イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

効果があがっているイギリスのワクチン接種大計画、受けたくない人にもあるらしいそれぞれの言い分

2021年02月25日 09時00分00秒 | 気になる出来事、社会情勢
ひさしぶりにコロナウィルスの話題です。


ただし写真はすべて、うちのネコ!
グレーのサバ模様のブチのある息子ネコ、ティブの成長ぶりとあいかわらず体重が減らない黒ブチの母ネコ、リヴィーの近況を写真でお届けします。
(要するにネコ自慢です)




夫が1回目のコロナウィルスのワクチン接種を受けてから10日たちます。

当日と翌日に副作用らしい微熱がありましたがすぐ回復しました。
(腹痛は食べたもののせいだったようです)

12月の初めにはじまった政府のワクチン接種大計画確実に成果をあげています。



先週以来、重症化して病院に搬送される人の数が3分の1に減りました。
昨日の新規感染者数が9,938人。(昨日より1,500人ぐらい増えていますが....!)



1月の最初の週は連日5万人超、1月8日は6万人以上でした....すごい勢いで減っています。
昨日の死者は442人、一昨日、548人より100人以上減っています。


1回目の接種を受けて14日以降は、たとえ発症しても重症になる可能性は75%減ることが実証されているそうです。
すでに1824万2873人(18歳以上の全人口の3割強)が昨日の午後までに1回目の接種を受けているそうです。
2回目を接種すれば85%減....と言っても2回の接種を完了した人はまだ64万2千788人...1回だけの人にくらべるとずいぶん少ないですね。

とにかく、何をやってもうまくいかなかったイギリス政府のコロナ対策、ここにきてやっと「長いトンネルの先にはっきりと明かりが見えてきた(メディアが好む表現)」のです。

ワクチンの接種により国民の免疫力があがったのみならず、イギリスにとってとりわけ重要な「重症者、死亡者を減らす」という目標が達成されつつあります。
18歳以上の全人口の接種完了(少なくとも1回目だけは)は当初、9月の終わりを目標にしていたそうですがこの分では7月中に達成できるそうです。

注射を打つのに資格が全くないボランティアまで大量にあつめての急ピッチの接種です。



夫に注射してくれたのも「セント・ジョン・アンビュランス St John Ambulance」という救命法を教えるボランティア団体の緑の制服を着たボランティアの青年だったそうです。
20時間以上の研修を受けているそうなので、技術に問題は全くありません。

イギリス政府にとって、ワクチン接種が最後の望みだったのは確かです。
他の対策はすべて裏目に出て、もうどうしようもない大惨事になっていたのですから。



ボリス無能ジョンソン首相は去年の2月には「コロナは恐れるに足らず、すぐに収束します」なんて言っていました。
「医療関係者にいきわたらなくなる」ため、マスクもしないようにと言っていました。

一時は検査をやめて、「重症化しにくい健康な人たちを感染させることによって国民の半分以上に抗体を作る」計画を打ち出して....囲い込んで守るべきものすごい数の高齢者や既往症のある人たちを死なせてしまいました。


大幅な軌道修正!「無差別徹底検査大作戦」を決行して感染者の特定、追跡、隔離をすることになったのですが、感染者数の激増は確認できてもかんじんの追跡、隔離が全然うまくいきません。

いちおうは効果をあげた最初のロックダウンが解除された夏のおわり以降、いい気になって経済活動を後押し....結果はうなぎのぼりの感染者数。


感染率が高い変異種の存在が確認されたにもかかわらず、クリスマス経済効果や「クリスマスを離れて住む家族と過ごすのを許可する政府からの特別なプレゼント(国民の気持ちに寄り添う保守党政府アッピール)」にこだわったための年末年始の感染者数の大激増....





ワクチン接種を受けたくないない人が世界中どこにでも一定数いるようです。
でも、はっきり言ってここイギリスでは「そんなことは言っていられない、自分の番がまわってきた人は受けなければ!.」というのが現状です。

黒人と、インド人パキスタン人など[南]アジア人 ( Black Asian and Minority Ethnic=BAME)のコミュニティでは接種を否定する人たちの割合が異常に高いのです。

「マイクロチップを埋め込まれる」「生殖能力が落ちる」など荒唐無稽な陰謀説がソーシャルメディアなどを通じてコミュニティで広がっているらしいのです。
「人体実験される」という説はもっと根強く蔓延しているようです。

現代医学を信じない人や、ワクチンが怖いという人の割合いも高いようです。

結束の強い狭い社会ではまわりと同じことを信じる同調圧力があるのかもしれません。

政府が当初発表した「危険度が高いBAMEを優先的に接種する」案が人体実験説(白人に接種する前に自分たちでまず効果や副作用を試すつもりだ!)の原因のひとつになったらしいのです。
(BAMEの危険度が高いという医学的根拠がなかったため、結局その案は廃棄されました)

実際、BAMEはイギリスでもアメリカでも感染、死亡率がずば抜けて高いのです。
在宅ワークが不可能なフロントライン・ワーカーが多く、高齢者を含む大家族がひとつ屋根の下に住む世帯が多いからという納得できる社会的な理由の他に、たしかに感染すると重症化しやすいというまだ解明されていないDNAレベルの理由もあるらしいのです。

それなのに接種を受けた(受けるつもり)の黒人は50%ちょっとぐらいだというのですから驚きです。





2週間ほど前までのニュースでは「BAME にどうやってワクチン接種を受けてもらうか」という話題でもちきりでした。
BAMEコミュニティの宗教指導者たちがお手本に率先して接種を受け、BAEMの科学者がワクチンの安全性を解説したりの映像が繰り返しニュースで流れていました。
BAMEのニュースキャスターや芸能人が「うちの両親も受けたので一安心です」なんて言っていました。

BAMEの存在は「マイノリティ(少数派)」だからと過小評価できるものではありません。
都市に特に多いその人たちの全人口を数に取り込まなければ「ワクチンで国民の一定数に抗体を作る」計画がうまく回らないのです。

病院に搬送されるBAMEの重症者の数も減らさなければ医療危機を回避することも難しいのです。




もちろん、BAEMに限らず多くの国民が、副作用や少数の人に起こるというショック症状の可能性、100%の有効性は保証されない、多くの人がすでに感染している今やる意義はあるのか?などワクチン接種に懐疑的な意見もいろいろ耳にしています。

ソーシャルメディアで拡散された陰謀説や一部のコミュニティで妄信されている恐怖に裏打ちされた危険説などと違って、科学者が発表した「実験データに現れていない副作用の危険性」....なんていうレポートも読もうと思ったらちゃんと読めます。

イギリスは民主主義国家なので懐疑的な情報を禁止するわけにも、受けたくない人に接種を強制するわけにもいきません。

それでも、少しの悪い可能性を考慮してもできるだけ多くの人に納得して接種してもらう価値は充分あるということなのです。
それ以外には、イギリスでは日常生活を取り戻す方法は考えられません。



いけ好かない政府ですが、接種計画をここまで迅速に進めまき直しを計ることに成功しつつあるらしいことは評価するつもりです。
ワクチン接種が本当にそんなに危険で無用なものだったら、医療、科学の先進国であるイギリスの政府がここまでがむしゃらに推進するはずがない、と思いたいです。

世界で最初にワクチンを開発認可して、世界最大規模の接種計画を実行しているイギリスで接種がこんなに早く受けられるのはありがたい!と素直に思ってもいいはずです。




コメント (4)
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