躁鬱おばさんのプチ田舎暮らし

何かにつけうつつつと落ち込んでしまうわたしが、プチ田舎に引っ越すと・・・

出会いの一本杉

2006-08-24 23:41:43 | Weblog
私達が田舎暮らしを考えはじめた頃知り合った、10歳以上年上の男性がいた。
彼は、思うところがあって会社を退職をしたばかりで、
環境重視の農業をと活動し始めていた。
そして、気の合う仲間と田舎にコミュニティを作るのが夢だと言っていた。
農関係の知り合いを、私達に紹介をしてくれたり、
農場見学に連れて行ってくれたりもした。
ここに引っ越して来た次の日には、もう泊まりに来て、
グランディングを喜んでくれた。

夕方、夕日を見ようと一緒に散歩に出て、
近くの林に、1本だけ離れて立っている杉を見つけた。
彼は「別れの一本杉だ。」と言って(昔こういう題名の映画だか歌だかがあった)、
すぐに「いや、出会いの一本杉だね。」言い直した。
この杉が気に入ったらしくて、「出会いの1本杉と名付けよう。」と約束した。

そんなことがあって1年もしないうちに、
彼にはちょっとした行き詰まりがあって、落ち込み始めていたらしい。
後で思えば、パニックになっていたような電話がかかってきたこともあった。
でも、いつも「また遊びにいくから。」と言っていた。
そして、共通の友人から突然自殺の知らせが・・・。

彼が死んだ時間に私は食事の支度をしていて、
後ろにあるテーブルに男の人が腰掛けた気配を感じたので、
当然とうちゃんだと思っていた。
少しして、向こうの部屋からとうちゃんの声がしたので、
「あれ?」と振り返ったのを覚えている。

たった2年間のお付き合いだった。

散歩に出ればすぐに目に入る一本杉。
約束したまま私たちには、
出会いの一本杉なのか、別れの一本杉なのか決められないでいる。