先週末、夫の妹の結婚式に列席するため、イングランド南西部、ウィルツシャー Wiltshire のロイヤル・ウートン・バセットRoyal Wootton Bassett という小さな町に2泊しました。
結婚式は6㎞離れた、マームスベリー Malmsburry という古い美しい町の出張登記所で、深夜まで続いた豪勢なレセプション(披露宴)は、チぺナム Chippenham にある妹夫婦の驚きの大邸宅の裏庭にマーキー(大テント)を設営してとりおこなわれました。...長時間の夜間の屋外での祝宴で、帰宅後カゼを引いてずっと不調でした!(その話は別の機会に)
さて、ロイヤル・ウートン・バセットです。
夫の弟が、2人の娘とそれぞれの夫、もう1人の未婚の娘とその彼氏...のためにすでに4部屋おさえていた古いパブの上階に、私たち夫婦と娘の2部屋もとりました。大人数の弟ー家は翌朝、式の当日に到着しました。
観光地であろうがなかろうが、どこに滞在しても日常との違いを楽しめる私たち夫婦ですが...適当な町に適当な宿を取った私たちの、今回は非常にまれな「脱力失望滞在記録」です。
ロイヤル・ウートン・バセットの唯ーのランドマーク、タウンホール the Town Hall です。
高床式のチューダー建築(17世紀末の建築で、1889年の再建だそうです)、町の中には他に見るべきものは全くありません。2㎞ほど歩けば、義妹の結婚式のあった美しい中世の町に続く運河沿いの遊歩道があったようですが。
外装の工事中でした。現在は土曜日と水曜日に2時間だけ開館している郷土資料館 Town Museum だそうです。近くで見ると足場にかけた覆いの網目のしか見えませんが、むかいのショーウィンドーにはチューダー様式の外壁がきれいに写り込んでいます。(記念写真です)
滞在した某ホテルは17世紀から18世紀にかけて建築改装された由緒ある建物だそうですが人出が足りないらしく、いろいろ不具合でした。
B&Bなのに朝食は予約制、知らずに(ウェッブサイトに記載なし)1泊目は朝食の提供なし。予備のトイレットロールなし、使い果たして補充を2回たのんでも忘れられ、パブの夕食も完全予約制で先に注文、先払いというわずらわしさ。1日目はテーブルがいっぱいあいているにもかかわらず、私たちの到着前に夕食の予約受付終了...
客室の旧式なカギが不具合で助けを求めても「忙しくて誰も持ち場を離れられない」と耳を疑う対応...等。
少ない人数で回さざるを得ない、フレンドリーなスタッフが気の毒でした。客室は清潔で防音もバッチリ、滞在そのものは快適でした。
パブの終業後は、ー晩中あけてある(!)屋根の上を伝う非常出口から出入りしました(これはワクワク体験でした)
花盛りの植木がキレイにアレンジされて花壇に並び、それなりに古い建築物が並ぶ端正な短い通りを行ったり来たりして見つけた某インド料理屋で到着日の夕食を食べました。
私たちはよく旅先でインド料理屋に入ります。
...水葬で知られるインドの聖なる河の名が店名でした。私は別に気になりませんが、夫は「死体を流す河」の店名にかなり引いていました。
メニューの最初のページに、貫禄ある経営者のインド系紳士と故エリザベスII世とのツーショット写真が載っていました。2011年に彼の地域への貢献活動を讃える陛下と面談の栄を得たということです。
注文した飲み物が来た後、食事の注文取りを30分近く忘れられていたという稀有な体験をしました。
(ちなみに英国のレストランー般では、日本と違い注文がきまってウェイターを呼ぶことはありません。ウェイターを黙って待つのが決まりです。席に着くなり渡されるメニューを見て、飲み物を即決注文、飲み物を持ってきた時に食事の注文をします。飲みながらゆっくり決めさせてもらうのもありです。メニューを閉じれば注文がきまったことに気がついて来てくれるはずです。メニューは必ず、持っていかれます)
さすがに夫が通りがかったウェイターを呼び止めて注文を聞いてくれるようにたのみました。そのウェイターは別の人(テーブルの担当者)を呼んできました。(高級ホテルじゃあるまいし...)
娘が注文したスタッフト・マッシュルームの前菜を私たちと分ける際、例によってベジタリアンで食材に気を付けている夫が、中身は何かとウェイトレスに聞きました。ちなみにインド料理屋でウェイトレス(女性)を見たのはこれが初めてです。彼女の答えは「知りません」。別のウェイターも「知りません」...!
「知りませんじゃ困る、厨房に行って聞いてきてくれませんか」と食い下がる夫に厨房で聞いてきた答えは「肉です」
「なんの肉?」「知りません」..にが笑いです。ベジタリアンの夫が食べなかったのはもちろん、私と娘も得体のしれない「肉(イヌ?ネコ?ネズミ?まさか)」を食べるのをやめました。味から、スパイスを利かせ蒸した羊肉のミンチと推察できました。
カレーはおいしかったです。このレストランの、8畳敷きぐらいの広大なスペースの隅に便器がポツンと置かれたシュールなトイレの視覚的なインパクトもいい思い出です。
クルマは町の公共駐車スペースとして機能する、ホテル裏の某大手スーパーマーケットの駐車場に停めました。駐車券売機ではカードがー時的に使えなくなっていたので、店内のタバコ売り場兼サービスカウンターで手持ちの紙幣を両替してほしいとていねいにたのむと断られました。「ニセ札横行のため、両替できない」という不可解な理由です。今までスーパーマーケットで駐車やトロリー(ショッピング・カート)のデポジットのために小銭が必要な時にサービスカウンターで両替をたのんだ際、断られたことはありません。(行き当たりばったりの店で何も買わずに両替だけをたのむようなあつかましいこととは違います)
手近なバナナをひと房買ってその同じカウンターで、支払いをしたらちゃんとその紙幣を受け取って、必要な小銭でお釣りがもらえました。ニセ札疑惑はどうしたのでしょう。
ロイヤル・ウートン・バセットの地元の人たちの気の利かない対応にはかなり疲れました。
地球を支える戦没兵士の手、でしょうか。個性的な戦没者慰霊モニュメントです。
第ー次大戦の従軍兵士の像とか十字架、六角形の塔などどこの町にもあるのと違って現代アートっぽいです!
宿の朝食を食べ損ねた朝は、コスタ・コーヒーでフレンチ・ブレックファーストを、出発の朝は宿で、ちゃんと予約したイングリッシュ・ブレックファーストを大人数の弟家族と食べられました。宿泊客は私たち(夫ー族)のみだったようです。
ロイヤル・ウートン・バセットが街の名前に「ロイヤル」の称号をつけることを王室から許されたのはごく最近、2011年のことだそうです。戦没兵士の棺がオックスフォードの病院から地元の基地へこの町を通って移送される際、勲章をつけた退役軍人が国旗を捧げ持ち、また1,000人を超えるー般市民が自主的に沿道に立って戦没者に敬意を表するという伝統があるのだそうです。
その行為に感謝の意を込めて王室がロイヤル称号を下賜したということです。
若い人がアフガニスタンやイラクなどの紛争地で命を落としたと聞けば胸がいたみます。でも、私は町民こぞっての表敬行為のプレッシャーは負担に感じて...にがてです。
タウン・ホールの向かいのカフェ(その名もズバリ、the TownHall Tea Room)のシンボルがタウン・ホールの外観です。
日本人にも人気のある、コッツウォルズのはずれです。
緑の深い田園地帯に囲まれていますが、周りには「はちみつ色」の石材で建てられた牧歌的な農村なんてひとつも見当たりませんでした。最寄りの比較的大きめの町は、スゥインドンSwindon。