人魚の眠る家

東野作品は9割が時間の無駄で、1割がどつぼにはまるのだが、本作はその1割の中でもトップクラスの面白さ。
脳死と臓器遺書を巡る深淵なテーマや、リアリティのあるSF的医療技術の設定、伏線の回収のうまさ、後味の良いラストなどが、まさに一行の無駄もない文章でつづられている。
著者の最近の他作品よりも数段面白いのに、あまり評判になっていないのが不思議である。

人魚の眠る家

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東野 圭吾
幻冬舎
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リプレイ

死んだ後、何故か生きていた時に戻り人生をやり直す、ということを繰り返すリプレイものの古典的作品。
若干古さは感じるものの、それぞれのリプレイごとに過去の人生を踏まえて人生の目的が変わる家庭や、未来を知っているにも関わらず想定外の結果になっていくストーリーの巧みさ、希望の持てるラストなど、まさに古典SFの名作。

リプレイ (新潮文庫)

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ケン・グリムウッド
新潮社
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猿の惑星：聖戦記（グレート・ウォー）

リブート三部作の最終作。
一作目で知能を持った猿の誕生、二作目で人間と猿との避けられない戦いを描き、本作で猿の惑星誕生となるはずなのだが、いまいち。
物語中盤の人間側の悪役とシーザーの会話劇まではなかなか良いのだが、その後がドタバタ展開で、一気に熱が冷める。結局、人類がどうなったのかもわからず。
オリジナルの第一作につなげるのであれば、猿の社会がもっと独裁的で非道い社会になっていないとダメなはずだが、いい感じで終わっているのも違和感がある。
三作目はシーザーが死んだ後、人類共存派とサル派が内部抗争して、サル派が勝つような話にした方が面白かったのではないか。

また、桜の国で

ドイツとロシアの間で翻弄されてきたポーランド。
ポーランドの歴史の中でも、あまりにも非道い、ワルシャワゲットー蜂起と、ワルシャワ蜂起を、架空の日本人外交官を狂言回しとして登場させることで、一つの物語を完成させている。
とにかく戦争が起きて戦場になってしまえば、人間性や命の大切さなどというものは吹っ飛んでしまって、敵も味方も殺し合うしか選択肢がなくなってしまうという事実と、自分たちを守る力が無いものは蹂躙されても抵抗することができない現実、圧倒的な強さでポーランドを蹂躙したドイツ軍も、最後には負けてベルリンが廃墟になった歴史を考えると、国家というものは、常に勝ち組に居つづけるよう全力を尽くさないといけない。
現在、圧倒的な国力を誇るアメリカ追随という戦略には意味があるわけだが、将来、中国の国力がアメリカをしのいだ時、果たして日本の政治家たちは冷徹な意思決定ができるのだろうか。

また、桜の国で

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須賀 しのぶ
祥伝社
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アノニマス・コール

ノンストップアクション系のミステリーとしては、それなりに面白いのだが、著者の今までの作風と違いすぎて違和感を感じる。
今までは、自分や家族が犯罪に巻き込まれて被害者や逆に加害者になった時の悲しみがリアルに書かれていたが、本作はそういった描写がなく、誘拐事件やその背後にある動機といったストーリーそのものがリアリティがない。
2時間ドラマにしたら面白そうではある。

アノニマス・コール

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薬丸 岳
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夜明けの祈り

第二次大戦でナチスドイツに蹂躙されたポーランド。そしてナチスドイツを追い出したソ連軍にも蹂躙される。
あまりにも酷い歴史だが、敗者は苦しむしかないという現実のもとでは、自分たちを守るためには、力を手に入れるしかないのだろう。