大分前になるが駐日韓国大使「南 官杓(ナム グァンピョ)」氏の話を聞いてきた。
演題は「韓日関係、過去を越え未来へ」。
元徴用工問題などで戦後最悪と言われるほど冷え込んだ日韓関係。
歴史認識をめぐる対立が通商貿易をめぐる対立、
そして安保対立にまで発展し、未だ打開の糸口は見えない。
積み重なる相互不信を解くために、日韓双方は何をなすべきか。
外交の最前線で日本と向き合う南大使の思いのうちを聞いてきた。
南 官杓大使は1957年(昭和32年)釜山生まれ。
京畿高等学校を卒業後、ソウル大学法学部を卒業。
ジョンズ・ホプキンス大学大学院の国際政治学修士課程修了。
78年に外交官試験に合格し、81年12月に外務部(現在の外交部)に入職。
2011年よりハンガリー、15年よりスウェーデンの特命全権大使を務め、
19年5月から駐日大使に着任した。
30年ほど前の日本駐在時「親しみ以上の思いが残った」と述懐。
2019年5月の着任時には韓国への否定的な認識の強さに驚いたと明かした。
その上で、両国関係は現在、困難な状況にあるが、
長い友好の歴史の経験が未来に前向きな期待を抱かせてくれると強調。
強制徴用問題やGSOMIAについては、
両国の立場を尊重しつつ解決策を探っていくべきとの立場を詳解し、
解決できると信じていると力説した。
又、未来を担う青少年交流の拡大の必要性をも訴えた。
第2部は南大使と慶応大学小此木政夫名誉教授との対談となった。
当然互々2人の通訳を通じての対談形式だが、
この2人の若い女性の通訳の有能さにも興味が引かれた。
小此木政夫慶応大学名誉教授は1945年(昭和20年)生まれ。
専門は朝鮮半島政治論・国際政治論。
69年に慶応大学法学部政治学科を卒業。
72~74年に延世大学大学院研究生。
81~82年にハワイ大学客員研究生、ジョージ・ワシントン大学客員研究員。
慶応大学法学部助教授、教授、法学部長。
現在、韓国朝鮮学会初代会長、日韓共同研究フォーラム日本側座長、
日韓歴史共同委員会日本側幹事などを務める。
両国関係の懸案については、一番効果的なのは両国の首脳会談と強調。
強制徴用問題は韓国や日本のどちらかが譲歩・妥協するのではなく、
両国政府が一緒になって当事者たちを満足させられる、
お互いの立場を守ることができる解決策を探っていくために努力していこう。
そして現在は問題解決の過程にある。
両国関係において大事なことは国民の相互意識で、
国民の意思は政治という船を浮かばせる海だと思う。
この日の内外情勢調査会全国大会も日韓関係が最悪の中での関心の高さから
満員の参加者で会場が埋まっていた。