韓国映画の秀作「イルマーレ」から時間軸とポスト、そしてよく本屋で見かける「心に残るいい話」をミックスした感のある映画でしょうか。原作は読んでいないが、映画では多数のエピソードを処理できずの感もある。
多作廣木隆一のよくない面が露見し、敢えてベタを志向している風もあり、映像的には見るべきところがなく、退屈感が漂う。
ただ、演技的にはやはり西田敏行が孤高の域に達しており、彼を見ているだけでもこの映 . . . 本文を読む
ここ数年来見た映画がへなちょこ映画に見えるほど、怒涛のようなエネルギーに満ちた映画です。映画とはそもそもこういうものだったんだと、思い起こさせるに十分な、これぞ傑作であります。人間の生きるに必要な根源的なもの、愛の形でさえここに存在する。スゴイ!脱帽。 . . . 本文を読む
セザンヌ好きの吾輩としては上映され即映画館へ。ゾラとセザンヌのケンカの話は有名で、ほぼ知ってはいたが、その詳細を見るにつけ、この映画の視点が分からなくなった。
映像は確かに美しいし、ラストに急にせきを切ったように現れるサント・ヴィクトワール山の絵画群は見事だが、でもあの二人の不和感はいたたまれない。お互いに相手の芸術をまったくと言っていいほど理解していない。一流の芸術家がこんなにも、とおののいて . . . 本文を読む
身近で、どこにでもある、そして若者たちが常に内面に潜めている思いを自然体で表現している。
始めはなんだか、安易な学園の話だろうと思っていたら、7人の若者たちの純真な心にぐいぐい入ってゆくある意味シリアスな展開に、年齢の離れた吾輩でもぐんぐん引き込まれて行った。
6年後に再会した彼らが、求め苦しみもがいた後に見たものは、、。いいラストです。
いやあ、久しぶりに何かきれいな一筋の光を見た感がしま . . . 本文を読む
演劇の接点となればやはり大学演劇が一番多いのではないだろうか。若き彼らの演劇を見よう。何かが生まれるはずだ。
まず劇情ロマンス『プリンと練乳と生クリ-ムと』3人の女性によるギャグ劇だ。こういうのは一番難しいと思う。作るのは簡単そうでいてムズイし、俳優にコメディアンの資質が必要であり、何といっても観客からを笑いを取らなければならない。これは脚本家、俳優にとって実はかなりの難問なのである。
3人 . . . 本文を読む
大阪の代表劇団といえる劇団五期会の公演だ。こういう正統派劇は考えたら久しぶりで、たまにはこういうまともな劇もいい。シェイクスピアものなので、確かに重ぐるしいが血と欲望と人間の性を生き生きと描いている。
この劇はリア王の輻輳劇でもあり、名家のうち、分家の家もリア王のごとく、内部分裂している。これがシェイクスピア劇でも特に重層的な展開を見せ、異彩を放っている。
そのため本家の内部紛争も面白いが、分 . . . 本文を読む
もう日本では見ることのできぬ自然環境、家、乗り物そして人々の心。まぶしいほど美しく、根源的な人の営みを描き切っている。
僕はもうすっかり忘れてしまっている思春期初期の子供たちから見たベトナムの田舎生活である。田園風景がとにかく美しい。日本にあったミゼットのようなオート三輪車が出て来たり、かなり郷愁をそそるシーンも多い。
こういう映画を見ると、文明って言うのは人の生活を確かに便利にはさせるが、人 . . . 本文を読む
冒頭の金魚すくいからの映像がインパクトがあり、今回も黒澤健在かなと思ったが、、。
今回、全体に映像が緩やかですね。ピシッと決めていない。ほんわか流れてる。これで2時間を越える作品。3人の侵略者が求心力を持って集まってくる過程が面白いはずなんだが、それほど黒澤は意識していない。偶然に3人は集合したようだ。あの広い東京で。
概念を奪う、というか地球人のことを理解するために奪っているように思えたが、 . . . 本文を読む
レジスタンス映画って最近めずらしい。しかもイタリア、フランスでなくチェコのレジスタンス。これがいいのだ。
冒頭とラスト後にチェコの政治情勢が文字で語られる。チェコは連合国から見捨てられナチスに占領される。そのため派遣された彼らレジスタンス。チェコにとってはハイドリヒ暗殺は目立てば目立つほど効果的で、チェコの勇敢さを示せばよかったのだ。チェコの目的は連合国復帰である。
どこに国でも存在する人間軽 . . . 本文を読む
今一番気になる監督、ノーランの新作である。意外や戦争映画である。しかも退却こそ最大の攻撃であるとの消極的な行為に見える戦争映画である。ノーランがこの作品に賭ける思いはいかなるものか。
過去の秀作群からすると随分普遍的な映画になっていると思う。映像的にはそれでも大胆で、さすがと思われるシーンもあるが、全体的にはやはり逃げることの意味を描いているのだから、戦争抑揚映画とはならない。
恐らくノーラン . . . 本文を読む
ジャームッシュの映画って、今まで3本しか見ていない。しかもそれほど高評価でもない。そして何気なく見た映画だった、、。
これがものすごくいい。現代で、ミサイルが飛んでくるかどうか分からないこの世の中で、ごく僕らの周りにこんな小さな幸せが潜んでいる。
そこにあるのにみんなちょっと上を見ている。頑張っている。でも気づかない一日の市井の平凡さが一番人間の幸福なんだ。そんなことを感じさせてくれる。実にい . . . 本文を読む
これはまた現在の日本映画では、技術も俳優も映像も演出も1級品を醸成した見事な作品です。もうずっと画面にくぎ付けでした。
あの弁護人と被告人が一枚の鏡を通して一人の人間に融合する。真実を求めない弁護人がとうとう真実を求め始める過程。人間の融点を見る。この何度も横側から見せられる映像はぐいぐい寄り、また左に二人が移動したり、まさに映像を魔術のように操ってますなあ。あの鏡の仕切りは溶けていたのではない . . . 本文を読む
現代にしかとまだ残滓のようにインドに残る不条理を、風刺精神たっぷりに独特の世界でフィルムに焼き付けた爆弾のような作品です。
何だか、昔見たオーソン・ウェルズの「審判」を思い起こしたが、考えたらカフカにも似た不条理劇ということではどこかでオマージュがあるのかもしれません。
映像も決まってるし、テーマも切れてるし、映画的には言うところなしなんだけど、どうも潤いがないんですなあ。やはりこの映像にずっ . . . 本文を読む
オリゴ党25周年ということで25人の俳優を布陣。そりゃあ個性派ばっかりを25人も揃え、どんな脚本になるんだろうと興味深かったが、15歳の時の思春期の回想録でもあるんですね。
これはまた大胆ですこと。凄いです。
ということはみんな40歳ぐらいの方が多いということなんでしょうが、それにしても個性派ぞろいで、観客的には彼ら一人一人の見せ場が用意してあり、目が離せない。そしてその少ない時間で彼らは自分 . . . 本文を読む
いわゆるミステリーではないけれど、読み出すとガンガン心を揺すぶられ、一気に読んでしまう小説であります。自分の息子が事件に巻き込まれ帰ってこない。状況は加害者のようにも思えて来る。
さて、何不自由なく暮らしてきたこの家族はこれからどう生きてゆくのか、、。
父親、母親、妹、叔母、祖母、友人、マスコミ、警察それぞれの心理描写が絶妙である。身につまされるという表現がぴったりの心境でこの小説を読みました . . . 本文を読む