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朝が来る (2020/日)(河瀬直美) 80点

2020-11-04 17:43:47 | 映画遍歴

河瀬作品はメジャーでは安定した映像が見られる。恐らくいつもより抑えているのであろうと思う。だから登場人物の心理に比重がかかるように持って行く。

いつもの山々の木々の風とうねりで、人物の葛藤する心理状況を、そして海の夕日を多用して静まり行く挽歌のようなものを描くかと思ったら、展開的にはほのかに灯る朝日の前触れを描き、驚かせる。

この映画の展開がまずうまいんだよね。まず夫の無精子症の懊悩で悲劇性を創造する。そしてそれを受け止め、生まずに養子へと希望を繋げる妻の心の潔さ。息子の幼稚園での嫌疑をやっと正したと思ったら、実の生みの母親から電話が入る、彼女はなんと14歳という展開だ。

この14歳が効いている。夫と妻の懊悩で同情し始めた観客の心の襞を全く一転させる。この作品の真の主人公はこの女子中学生であったという企み。そして映画は3人が夕日に続く「明るい朝」を見ることにより終わる。

ただ、観客をだますトリックめいた方法と、この内容では現代性をどこまで取り入れているのか(何ら昔の生みの母・育ての母ものと相違ないではないか)、気になるところではあった。

まあ、でも2時間強をじっくりと見させる、という持続性において秀逸な作品だと思う。浅田美代子は樹木希林を目指しているのがよーく分かりました。


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