題名の十字架を象徴する真面目作。O・ブルームが自分の演技力に新たな挑戦を試みた問題作ともいえる。
題名の通り、十字架が基本テーマです。信仰とは何か、人間と信仰との距離、関わり合い、生きることと信仰すること、それらを寓話のような事件から解きほどこそうとしているように思えます。
ブルームが最後にたどり着いた罪人を赦すということ、それはすなわち赦された方は神との対峙をせざるを得なくなることを意味する。神父は十字架にキスをし、神服を脱ぎ、清め、自分の身を焼き尽くす。
自分が被害者になろうとも、相手をどう思うかのではなく、自分に向き合うことが肝要なのだというセリフがあったが、まさにそうなのだろう。誰に何かをされたにせよ、問題なのは自分自身の心の灯り(アプローチ)をきっちりと定めるということなのだ。
キリスト教が生まれ育ってからすっと行き渡っているイギリスと違い、我ら日本人は「ローマ人への手紙」なんぞ知らない。読んでもすぐ忘れる。
彼らが血や肉となっているキリスト教を本流に据え、恐らく原点に戻るべきという試みの元、この映画は制作されたのだろうと思う。信仰という人間本来の基本テーゼを現代にこそ紐解く必要が出現したのだろうか、、。
なかなかの力作でした。
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