中国共産党の凄まじい権力闘争がわかる。
もちろん、どの国でも権力闘争はあるわけだが、中国の場合は負けるとたとえ国家のナンバーワンでも待っているのは獄死というのが恐ろしい。韓国も負けると訴追されて刑務所送りになるが、こういう熾烈な権力闘争は国をあっというまにボロボロにすることもあれば(文革など)、逆に凄まじい成長にもつながるというのが皮肉だ。
著者の凄惨な子供時代の経験から、本書は反中国共産党というスタンスありきで書かれているのでそこは割り引いて読む必要があるが、香港では民主化勢力と中国共産党が争うが、なぜマカオではそれがないのかなど、冷静な分析も光る。
結局、中国共産党の目的は秩序ある発展で、秩序を壊す勢力は共産党内部の人間だろうが民主化勢力だろうが少数民族だろうが許さないというスタンスは、ある意味わかりやすい。中国の歴史においては、貧困による暴動が常に繰り返されており、国民を豊かにすることの重要性と、秩序が崩壊して国民が暴走するとどんなに強力な政府があろうとどうしようもないということを、実体験として指導者層が持っていることが、今の中国共産党の行動原理なのだろう。
共産党指導部は国民を信じていない、それが中国の民主化を妨げる最大の要因なので、外圧では絶対に変わらない。法治主義が浸透するまでは、独裁体制は必要悪として続くだろう。