セントの映画・小演劇 150本

観賞数 2024年 映画 73本、 演劇 45本

時空旅行者の砂時計 (方丈 貴恵 著)(2019 東京創元社) 80点

2020-01-31 21:57:01 | 読書遍歴
最近の本格物だが、なんとタイムトラベルが誘引される。昨年話題の「屍人莊~」もホラー・sF的であり、もうミステリーは出尽くしてしまい、この手しかこれからはないのであろうか、と長年ミステリーを愛読していた吾輩からは少々寂しいものがあるが、でも、最後までちゃんと読みつくしましたぞえ。僕はホラー性が強くないこちらの方がかなり楽しめた。 でもこの作品はなかなか連作が難しいかなあ。なかなか才能に恵まれた作家 . . . 本文を読む
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風の電話 (2020/日)(諏訪敦彦) 65点

2020-01-26 18:18:32 | 映画遍歴
ほとんど脚本などあって、ないような作品だ、といえば日本では諏訪敦彦を思い出す。本作もまさにそういう感じです。そしていつもよりドキュメンタリータッチが強く、ほとんど思いつめたようなハルカの表情が全編を綴る。 俳優陣は諏訪作品の常連であり、セリフもアドリブの連続であるかのようで俳優たちも十分それをわきまえている。けれども、広島の原爆はまあいいが、あのクルド人の唐突な場面はリズムを壊している。 この . . . 本文を読む
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いけない(道尾 秀介 著) (2019 文藝春秋) 90点

2020-01-22 21:33:50 | 読書遍歴
ミステリーでは僕にとっては最高点の評価だ。それほどじっくりしっかりと読まなければこの小説の真実に近づけない。それほど普通に読んでいると作者の老獪にはまってしまう上質のミステリーであった。 でもこんな田舎で人がどんどん死んでゆくこと、クリスティの「アクロイド殺し」ほどではないものの、K事が自然に犯罪に加担してしまったら、読者は簡単には犯人当てはできないだろう。 とはいうもののやはり久々の道尾のミ . . . 本文を読む
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関西芸術座「ベルナルダ・アルバの家」(作・フェデリコ・ガルシーア・ロルカ 演出・松本昇三)(於・ABCホール) 75点

2020-01-19 20:16:19 | 演劇遍歴
女だけの家。当主が亡くなり長い年月全員喪に服している。だから、性的抑圧も甚だしく、長女の結婚話がきっかけに彼女たちは爆発する、、。 それほどその抑圧的なモゾモゾ感が観客に伝わって来ない。音響などかなり考えられており、はっとすることも多いが、場面が一場面限定のためか、セリフだけが舞台の上を駆け巡る。 それでもこの舞台の真打、ラストの女性たちがそれぞれ発露し、哀しい事件につながる過程はやはり演劇的 . . . 本文を読む
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パラサイト 半地下の家族 (2019/韓国)(ポン・ジュノ) 90点

2020-01-13 21:06:53 | 映画遍歴
うーん、これが映画だね。僕は映画から久々の精神的効用を得ることができ満足。ジュノとしては「ほえる犬は噛まない」以来の最高評価。こんな分かりやすい寓話で現代社会をぶった切るジュノを断然見直した。 多少それはねえだろう的な部分はあれど、許容する。それほど鮮やかな切り口だった。壊そうとしても壊せず目の前に聳え立つ現代のヒエラルキー摩天楼に、ちょっぴりだけでも抗えただけでも僕は十分ジュノに拍手を送ること . . . 本文を読む
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劇団壱劇屋「劇の劇」(作・演出 大熊隆太郎)(於・in→dependent 1st) 80点

2020-01-12 22:36:17 | 演劇遍歴
実は久しぶりの壱劇屋。こんな狭い劇場でなにをするんや、と思っていたけど3人劇のいわば「自分とは何ぞや」の映画ではよくあるテーマを演劇に持ち込んだ感じ。 パントマイム劇や激しいダンシングで汗びっしょりの大熊を見るにつけ、まだまだ演劇を究めようとしているんだなあと思う。優れた現代演劇の先頭を走る大熊を十分見ることができただけでも至福の時間であり、収穫だった。 . . . 本文を読む
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幻の彼女(酒本 歩 著)(2019 光文社) 75点

2020-01-09 20:28:44 | 読書遍歴
ミステリーの本質が謎解きだとしたら、この本ほど付き合った女性が3人とも次々と死んでゆくというこの驚異的なものすごい本は最近ない。 ということで私もこのミステリーの醍醐味に惹かれてページを繰っていくのだが、なんともすごい飛躍的な考えもつかない解決がそこに待っていたのだ。 うーん、これは何とも、科学か医学かSFか、なんとも言えない代物だが、これもまた現代ミステリーなのである。読みやすい文体、親近感 . . . 本文を読む
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アイリッシュマン (2019/米)(マーティン・スコセッシ) 80点

2020-01-05 20:08:55 | 映画遍歴
終盤のじっくりドラマが出現するまでのエポソード集の何と荒いことよ。でも、それまでの半生を時間の制約を受けて走馬灯のように激しく駆け巡ろうとすればこういう表現になるのかな、納得です。 そしてこの作品の登場人物、すべて死亡年と死因が表示される。まるで「死ぬとは生きることと見つけたり」、と言わんばかりに、、。 終盤の40分は、スコセッシが現代の彼の実力を渾身込めて従来通り映像化したものと思われる。ス . . . 本文を読む
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男はつらいよ お帰り 寅さん(2019 山田洋次) 65点

2020-01-02 20:27:54 | 映画遍歴
山田は、こんなことやってみたかったんだろうなあ、映像を見ていてふと思う。過去のシリーズ作品から、映像を編集してさらに新たな映画を作る。見ていて、子供だった吉岡が、若かったさくらが、現代に登場すると現実そのものが見えてくる。なぜか現代に生きるということとはこんなに恐ろしいもんもんだ、とふと思う。 編集後の登場人物はほとんどはまだ生存しているが、鬼籍に入った俳優陣も多く、懐かしさより、歳月の流れを感 . . . 本文を読む
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