淡々とドキュメンタリー風に流れる映画書体。特に題名が出てくるまでの長い冒頭は、音楽もほとんどなく、セリフも少なく、タッチはベルギーのダルデンヌ風だ。
何かあったら二人は猛烈に走る。走る、走る。別に誰かが追いかけているわけでもないのにとにかく走る。疾駆する。若いのだ。エネルギーが溢れてる。けれど、彼ら、若いのにもはや社会に片隅に生きさせられていると感じてる。老成している。そんな弱者同志の二人がくっ . . . 本文を読む
伊東 潤氏の本は初めてです。よくテレビの歴史番組で拝見していましたから、その意味でもわくわくでした。小説は軍隊もので重苦しく読みづらいかなと思ったけれど、行間が適時に空いていて400ページを超す長編だが、十分読みこなすことができた。
八甲田山雪中行軍を違う角度から切り取り、ミステリーとしても合格のラインです。最高上官山口少佐の評価替え、119名と120名の行軍数の相違など斬新なプロットでした。ま . . . 本文を読む
ホロドモールという言葉を知らなかったが、スターリン時代にウクライナでジェノサイドがあったことは知っていた。あの大粛清を実行したスターリンだから、さもありなんとは思っていた。
映画はホロモドールの実態と報道の自由ーメディアの功罪にも触れる。一旦権力を容認するとそこからはアヘン中毒と化する。あのブルジョアパーティの生々しさは現代にも通じよう。
映像がどれを取っても見事の一言。この重苦しいテーマにも . . . 本文を読む
ミステリーの形式ではあるが、文学としても読ませるものがあります。あれほど他人への成り変わりが2件もスムーズに進むとはとてもや思えないけれど、その辺りは譲ったとしても、十分読みごたえはあった。
2章のどん底生活の描写がリアルで貧困とはこういうものだということを本能的にも知る。実はこの章で読むのを中断しようとさえ思ったのだが、読み進んで本当に良かったと思う。この章があるからこの哀しき二人の人生が納得 . . . 本文を読む
めずらしい戦争中の、しかもビルマでの駐屯中に起こった殺人事件。なかなか読みごたえがあり、意外と題材から読みづらいと思われたが、そうではなく、ページ数も短くあっという間に読み切る。
2転3転するミステリーの手法はまさに本格ではあるものの、そのデータが読者に提供されないので、ある意味アンフェアかなとも思う。
でも、日本人たる私がビルマ戦線のことをあまり知らないというのも恥ずかしく、その意味でもこの . . . 本文を読む
大林の思いが3時間、見事手抜きなくびしびし訴えている。これだけは伝えなければという彼の最後の思いがストレートに伝わってくる。3時間は長くもなかった。沖縄の知られざる実態に同じ日本人として根源的な痛みを感じる。若い人にもっと見てほしいと思う。
俳優陣はみな大林賛歌を目指しており、怒涛の出演数。どなたもちょい役でもあっても、演技的にもエネルギーがみなぎっている。これは映画史的にもすごいことだと思う。 . . . 本文を読む
まだこんな方法があったのか、と思えるぐらい面白く、鮮烈な傑作ともいえる堀出し物のミステリーです。
一高校生の女の子がここまで人間の奥底まで思考できるのか、といった一般論はさておいて、とにかく読ませます。ミステリー手法ってホント無限大にあるんですね。ますます頼もしいミステリー界の逸材が登場した感じです。
内容は読んでからのお楽しみ。必読ですよ! . . . 本文を読む