13の理由

2018-08-22 11:08:15 | Book
Netflix版のドラマを観た後に読んだ。正直、原作のメッセージをかなり意図的に変えていると感じた。
どらちも、感受性が強すぎるために普通の人以上に傷つく少女が、周りの人々の心無い態度や無関心により負の連鎖に陥って抜け出せなくなって自殺するという話は変わらないが、ドラマでは完全に悲劇のヒロインとなってしまっている。
ハンナ・ベイカー役のキャサリン・ラングフォードがあまりにも魅力的すぎるため周りがほっておくとは思えないし、クレイをヒーロー化してハンナの自殺の原因を追求して悪いやつの責任を明確にするというのは、原作から感じるやるせなさやどうしようもなさ、こういった状況に対応することへの難しさを減じてしまっている。
特に、追い詰められたハンナが、自分を罰するためにあえて自分を傷つけさせるという絶望感が、単純にブライスの卑劣な行為によってもたらされたと変更してしまったのは、最近のMeToo運動の影響なのか。
この作品の良さは、たとえハンナに全面的に共感できなくとも、実際にハンナのように感じる人が実在し、もし、身近にハンナのような人がいたら手を差し伸べて欲しいという作者の願望なのではないか。Netflixのシーズン2の法廷劇は本当に作者が伝えたいメッセージなのだろうか。
ドラマ版を観た人は原作は必読であり、もし、ドラマ制作者が原作にも興味をもってもらいたいと、あえて面白く作ったということであれば大成功といえる。

なお、翻訳は地の文と、ハンナの音声の区別がつきにくく、もし、重版するなら改善して欲しい。

13の理由
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