自然体である男の恋愛日記を綴った映画と言えばいいのだろうか、古くは『トリュフォーの恋愛日記』という気まぐれ風の作品もあったが、本作もある意味気まぐれ、退屈しのぎ風日記、とも言えるし、見た後不可解な男の気持ちに余韻が残る不思議な映画である。
まあ、男は一度狙った獲物をつかめればまた次の獲物に行く、そもそも花から花へと渡り歩く虫のような存在なのではあるが、この映画の監督は女性なのである。だからそれほ . . . 本文を読む
久々のAI・ホール。さすがひろい、大きい。客席も広々。けれど、舞台が大きいということは出し物に迫力がないとかえって良くないことになりかねない。
冒頭から若者たちの乱闘。まあ、迫力はある。すぐ引いて、留置場だったけ、反体制の若者二人とそこに送り込まれるスパイ。で、体制は何と大阪弁を拒否し、共通語なる言語に逆らう人たちを粛清している。そして、アメリカ、中国と組んで大阪を売り飛ばす計画が出現。
と、 . . . 本文を読む
最近「阪急電車」「まほろ駅前多田便利軒」の2本の映画を見たとき、この作品に共通のものを感じた。
それは現代人を取り巻く、小さな、卑小な、身近な不安、幸せである。両作品とも人生をいかに行くべきか、とか緊迫した生と死という大きな命題はないものの、普段私たちが抱えている身近な悩み等を映像化している。「阪急電車」は電車に乗り合わせる人たちのいわゆるオムニバスものである。対して「まほろ駅前~」も便利屋がい . . . 本文を読む
便利屋という現代のすきま産業を通して人間を見ていると、現代に生きる僕たちの小さな心の揺れがざわめきを伴って覆いかぶさってくる、それははたして何?
飼い犬との別れといい、子供の孤独といい、親と子の絆といい、幼児虐待といい、妻の浮気といいそれらは昔からある普遍的なものであり、敢えて現代において描く必要はないかもしれない。しかし、人の人生へのまなざしは時代を超えても不変で優しくそして不安げなものなのだ . . . 本文を読む
どう考えてもパス映画だなあと見る気はなかったのであるが、好きな劇団員が大挙出ているので見る。しかし、これが拾いものの映画(と言っちゃあ失礼か)。結構丁寧な作りで登場人物の多さをうまく紡いでいる。
まず大きな喫茶店で女二人と男のバトル。男を寝取る卑しい女にあの、癒し系の【安めぐみ】さま。これだけでこの映画の演出がホンモノであることを見せつける。でもさすが、【安めぐみ】さまは厭な女にそれほどなれず、 . . . 本文を読む
何か昔見たことがあるような、確か『集金旅行』だったけ、東宝にそんな映画があった。最低の一日を過ごす女。ふと元彼に貸していた借金を思い浮かべる。しかし優柔不断の元彼は誠意はあるもののカネを全く持っていなかった。そして、、。
仕方なく、男に借金をさせるための集金旅行と相成った。うまい設定。いい脚本。それに実力俳優の二人を配し、映画はぴか一の出来となっている。
でもこの男はダメだけど優しくいい男なん . . . 本文を読む
人間の生きる哀しさを描いた映画といえば言うまでもなく限りなくあるが、しかしこの映画の寂寥感は他映画と追従しない何かがあります。しかも、、
この映画の主人公たち、彼らは人間ではないとみなされ生かされている存在だ。人類が寿命が100歳になったのも彼らクローン人間が臓器提供をするという前提で初めてなし得る。その、恐らく金銭取引で製造されたのであろう彼らクローン人間はだからこそ人間ではなく、人間扱いをさ . . . 本文を読む
これは13人ならず9人(うち一人は医師)の最後の晩餐の話ですね。実際のキリスト受難の13人を思わせる設定はなかなか意味深く、キリストとその弟子たちも死に対して何を考えたのかを強く連想させ、重く深い物語となっている。
それは、信仰とは何か、である。
冒頭で「お前たちは神々だ。しかし、お前たちは人のように死んでゆく。」の言葉がある。神の子キリストも人のように死に、そして死して初めて(死んだからこそ . . . 本文を読む
平日の千秋楽公演。土曜・日曜に仕事を持っている僕にはこれはありがたい。早めに行くと開場前で、向かいの、もはや散ってしまった桜の木の下でぼんやりと開演を待つ。結構気温が低い割に日差しがあって、いい時間です。人がそろりそろりと入って行くので、僕も入場する。
僕も含めて館内は結構年配者が多く、出し物が人情喜劇だからかなあとも思うが、しかし若者も多くいる。みんなに愛されている劇団なんだなあ。 . . . 本文を読む
久々の演劇鑑賞。演劇の本場、下北沢に行ってきました。地震後、東京に行くのは初めて。
やはり地下鉄の照明が暗く、エスカレーターも停止し、みんな階段で100段は当たり前という深さの東京地下鉄を生体験しました。商業地区も外側だけでなく内側も照明が暗く、これでは最低限必要なものしか買う気が起こらない気がします。これで、景気が良くなるわけがないなあと、過度の自粛厳禁と言いつつアンバランスな現実にあんぐり。 . . . 本文を読む
思った以上に悪評だらけのこの映画、気になって見てきました。何のことはない、この映画、昔懐かしのロマンティック・ミステリーでございました。謎の女が【オードリー・ヘップバーン】謎の男が【ケイリー・グラント】といった按配で、ノスタルジー溢れる作品となっている。
思い切りノスタルジーしているので、テンポも少々ゆっくりで、最近の映画を見ているファンには迫力のあるアクションも皆無。また、両スターもそれほどし . . . 本文を読む
新たな才能にあふれた監督というキャッチフレーズに誘われて見ましたが、粘着力も新しさもそれほど感じず見終わりました。閉鎖された島での凶行という見せ場も凡庸だし、設定も10人程度の島暮らしと言うのもいかにも作りめいている。
ただ、太陽のせいで次々と殺戮を始める主人公が女というのはちょっと珍しく、女の非力でそんな風になるはずがない、とは思うも迫力はあった。
しかし、それほどこの作品に光るところがある . . . 本文を読む
冒頭の、贋作についての講演会はスリリングで観客の目を釘付けにする。一番前のスタッフ席に遅れて来た女が座り、関係者と話をする。さらに遅れて来た彼女の息子が席に座わらず壁に立ち彼女を急き立てる。仕方なしに、彼女は会場を出ていく羽目に。一方、ここまでに男の講演を観客は仕方なく聞かされるという拷問にも遇っている。
この鮮やかさは、何でもないシーンをいかにも何かあるように装う【オリヴェイラ】風でもある。そ . . . 本文を読む
この映画を見ていてふと想う。この手の移民族の大ファミリー映画ってアメリカに多いなあ、と。不思議と日本では少ないような気がする。やはり単一民族と多人種国家との相違がファミリーの色合いを変えるのかなあ、、。
で、この問題の一家。多兄弟なんだ。男2人、女7人(だったけ?)。ちょっと不可解なのはこの7人の女の存在。最初は何故家に滞在しているのか不明だったが、何のことはない姉妹だったわけだ。
でも、恐ろ . . . 本文を読む
先日たまたまBSで放映した東京物語を見た。デジタル・リマスター版ということで、雨がなくなり音も明瞭。素晴らしい映像になっている。
この映画は映画館では見たことはないが、実際すでにもう10数回見ている。今回あっと思ったことがある。何故気づかなかったのか、と不思議だ。それは主題は家族のつながりだと思うが、血の通う身内がとても金銭面からか、親につらく当たるのだ。
その反面、例えば長男(山村総)の妻( . . . 本文を読む