躁鬱おばさんのプチ田舎暮らし

何かにつけうつつつと落ち込んでしまうわたしが、プチ田舎に引っ越すと・・・

おじいちゃん

2006-08-25 21:46:39 | Weblog
和綿(日本綿)の花
(写真:とうちゃん)

畑で草刈をしていると、親しくしてもらっている農家のおじいちゃんが、
車椅子をひとりで漕いで通りかかった。
いつもは、夕日が落ちる頃におばあちゃんに押してもらって
散歩しているのに出会うのに。
おじいちゃんは、89歳で、おばあちゃんは85,6歳らしい。
元気なおばあちゃんは、1日中農作業をしていると近所では有名であるが、
夕方の車椅子を押す散歩が加わって、近頃はさすがにしんどいようだった。

おじいちゃんは、耳が遠いけど、補聴器がいやなのか、
どうせ聞こえないからと、ラジオをイヤホンで聞きながら話し掛けてくる。
それで、私は頭を振って返事するくらいで、聞くだけ。
(  )は心の返事です。

「やあ、何をしてるんだね。」
(何をって、鎌を持ってるんだから草刈でしょう。そうか、目も悪くなったんですね。)

「家の中にずっと居ると良くない。紫外線に当たらなきゃ体が悪くなる。」
(そうそう、さすがおじいちゃん。)
おじいちゃんは、博学なんです。

「家で、扇風機の風に当たっていても、空気が良くないですよ。
外に出てくると風が気持ちいいなあ。匂いが違う。やっぱり外はいいや。」
(そうですよねえ。おじいちゃんの顔もいい感じですよ。)

「年を取ると、頭はしっかりしていても、体が動かなくなる。目も、耳も悪くなって、
口だけ達者でね。」
(ちょっと前はそれで家族の人が困ってましたよ。
でも、最近はお嫁さん=私と同い年の友人=に、随分優しくなりましたね。
それに、つい最近まで自転車に乗っていたのに、老化がかなり加速してる。)

「近所の年寄りが少なくなって、話し相手もいなくなりましたよ。
知り合いが可笑しなことを言っているなあと思っていたら、ボケていてね。
もう亡くなったんじゃが。
他人から見れば、私もあんな風に変なことを言っているんじゃあないかと思う時がありますよ。ははは。」
(長生きも大変ですね。)

「この間は、家のマッサージの機械に1日中かかっていたら、
体中が神経痛みたいに痛くなって大変だったよ。何日か起きられなくて。
でもなんとか治ったがね。ありゃ大変だった。」
(は~。止めたのに聞かなかったってお嫁さんが言ってましたよ。)

「家のマッサージ機は13万円で、もっと高い30万円位のも売っているが、同じようなもんさね。
作りが中国製だから安いんだわ。日本製だと30万になるんだね。」
(よく調べてますね。)

「この前本を読んでね、脳に効く漢方をやりたいけが、
医者と相談してと本に書いてるんで、相談すると言ったら、
家のみんなに、そんなことしたら医者がびっくりするから止めてくれと言われてねえ。」
(すごい!その吸収力。でも、この辺の医者の方が遅れてますから、多分無理かと。
買ってきて上げたいけど、おじいちゃんの家族に理解ないと、私も責任もてないんですよね。)

おお、あんた、そう言えば堆肥を作っていたね。えらいよ。いろいろ研究してるんだねえ。」
(そういうのじゃなくてこの頃は、また、こういうやり方する人増えてるの。)

「あれで作ったらなんでも美味いよ。あれはいいよ。えらいねえ。」
(そう、美味しいです~。でもこの話は前にもしたからもういいですよ。)

「近頃じゃ、農家でも機械で楽に作って=お米のことらしい=野菜を買って食べてる家もある。
若いもんは野菜が作れなくなってるよ。」
(へ~)

「えらいなあ、あんたは何を作ってるんだか研究していろいろ作っていて。」
(別に特に研究というほどしてる訳じゃないんですけど。
それに、何を作っているんだかは余分でしょ。いろいろ苗や種を上げたでしょ。)

それから、農家の親戚に50になっても嫁がないので世話をしてくれとか、
昔は男は25、6歳で、女は20頃から遅くても23歳までには結婚したものだとか、
赤ちゃんのオムツが紙になったので、干しているのを見かけないとかetc。

ちょっと長くなったので話を聞くのに飽きてきた時に、
車が来たので、車椅子を押してよけて上げたついでに、
家に向かって行ったら、にこにこ楽チンと喜んでいた。

が、少し行くと思い出したように、「もういいです。もういいです。」
(そうですね。近所の人たちが見たら、なんで家族じゃなくて私が押しているのかと、
噂になって家族の人に迷惑がかかりますね。
家族も恐縮して、おじいちゃんにひとりで出かけないでくれと言って、
また、自由がなくなりますね。)

押すのをやめた。
おじいちゃんは、90歳になろうとしている腕で、
車椅子を一生懸命に漕いで帰っていった。