タットン・パーク Tatton Park のファーム the Farm(農場)、前回の続きです。
私が大好きなブタ特集です。
若い頃に熱中したブタの小物収集にはここ20年ほど興味を失い、コレクションの多くも手放しましたが...ブタを見るのはあいかわらず熱狂的に好きです。
広大なタットン・パークの隅にあるファーム は、戦前の典型的な動物農園を再現し、動物とのふれあい体験も提供している教育/娯楽/観光設備です。19世紀の終わりごろに建設されたと思われる実際の農園の施設を利用しています。入場料は大人1人9ポンド、安くはありません。
英国では1960年頃を境に近代農業が採算効率を重視し始め、家畜の品種改良が急激に進み国や地域に固有の品種が次々に絶滅に追い込まれていったそうです。世界的にも(少なくとも先進国では)同じような現象が起こっているはずです。
タットンパークのファームでは、ノスタルジックなテーマのもとに絶滅しかかっている古い英国固有種の家畜を繁殖しています。
いちばんの見ものは...やはりブタ!
☟は、バークシャー種の ドッティ。
放牧地というか、草がぜんぜん生えていない「ブタの運動場」でしょうか。ブタを草地に放すと草を食べつくし鼻で掘り起こしまくって鋤を入れて耕した農地のようになります。
金網の向こう側(右)に生い茂った雑草を食べようとひしゃげた鼻先を突っ込んでガフガフやっていました。
緑の草地の囲いの中には納屋風のアクティビティセンターがあり、周りの草地も見学者が座ったり散策したりできるようになっていました。囲いの開いているところから入って、ドッティが草を食べるお手伝いをしました。
引き抜いた雑草を差し出すとブゴブゴッと鼻を鳴らして指までガブッとやられそうなすごい勢いでくらいついてきました。とんがった歯がおっかない。
アクティビティセンターから出てきた小さい女の子が私たちを見て、自分も抜いた雑草を差し出そうとしたので...
「咬まれるかもよ」と教えてあげました。そばにいたお母さんが慌てて「見るだけにしようね」と止めていました。...私たちも子供がマネすると危ないので雑草差し出しはやめることにしました。
豚舎の内部です。
ラージ・ホワイト large white のルーナと仔ブタたちは大人気。
ラージ・ホワイト は、同じくピンクの肌で躯体が大きい ランドレース landrace に次いで世界で2番目に多く繁殖しているブタの種類です。
とんがった耳がピン!と立っているのが特徴です。英国、ヨークシャーが発祥の家畜ブタの原点ともいえる古い古い豚種です。
(ヨーロッパ大陸原産のランドレースは英国で改良発展した近代種だそうです。大きな三角の耳が折れさがって顔のほとんどを覆っているのが特徴です)
黒とピンクのコントラストが美しい ブリティッシュ・サドルバック British suddleback のスージィ。
スージィも子持ちですが、乳離れしていたずら盛りの仔ブタたちは別の囲いに離されていました。
生後2か月ぐらいの子供たちは元気いっぱい、「疑似交尾」と言われる行動でしょうね...兄弟の背中を前脚ではさんで怪しい動きをする仔ブタがいました。寝ていたのにはさまれた仔ブタは本気で嫌がってにげまわっていました。
柵の中にいたのは3匹だけ...いっしょに生まれた仔ブタは少なくとも10匹はいたはずです。どこに行っちゃったのか...あまり考えないことにします。
もう1頭、スカイという名のサドルバックがいました。スカイは前回(5年前)来た時もたしかにいました。ブタは15年ぐらい生きるそうなのですが...入れ替わりが激しいですね。
前回見た、まだ若かったであろう他のブタたちがどこへ行ったのかも考えないことにします。
動物園ではなく「ファーム」ですし、飼育の目的は「ふれあい、展示」と希少種の繁殖だけではなく畜肉の生産もあるはずです。ブタはペットではありません。
ところで、サドルバック の スージィの仔ブタたち、鼻がしゃくれているような気がしませんか。
「サドルバック交種 saddleback mix 」標識が出ていたことから父親が サドルバック ではないのがわかります。
父ブタは...
この、男らしいハンク。豚舎ではなく、L字型のメインの豚舎のある開けたエリアに通じる門舎 gatehouse の建物わきに雄ブタ2頭を収容するメンズクラブのような囲いがあります。現在となりの囲いはカラッポで、ハンク1頭でオスブタの仕事をしているようです。
帰ってから写真を見て気が付きました。ハンクの名札には「middle white x landrace bore 」と書かれています。( bore は去勢されていないオスブタのことです)普及種のランドレースの入った混血のミドル・ホワイトだったのでした。
豚舎にはちゃんと、純血の古来種、ミドル・ホワイト middle white のマーサがいました。
世界中の家畜ブタの原種と言われるアジア系のブタのDNAが混ざっているという古い系統のブタ!
ハンクの鼻が純血のマーサほどしゃくれ上げっていないのは混血だったからなんですね...納得。
この ミドル・ホワイト は ラージ・ホワイト と同じ、英国、ヨークシャー原産の希少な英国固有種です。現在、産業飼育されているのは本国英国と、日本だけだそうです!日本では「中ヨークシャー」と呼ばれているそうです。ラージ・ホワイトは「大ヨークシャー」と呼ばれた時期もあったそうですが、ラージ・ホワイト の和訳「大ホワイト」と呼ばれることもあり混乱が生じたので現在は「大ホワイト」に統ーされたとか。ミドルホワイト も、ラージホワイト もどちらも遠い祖先にアジア系の原種を持つ、同じ系統のヨークシャー種です。
あれ?写真をよく見たらラージ・ホワイトのルーナの子供たちも鼻がしっかりしゃくれています。ハンクの遺伝子、スゴイ。
私たちが豚舎にいる間に、ご飯タイムがありました。
飼料を運ぶ手押し車の音がきこえたのか、全ブタがいっせいにブピーブピーがっがっがともの凄い鳴き声をたてはじめました。
ルーナは仔ブタをほったらかしてエサ入れに突進しました。
ここで、ずいぶん前にソーシャルメディアで仕入れたとっておきのトリックをご紹介します。私が撮ったビデオを掲載できなくて残念です。
ブタの背中の中央をはしる、かすかにくぼんだ背骨のラインを腰のあたりから指でスーッとなでおろします。シッポの付け根で指をとめ、軽く押すと...あら、不思議。くるんと巻いたシッポがダラっと垂直に垂れ下がります。しばらくすると、ゆっくりとまた巻き戻ります。
垂れ下がる前より、いくぶん巻きが強くなった気がします。ブタに触れる機会があればぜひお試しください。大人ブタにも効果があります(前回、息子とためしました)
ファームで一番エラそうなのは何と言ってもニワトリ!
好きな場所を歩き回り、他の動物のエサも食べ放題。ファームハンド(飼育員)も見てみぬふり。
パーク内のこの小道を行った先にファームがあります。両側の緑地はヒツジの放牧場です。
門舎から奥の豚舎をながめたところです。
ハンクの部屋は左側にあります。
ニワトリのエサは飛んできたハトに横取りされます。
前回の記事のリンクです☟。記事中にファームのようすがもっと詳しくわかる5年前の記事のリンクが貼られています。
仔ヒツジにさわれる!もちろん母ヒツジにもロバ、ヤギ、ブタ、なんでもさわり放題の観光農園(再び)