イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

オシャレで環境にも体にもいい動物好きのビーガン実践、かつては何となく怖かった

2024年03月10日 07時00分00秒 | 英国の、生活のひとコマ

1週間以上前に「あれ?」と思って撮った写真です。

商店街のショッピングセンター入り口の敷石に、ビーガニズム veganism のスローガン...

Animals need us to be vegan for them. 動物たちは彼らのために私たちがビーガンになるのを必要としている。

 

この4日前にも同じ場所に同じ書体で書かれていました。その時はただ、読んで通っただけです。チョークで書かれた字がうすくなることなくそのまま残っているなんて!

そしてその2日後(今週の木曜日)に通りかかった時にもまだ同じ色で鮮やかに残っていました。

まちがいなく、誰かが毎日かすれてきた文字を上からなぞって保存しています。

商業施設前の公道の「ラクガキ」、しかも主義主張のスローガン、いいのかな?

 

ビーガン vegan(ビーガニズムを実践する人たち)は「完全菜食主義者」と訳されるようですが、それは誤訳です。

ビーガンは動物の肉のみならず卵も乳製品も食べることを拒否。革製品や脂、コラーゲンの入った化粧品や医薬品など、とにかく動物由来の製品や動物を搾取して成り立つ産業も一切拒絶する、食生活にとどまらない広範囲にわたるライフスタイルの選択の実践者のことです。

 

ビーガンに対する好感度が近ごろ急上昇している気がします。動物が好き、身体や環境にやさしい生活を心がけている人たち...かつてのような微妙に近寄りがたい求道者のような、また反社会的な団体に属していそうなイメージは全くありません。ビーガンメッセージも好意的に受け取られているのかもしれません。

パステルカラーの文字もやさしい印象だし...

 

もちろん私も動物が好きですが...!

動物たちが、人間にビーガンになることを必要としてるなんて考えられません。イヌやネコを含む肉食動物は殺された動物の肉を食べて生きていることですし、他の動物の犠牲は...自然の摂理ではありませんか。

人間は雑食なので、肉食をしなくても生きていけるというのがビーガンの理論です。

それはともかく...!「反社会的な団体に属していそうなイメージ」について解説です。

私が住み始めた30年ちょっと前、英国にはすでに多くのベジタリアンがいました。それでも、厳格なベジタリアンの「過激派」であるビーガンはかなり特殊な印象でした。オレンジ色の法衣をまとったやせた青年たちが「ハーリ、ハーリー♪」のマントラに合わせてヒラヒラ踊るデモンストレーションで有名なハーリ・クリシュナのような特殊な信仰生活を実践しているとか...それに...

当時、マンチェスターのアートスクールに留学していた私は、動物たちの「権利」のために戦う戦闘的な活動家とけっこう接点がありました。

英国伝統の国辱「スポーツ」、野蛮なキツネ狩り妨害グループのミーティングに興味本位で参加したことがあります。角笛をふきまくってイヌたちをかく乱させる、非暴力、非破壊的な活動だということでしたが、キツネ狩り主催者とのもめごとは必須、警察沙汰になることも多かったようです。なぜか、大学公認のキャンペーン活動でした。

20年ほど前、家畜(ブタ、ヒツジ、ウシ)を生きたままトラック輸送で欧州に輸出する非人道的行為が大いに問題視されていました。水もエサもやらず数日間ギュウ詰めで輸送先に、多くの家畜は死んだ状態で到着するとのこと。

動物の権利のために戦う戦闘グループは輸送の妨害のため、フェリーの発着港のあるドーバー海峡への道をバリケードでふさいだりドライバーを引きずりおろして監禁したりと、破壊暴力犯罪まで起こしてニュースで取り上げられていました。

劣悪な飼育状態の畜産農家の畜舎に無断侵入してスキャンダラスな飼育状況を隠し撮り、動物実験する医薬品の研究所に押し入り実験動物を解放、保護する人たちもいました。

反社会性はグンと落ちますが、マンチェスターのショッピングセンターで、凄惨なウシの屠殺シーンの白黒ビデオを抱えたテレビで映し続けている団体も何度か見ました。ウシのお面をかぶった人が「それでも私たちを食べますか」と書いたプラカードを持っていました。

当時のビーガンがすべて、上記のような「戦闘的な動物の権利擁護活動家」では絶対にありません!でも、上記のような「戦闘的な動物の権利擁護活動家」はすべて、(少なくとも当時は)ビーガンでしたっ!

 

近ごろ、そんな動物の権利擁護の活動を見ることがありません。地球温暖化に関する抵抗運動のほうが注目を集めています。

英国伝統の国辱「スポーツ」キツネ狩りは2004年に法律で禁止になりました。喜ばしいです。

 

欧州への畜肉動物輸送も禁止になったのかと思って調べてみましたら、存続していました!残念です。

活動団体は禁止に向けてオンラインで署名募金運動を展開しています。

 

現在、企業イメージに壊滅的なダメージになる動物実験をもとにした安全性を訴える化粧品や洗剤などの製造企業は皆無なはずです。実験結果が認可のために不可欠な医薬品の研究では、動物実験をしていることを公認していますので研究所に押し入って派手な動物解放パフォーマンスで実験の非道さを訴える効果はあまりないのでは?

調べてみたら動物実験反対活動も、オンラインを中心にまだ存在します。YouTube などに怖ろしいビデオを投稿して協力を訴えかけています。

 

戦闘的な動物の権利擁護活動のニュースを聞かなくなって久しい今、ビーガニズム活動はおしゃれで「意識が高いこと」認識されるようになっています!!全人口の12%(ビーガン協会自称)がビーガン人口だという英国では非常に大きな産業です!

そう言えば、写真を見て気が付いたのですがチョークのスローガンのある入り口の左側は、自然化粧品店です。そのお店の人が宣伝のために書いていたりして...? 何となく、現在、オーガニック製品や自然化粧品を使ったり売ったりする人はベジタリアンを飛び越えてビーガンが多いような...気がします。統計など見たわけではありませんが。

 

同じ商店街の奥に沈む夕日です。

もうひとつ。同じく30年ぐらい前、ロンドンの日本大使館前で「調査捕鯨をやめろ」とうったえるデモが盛んでした。同じ頃、韓国大使館前では「イヌを食べるのをやめろ」デモが盛んだったはずです。捕鯨反対デモに参加した知り合いに、「ジラの血に濡れた日本人の手」を表現した赤い手形のついたプラカードを見せられたことがあります。

その当時、送ってもらった日本の雑誌で「クジラ食うなって言ってる欧米人、じゃあお前らもウシやブタ食うのやめろよ!やめてから言えってーの。クジラが賢いから食うなってーならウシやブタはどうなんだよ、賢くないのか?」と、正論を言うので評判の芸能人の発言を読んだことがあります。

よその国の食文化を批判する是非が論点なのは納得です。たしかによけいなお世話ですよね、牛肉をおいしそうに食べる人たちがクジラの肉を食べるなというのには説得力がありません。でも、当時の日本人は知らなかったのでしょう。クジラやイヌを食うなと日本大使館や韓国大使館の前でデモしている人たちは全員、ウシもブタも食わないどころか、乳製品や卵も口にせず、革製品も身に着けないビーガンでした。自国民がウシやブタを食べるのも本気でやめさせようとしている人たちでした。クジラやイヌを食べるのは、ウシやブタを食べるのと同じぐらい不正だという(極論ですが)主義主張がありました。

 

 

マンチェスターの評判のビーガンレストランで食事をした時の記事のリンクです☟

美味しかったビーガン料理とおしの強いスタッフ、名物レストランのある爆撃の中心地

 

 

コメント (3)
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優先順位を上げるコツ? 大したことのない腰痛で国家医療制のありがたさを満喫

2024年03月05日 06時00分00秒 | 英国の、生活のひとコマ

2月の半ば過ぎに始まった私の腰痛は(ほぼ)全快しました。

2週間近く長引いた、寝違えたような痛みがある日とつぜん、激痛にかわり翌朝は身動きもままならないほどに悪化!近所の診療所 GP's Surgery /GP prctice に受付開始後すぐ電話しました。

ここで簡単に英国の医療、保健システムについての説明です。

 

 

☟注射針や汚染物など医療廃棄物を捨てる専用のゴミ箱が鉄格子に囲われています。正面入り口横!

英国では基本的に国家医療保険サービス(National Health Service=NHS ) が提供する医療や保健サービスは全て無料です。そのため、緊急度に応じて、診察や治療を受ける順番の優先順位の判定があります。

緊急度の低い治療や手術は長い順番待ちがあります。近所の診療所での「ー般医 general practicioner=GP」の診察も優先順位がつけられます。

GPとは科を超越して、何でも診てくれるお医者さんです。必要であれば総合病院の専門医につなげてくれます。専門医のいる総合病院では、GPの仲立ちがなければ基本的に診察はうけられません。

予約を入れるために自分が登録している診療所に電話をして、医療の素養のあるらしい受付の人が判断できるならして、また患者本人もせっぱ詰まってないとか医師を指定したい(女の先生でないとないとイヤとか)などで緊急度が低い場合は、数日後から2~3週先に予約が入ります。

私は今回、痛みが激しくー刻も早く診てもらいたいと訴えたため、質問票をテキスト(電話回線のメール送信)され、記入して返信することに。初体験の、けっこう最近(パンデミック渦中に)導入されたという 優先決定措置(トリアージュ・システム triage system)です。

「とつぜんの痛みの激化」「左下半身が動かせない」(すべて事実です)を強調し送信したら、意外にも2時間以内にスマートフォンに連絡が来ました、「今日の5時に診療所にこられますか」と。早いっ!

徒歩15分の診療所に夫に車で連れて行ってもらいました。

 

若い男性GPにていねいに診てもらいました。

「急変」と「脚が上がらない」に反応した緊急度バク上げ措置だったようです。脊椎損傷、半身不随の前触れを心配されたようですが(!)脚が上がらないのは下半身の感覚のマヒのためではなく、腰から下を動かすと激痛が走るためであることを確認し、とりあえず脊椎損傷の疑いは晴れ、強い痛み止めを処方してもらいました。NHS(無料)のフィジオセラピーに予約をつなげてもらい帰宅しました。

処方箋なしでも買える、一番強い痛み止めを近所の薬局で受け取りました。60歳になった私は、GPの処方箋を出せば、薬は全て無料です♪

薬はよく効きました。痛みの感覚が鈍化したついでに倦怠感もすごく、薬が効いている間はボーっとしたり寝たりして過ごしました。数日後、いつまでもダラダラしていられないと思って、薬の量を減らし始めて痛みがかなり減っているのに気が付きました。

ちょっとしたコリが残る程度まで回復した時に、フィジオセラピーを受診しました。

フィジオセラピー physiotherapy ( 理学療法 )は、機能回復訓練(リハビリ)と運動機能の診断をしてくれるNHSが提供する比較的なじみのある療法です。

 

...今回の写真はすべて、フィジオセラピーを受診した小さめの病院の出張所のような、GPの診療クリニックのみならず複数のクリニックのある比較的大きめの診療所で撮りました。

 

私が登録しているのは高級住宅街の入り口近辺にある古いレンガ造りの一戸建て邸宅を改装した診療所ですが、この診療所はもっと庶民的な住宅街にある新築(1970年頃?当時)の医療施設です。フィジオのクリニックが常駐しています。

「庶民的な住宅街」の公共の建物に、なぜかよくありがちな、地域の子供たちの共同制作の「アート・プロジェクト」が満載です。

 

もうかなり回復していたので、きまり悪かったのですがフィジオの診察を受けてきました。とつぜんの激痛の原因が知りたかったのです。けっきょく不明!

立ったり座ったり、横になったりして全身をていねいに調べてもらい、どこも損傷していないことは請け合ってくれました。また痛くなったら痛み止めを症状に応じて加減して飲むように、運動不足に気をつけるように言われました。

 

以上が私の腰痛の顛末です。

70代の女性が多い私のボランティア先では、皆、ひざや腰の痛みや不調を抱えています。80代で、「ひざの骨の整形外科手術」を何年も待っている人もいます。(他の急を要しない手術と同様、パンデミックでかなり先延ばしになりました)

 

☟完全予約制なので、広い待合室で自分の名が呼ばれるのを待つ人はごくわずかです。

私の、当日のGPの診察と2週間以内のフィジオの予約は奇跡的に迅速で、びっくりされました。

最初のフィジオにGPの診察から3カ月かかった人がいました。復調すると来週から来なくていいと言われたり、気候の変化などで悪化しても薬の処方があるだけで、特に処置してもらえなかったり...ある程度の年齢になると、歩行に多少の支障がでるのは想定内...みたいです。たしかに大ごとには思えません。

健康にとくに問題のない私のような人が発する「急変」と「左下半身が動かせない」など深刻そうなキーワードが緊急度を上げる決め手だったのかもしれません。

「下半身不随」の前兆を見逃したら、初期医療チームの責任問題になるはずです。英国に来た1991年以来、私の医療記録のすべてがNHSのコンピューターシステムに残っていますから、トリアージュ・チームが私の病歴を検索するのはたやすいでしょう。

いつも腰やひざや背中の不調を抱えている大勢の人は「もう3年も痛いのなら、もう2,3カ月待てるでしょ?」という緊急度がかなり低めの扱いになってしまうのでは...と思いました。

 

予算不足で、医師や看護師がたびたび待遇をめぐってストライキをするゴタゴタ続きの英国のNHSですが、緊急の対応はしっかりしているのもわかり、ほっとしました(実際、私の場合緊急な処置を要する重篤な症状ではありませんでしたが!)

去年、子宮がんの疑いで診療所に電話した時は、受付に症状を言っただけでトリアージュなしに、その日のうちに割り込み診察してもらって、2日後、地元の総合病院の婦人科で精密検査をしてもらえました。がんではありませんでした。

トリアージュ・システム以前の10年以上前、胸にしこりができた時も、即日診察、翌日検査してもらえました。

 

(がんではないと確定した後も分析のため取り出した大きなしこりは...化石化した母乳だったそうです。珍しいので、マンチェスター大学医学部に学術標本として永久保存されています)

 

診断結果や治療法に納得できなければ診察料を払って別の医師にも診てもらう「セカンドオピニオン」は、日本では普通ですよね。診察が無料で、医師を選べないNHSでは、不可能ではありませんがややこしい手続きがいるようです。

そのため、治療法をめぐって医師と意見が一致せず、日本に帰国、長期滞在して処置をしてもらった日本人を個人的に知っています。別の日本人の友人も一時帰国する際、日本でかかりつけ医師に診断してもらうそうです。ここ英国では持病が悪性でないため、すぐに処置してもらえないのが不安でしょうし、つらいでしょう(痛み止めなどの対処療法は充実しているようです)。

国民健康保険を抜けている海外在住の身では診断や処置は自費ですし、手術となればたいそうな出費になるはずです。それでも、家族がいて情報も得られる日本での治療が選択できる日本出身の私たちは、少し得かもしれません。

 

ただ、私は全ての人に無料で公平な医療を施す、英国の国家医療制度 NHS を信じて支持していますので、日本で大金を払って治療を受けるつもりは、今のところ...ありません。

英国人の友人も、私の腰痛とほぼ同じ時期に腰のあたりの激痛ですぐに精密検査が受けられたそうです。悪性腫瘍の疑いは晴れ、それでも治療の必要な臓器の疾患だということがわかり、地元の病院に通院しています。

ちなみに、その人の近所で95歳の男性が、長い順番待ちのある腰の整形外科手術を申請後すぐに受けられたことがちょっと話題になったそうです。杖なしで歩けるようになったとか?!

たぶん...推測ですが...1人暮らしのそのおじいさんが完全に歩けなくなるとかかるであろう高額の介護費用(国家の出費)を避けるためには機能回復手術の必要度、緊急度を上げざるを得なかったから..なのでは?

私のボランティア仲間の70代の女性たちなんかは、まだじゅうぶん社会に貢献していますし、手術を受ければこの先、何年もスポーツや旅行も楽しめるようになるかもしれません。この人たちを先にしてあげたら...?と誰もがこっそり思ってしまうものですが...とりあえずボランティアできる程度に歩行が可能で自立できているわけですから、早く歩けなかったり、時々痛かったり...はもうちょっとガマンしてもらおうか? という緊急度、手術の必要度判定なのではないでしょうか?微妙に難しい判断です。(あくまで推測)

私とその友人は「私たちのNHSは、まだまだ捨てたものではない」と意気投合しました。

 

パンデミック前の2018年、英国の医療制度について書いた詳しい記事です。NHS 創立70周年だったのでした。☟

選択肢がほぼ皆無、すべての人が恩恵にあずかれる世界に誇るイギリスの無料医療制度

 

ついでです、本文と無関係な、高級住宅街の夕焼けです。

 

 

 

 

コメント (7)
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