青春とは字のごとく本来は思春期を表すのだろう。時代や世相、そして人間が変わっても、思春期特有の甘酸っぱさと現実逃避への思いはそれほど変わらないのではないだろうか、、。だからこそ文学が生まれる、と僕は思うのだ。
そしてこの映画。最初の方。昼食時の中庭で、屋根の上にいる俊と目が合って瞬時に恋をする見事なカット。素晴らしい。このシーンで僕はググイとこの青春映画に入り込む。さらに一段と濃密で初々しい絵画 . . . 本文を読む
尊厳死をテーマにした『海を飛ぶ夢』の高踏的な死生観を現実的でないと思ったのだろうか、【バルデム】は一転して視点を大衆に戻し、不幸のどん底におけるがん宣告を受けた一市民にこそ思いを寄せ、現代におけるキリスト受難劇を鋭く見せつける。
赤い色の小便。便器についた液体をペーパーで拭き取る。そのうち男は紙おむつを身につけるようにまで病状は進む。トイレの中で崩れ落ちるように座り込む男。子供たちの前では強い父 . . . 本文を読む
【原田芳雄】の遺作となった貴重な作品である。【阪本順治】演出というのは後で知った。地芝居とは芸能の原点であり、観客と一体となることで初めてその達成感、芝居の醍醐味が味わえるものなのだ。【原田】は最後ここに拘った。
18年も男と駆け落ちして出奔していた妻が認知症で戻って来て、夫たる男は「はいそうですか」と素直に女を受け入れるわけには行かないだろう、女は許しを乞っているわけではないが、男は心の整理が . . . 本文を読む
若い時に見た向田邦子脚本、和田勉等演出による懐かしいドラマをたまたま見る。
実に僕がまだかろうじて20代で、結婚生活を始めたばかりの時である。あのトルコの楽曲がとても心を騒がせる印象的なドラマだった。
女兄弟4人と年老いた父親と妻。それぞれの生活を紐解けば出てくるわ人間の愛憎。何気ない笑顔の裏に隠されているもの、それは阿修羅の姿であったのだ。
長女綱子。50前の設定か。寡婦であるが社会人の息 . . . 本文を読む
世に溢れるほどある警察小説。でも、この小説のその世界はまさにみんな息をしている。躍動感がある。警察の実質トップにある公安を題材にしながらも白眉の出来。
やはりミステリーでは謎の存在は必至である。警察にいながら免職する同期。しかし、主人公の刑事は彼のことをほとんど知らないことに気づく。そして彼を追いかけることになるのであるが、、。彼は連続殺人事件の犯人として警察に追われることになる。
このストー . . . 本文を読む
遅らばせながら、老夫婦のがんとの闘病と愛、そして真摯な命を綴った朗読ものでもあるドキュメンタリー番組録画を昨夜をやっと見る。
主に妻が肺がんで倒れ妻を送るまでの夫婦の心情を綴っている。がんが分かってから1年9カ月の命を妻は全うする。がんの種類も小細胞肺がんという急性で性質の悪いものであった。そのうち夫も自身が胃がんであることが分かり、妻の後を追うように6カ月でこの世を去るのだ。
実に壮絶ながん . . . 本文を読む
3人だけの登場人物、ほとんど場所設定が監禁場所のみ、映像も恐らく野心的だろうという想像をし、見て来ました。期待しすぎたせいでもないだろうが、意外とまとも。ちょっと拍子抜けの感あり。
演技は3人とも特上。この中で演技を求められるとしたら【マーティン・コムストン】がそうなのだが、そこそここなしている。平均的な体躯、中庸のハンサムぶりで個性に乏しい感もあるが、だからこそこの役は彼でよかったのかもしれな . . . 本文を読む
出だしからPOPSが好調で快適。3分割の映像はそれほど秀逸とは思わないまでもまあ楽しめる。大峡谷の映像はさすが素晴らしく大自然の愛着と脅威を教えてくれる。
しかし題名にある通り観客はこの話のおおよその内容は想像しているわけだ。最後に生還するということは明白なので、とすると、2時間弱ずっと、青年の脱出への試みと、今まで生きてきた彼の人生への愛慕と後悔を観客は強いられることになる。
確かに【ジェー . . . 本文を読む
音楽はない。聞こえてくるは森の囁き、日常の小さな音、そしてセリフはほとんどなく、どこか桃源郷を思い起こさせる作品だ。その、映像のみで緩やかに語ってゆくスタイルはまさに映画の本質を現代において問っているようだ。
絵画のような映像だ。しかしコローの絵画を少し濃くしたような、いわばちょっと煮詰めたような色彩で、現像処理だろうか、フィルム自体が違うのだろうか、その色合いの違いに少々たじろぐ。
映画の作 . . . 本文を読む
確かにこの人の本は面白い。まるで漫才の掛け合いのようなボケとツッコミ。そして大富豪の令息、令嬢が警察の警部と刑事という設定。この二人だけでミステリーを切りまわしているのかなあと思ったら、令嬢刑事の執事が見事安楽探偵ぶりを発揮する。その爽快感。
しかしこれははっきり言って、推理クイズ集ですね。読みやすいけれど、子供っぽく、幼稚でさえある。軽過ぎて読んだ後から本がふわふわ飛んで行ってしまいそう。でも . . . 本文を読む