムやチーズに添えて、サンドイッチの具に塗って、またローストしただけの肉の付け合わせとして...単調なイギリス料理に複雑で濃厚な味わいを加える効果バツグンです。
我が家の冷蔵庫には、カラメライズド・オニオン caramerised onion (砂糖で煮詰めたタマネギ)とライム・ピックルlime pickle(細切れにしたライムをトウガラシ他のスパイスと煮込んだ酸っぱいジャム)の2種のチャツネィが常備してあります。あと、カリフラワーなどの野菜をカラシソースで和えたピカリリ picalilli などもー般的なのですが、それがすべてではなかったのがわかりました!
本家本元、インドにはこんなにたくさんの種類があったとは...
日本ではおなじみのニガウリ他、一般では流通していない見慣れぬナゾ野菜も売られていました。

チャツネィのラベルにもナゾ野菜のイラストをいくつか散見、奥が深そうです。
マサーラの種類の多さに夫が興奮していました。

マサーラというのは各種スパイスを混合したインドの粉末調味料です。マサーラと言えば「ガラム・マサーラ」しか知らない英国人一般には驚きの、食材や調理法によってどうやらぜんぜん違うマサーラを使うらしいインド料理の奥の深さに衝撃を受けました。
カレー粉と炒めたタマネギをトマトで煮込む「英国家庭料理」の定番カレーにガラム・マサーラを加えれば、あーらふしぎ!私にも作れちゃう本格インドカレー!なんていい気になっていた英国人ー般(と私)に克を入れられた気分です。
夫がイジワルにもスペリングの誤まりを見つけて、鬼の首でも取ったようにはしゃいでいました。

「このチリー(chillie )パウダー(=粉末トウガラシ)を食べると涼しく(chilly)なるらしい!」と。マサーラの箱にもこの誤まりスペリングは散見されました。
店の看板のみならず、店内に並ぶ商品ラベルの南国ムード満載な強烈な色彩も楽しく、ワクワクしました。
楽しげなのは色彩だけではなく...

信仰の対象の偶像のごちゃ混ぜ感覚も特筆ものです。おおらかなのかもしれません。インド人と仲が良くないパキスタン人が主に信仰するイスラム教はこんなユルいことを許容しないのではないかと思います。
インド固有の宗教、ヒンズー教の神様とキリスト像が同じ色彩センスでいっしょの棚に並ぶおおらかさ...製造元も同じかもしれませんね。
色使いがケバく、ヒンズー教の偶像と驚くほど調和したスーパーマン・カラーの聖母マリアの肖像もありました。

「ドラッグストア部門」も見ごたえがありました。
「全ての眼病に効く処方」と書かれた、主成分らしい緑の木の実と目のフージョンのグラフィックが怖ろし気な...

ナゾの生薬「目薬」。
下に少し見えているインド美人の厚紙パネルには「全身に塗って、お風呂で洗い流す」ナゾのボディケア生薬製品の小箱が両面テープでくっつけられて売られていました。69ペンス(133円)は安い!
ロレアル社の製品に似せて、ヨーロッパ風に洗練されたグラフィックスの「自然由来のヘア・オイル」のー群です。

ガーリック(ニンニク)オイルが主成分のヘアオイルを購入しました!!夫はやめてほしそうにしていましたが。日本で買ってきて愛用していたツバキオイル配合のヘアクリームを使い切ったばかりで、ちょうどよいタイミングでしたので。
蓋をとってニンニクの匂いがしないことを確認、人工的なナゾの甘い香りです。4ポンド(772円)は納得できる値段です。
Vatika はインドの化粧品会社のようです。ラベルにはEU市場むき製品のように、ヨーロッパ主要8か国語の説明が印刷されています。
パサついた毛先にちょんちょんとつけてのばすとべたつかず、いいかんじです。使用説明によれば、地肌から毛先までじゅうぶんに潤う量をたっぷりつけて、一晩、あるいは数時間おいてから洗い流すようにとのこと。少量をヘアクリームの代用に髪にのばして1日過ごしてもよさそうです。そのうち説明書き通りの使用法も試します。
ラベルには正しい英語で英国の商業規格に適応した表示と説明、それに問い合わせ先の英国の代理店のウエッブアドレスがプリントされていました。
アルミフォイルの容器に入った、きいたことのない(インド料理屋では提供されていない)ナゾのカレーの冷凍食品も買いました。帰宅後、夫がオーブンで温めてくれたのを日本のあまりご飯といっしょに昼食に食べましたが、思ったよりもコクがなく、ものたりませんでした。
あんがい、インド本国や移民社会ではこんなあっさりしたものを食べているのかも...と納得しました。
英国人は、「われわれは、植民地支配した国々の移民や彼らが持ち込んだ文化を受け入れて自分たちの文化をより豊かにしてきた」なんてことを得意そうに言っていますが、実は融合しているはずの移民たちは英国人ー般の知らないところで自分たちの文化や食生活を自分たちのコミュニティだけのやり方で継承していたことが今さらながら理解できた気がします。
夫は支払いの時に経営者らしい男性に「いいお店ですね、きれいで明るいし品ぞろえが素晴らしい」とお店に対する高評価を伝えました。
経営者は大感激でお礼を何回も言ったついでに(夫がニンニクヘアオイルを本当に買うつもりかと私に念押ししたタイミングで)私の髪がきれいだと言ってくれました!...また絶対行きます。ナゾのチャツネィをいくつか買って試すつもりです。