事実は小説よりも奇なりとはよく言われるが、サンソンの人生はまさにその言葉を反映している。
職業選択の自由が限られ、世襲で処刑人の家に生まれたサンソン。国王の命により国家の治安を守るために必要な職業でありながら、人を殺すという軍人とやっていることは同じでありながら、学校でも買い物でも差別され、処刑人の傍ら施しや医療で貧しい人々を救いながらも市中の人々から蔑視される。
革命により平等の世が来た、処刑人にもまた市民権が与えられると思いきや、今まで仕えてきたルイ十六世の首を切る。四肢を馬で引き殺す残虐な刑罰に反対し、罪人の苦しみを最小限にするために一撃で執行できるギロチンの発明が逆に大量の虐殺を生み出す。
死刑は廃止されている国が多く、残念ながら日本では未だに死刑制度の存続を望む声が多いが、死刑には当然のことながら執行する人間がおり、死刑囚だけでなく執行人の魂をも残酷に傷つける制度であることを、皆が理解しなければならない。
自分が執行人になれるか、自分の家族を執行人にしても良いと思っているのか、それを真剣に考えたい。