一生に一度は本屋をしてみたいと考える人も多いであろう。私もその部類。いや、この老体になった今でもますますその気持が募る。そんな一人の中年女性が亡き夫との二人だけの希望を灯し出す本屋経営だったが、思わぬ村社会での逆流に遭遇する。
想像していたほど安らぎを感じる映画ではなかったが、何か書物を読んでいる感覚がずっと続き、意外と落ちつける作品となっている。
しかし、ストーリーの本流はいじめの本質に近く . . . 本文を読む
『屍人荘の殺人』と栄冠を争った第27回鮎川哲也賞優秀賞受賞作という触れ込みの作品ですが、僕は「屍人荘の^」があまり好みでなく、断然こちらの方が好きだ。
ミステリーとしてもどんでん返しが続くので、ファンとしてはこの上ない喜びだ。新聞社の事情も、恐らく現実を経験しているのだろう臨場感があり、読ませる。
あれほどの連続殺人事件なのに、警察が全く無能だというのはちと変だし、犯人のトリックも現実的でなく . . . 本文を読む
映画館で演じられ、そして見る演劇。これは僕にとって初めての経験だ。まさに映画館での話なんだ。久野さんは前作も思ったが、詩人である。この演劇はまさにポエムなんだ。
7人によるそれぞれのつぶやき。かれらはたまたま映画館にいる者たちだが、1人の人間の分身にも思えてくる。
映画から主人公が映画館にやって来て、観客たちと共にし、そしてスクリーンに戻ってゆくというウディ・アレンの映画もあったが、この劇は主 . . . 本文を読む
ホラーコメディというジャンルなんだが、なんと2時間を超える長尺だ。普通はだれる時間尺だが、なかなかどうして、脚本がしっかり展開しているので、退屈なんかしない。しかも多人数の出演者。そしてみんな若い。美人も多い。これで面白くなければ何が悪い。
全然悪くありません。楽しい時間です。出演者、それぞれ役柄にきちんと意味を持たせどうでもいい役柄がありません。この辺り、脚本への練り込みもすごいですよ。
そ . . . 本文を読む
最近、シネ・ヌーヴォによく来る。この映画館はファンにとって、なくしてはいけない映画館である。けれど、僕のあまり見ないドキュメンタリー作品が多かったので、敬遠気味だったのだ。でも最近は劇映画も多く上映され、また通うようになっている。そして今日の映画は、、。
途中まではなぜか日本映画の「裸の島」を思い浮かべていた。しかし、シンプルさでは同等だが、テーマが現代における神の不在を追求していることが分かっ . . . 本文を読む
彼の一連の映画の中でも随分と自然で達観した人生観を感じる良作である。ユーモアもあり、それでいて現代の社会観も鋭く、理解されない父親像などもきっちりと描く、いやはや嬉しいイーストウッドの辞世の句であろうか。いや、本人はまだまだ生に執着しているのだ。 . . . 本文を読む
この映画をB級映画と言い切っていいのだろうか。確かにミステリー的には面白い展開になっているはずだが、
エミリーが失踪するまでもたもたした説明調だし、映像も切れてない。そして後半になって急激に動き始めるが、なんとそのトリックが今やもう化石化したような代物で、吾輩はガックリしちょります。ミステリーではもうここ3,40年この手法は使わないはずなんだけどなあ、、。
とはいえ、ブレイク・ライヴリーのむん . . . 本文を読む
第2劇場って、幅広い演劇をしてますね。難解でいて繊細な現代劇をやると思えば、今回のような完全コメディもおやりになる。たまたま脚本家が違うのかもしれないが、数十年の演劇歴といい、何か深いものをお持ちなのかもしれない。
で、ところが本作は何と言っていいのか、AIをモチーフにしているが、人間がAIによって疎外されている時代の話と言おうか、難しそうでいて、全然柔らかく、面白い。考えることもなく劇は進む。 . . . 本文を読む
こういう映画って、好きです。映画の特性を引き出し、挑戦するその姿勢が素晴らしいし、褒めてあげたい。しかも見ている間全然退屈するところなし。秀作と言えます。脚本も錬られており、ラストなんか
彼がやっとタコ部屋から抜け出し明るい日差しを浴びようとするその瞬間、その彼には何日か後に収監される運命が待っている。タコ部屋よりひどい環境に舞い戻るのである。そんな暗示も面白い。
これだけ褒めてて、すごく面白 . . . 本文を読む
ハリウッドの脈々と過去から紡がれる技術と能力を充分引き出している秀作です。もう最初からカット割りなど、フムフムうまいわいと安心して画面を見ることができるのです。だからこそ、細かいシーンの積み重ねが充分生きてくる。
そう、この映画では驚くなかれ、無駄なシーンが何一つない。これはすごいことだと思います。それほどすべてのカットがきっちりと計算されているのかもしれません。このハリウッドの伝統を現代に受け . . . 本文を読む