奥尻の流氷に浸かった女が海から氷上に這い出す。女は微笑を浮かべている。そんなファーストシーン。が、映像は反転し大災害の模様を写す。3.11かなあと思ったが、奥尻津波の様子である。
小説的である。原作があるのだから当たり前だが、それでもやはり小説的である。熊切は最近は脚本を書いていない。けれど十分映画作家的で作品も見ごたえがある。熊切は「演出オンリーの映画作家」という珍しい存在でもある。
原作モ . . . 本文を読む
センセーショナルな題名でいつ目を手で覆おうかと覚悟していたが、最後までその機会はありませんでした。観客の意識を反転させるかのような静かな芸術映像の連続で、自然、狩猟家である男の意識も意図的に美化されている。
欲しいと思った女を殺しその都度カニバルするという行為の描写はほとんどないため、何か腑抜けになった殺人者の心象風景を見ているようで、あまり観客に映画的高揚感は湧き出ぬままラストにつながってゆく . . . 本文を読む
センスのいい洒落た演出。この作品は演出家と役者冥利でもある落ちて行く女を見事演じ切る女優との格闘劇だ。日本であれば杉村春子が演じるような新劇のような題材を、見事現代のアメリカに見据えるその意味とは、、。
虚像の世界にこそ居る場所があると思っている女に凡人たる吾輩は何の関心もないが、この映画から我々は何を学べばいいのだろうか、なんて知ったつもりのことを言うつもりはない。
この映画から人生の何かを . . . 本文を読む
なかなか面白い映画だ。現代の顔ともいえるネットとは何なのか。ただ単にツールだとほざいていると、とんでもない深部に迷い込んでいることの現実をこの映画は教えてくれる。
高校生のベンは孤独で姉にも鬱陶しがられ一人音楽を聴く男の子だった。そのベンが同学校の友人二人に見事ネットを通じて騙されてしまう。自分の恥部を学校内にばらされたベンは自殺未遂を起こす。
執拗で徹底的に悪いと思った友人ジェイソンがさすが . . . 本文を読む
さすがメジャーだからか、ここぞと大挙俳優が出演しているが、勿体無い使い方だのうと貧乏性の僕は考えてしまう。まあ、話としては山の生活を朴訥と肩ひじ張らずに描いたもので、それはそれで趣旨はよく分かるが、、。
その平準な生活にあこがれる人たちが見る映画だなんて,そんなおこごましい気持ちは僕にはありません。
ただ、カネを動かすディーラーの仕事を人間としてどうなのかとか、胸にしまったことはここで出しちゃ . . . 本文を読む
昨年の年末に見たDanieLonelyの演劇が素晴らしく今回も期待して行ってきました。今回もまた狭い劇場でしたが、それでも一応ちゃんとした設備等もそろった斬新な劇場です。
話はとある国境線の雇われ警備員たち。不思議な4人の男たちの生き様である。この演劇は見ている間より見終わってからの方が不思議と余韻が強い。そしていろいろ考えさせられる。
戦争とは何か。国境は何か。ヒトはなぜ憎しみ合うのか。ミサ . . . 本文を読む
実は昨年あたりから年甲斐もなく放浪癖を増やし、コンサートに行くようになった。最初はワンコインコンサートと言って昼のクラシックコンサートにお邪魔していたぐらいだが、そのうちライブの音に馴染んできて、今では週1ペースで日参している状態である。
若い時にはピアノコンサートに行ってはいたが、何しろカネがない状況下でCDより高い金額を払う余裕は全くなかった。ピアノはむしろCDで部屋でじっくり聞いた方がいい . . . 本文を読む
僕にとって危険な映画です。最初の2つの挿話。何気なく人を殺戮するその小気味よさ。ほとんどの人間が現代を我慢してかろうじて生きながらえている中、スクリーンでは幻想よろしく、大物小物問わない悪人たちが拳銃の弾に、ばったばったと倒れて行く、、。
1話と2話の男が交差するシーン。トラックがひっくり返ってトマトだか柿だか分からないが、赤い果実が大量に道路に溢れている。その赤の色の鮮やかさと横に、死に絶えた . . . 本文を読む
見終わって「ムーンライズ・キングダム」に感覚が似てるよな、という程度の認識しかなかったが、この映画でウェス・アンダーソンはいわゆる映画作家に十分登り詰めたと思う。それほど映画ファンにはたまらないものが詰まっている作品である。
映画ってまず映像だ。これが全編凝っている。シンメトリー等の構図のこだわり。色彩の意思表示。童話的繋がり。まさに映画で絵画絵本を見ているかのよう。そういう意味では平板な映画が . . . 本文を読む
高校生時代から30年間のかれら(男2・女1)の人生を辿る青春映画。うーん、いかにも甘酸っぱいそして苦さの残る人生をしかと見る。
3人のそれぞれのカップルといっても今までのカップルでないところがこの映画のミソである。男A→女B→男Cまでは普通の関係だが、この映画は何と男C→男Aであるのが後半あたりから分かって来る。そして男Cが一応話の中心でもある。
女Bは恐らく生ま . . . 本文を読む
今流行りのご当地映画ですね。しかし田舎といっても地方の大都会鹿児島の話です。今やどこの商店街も運命共同体です。これはご当地とは言え、他人事でない我らが街の話なんです。
と、特に気を使っていない佐々部の普段着姿の演出が見えます。力を抜いて、俳優にすべてを預けて、にこにことカメラの脇に立っている佐々部が想像できます。
鹿児島弁は俳優さんたちが頑張っていたようでなかなか見事なものでした。吹石は子供時 . . . 本文を読む
WOWOWの小さな画面で見たから何とも言えないけれど、河瀬の伝えたい、言いたい気持ちはよく分かったと思う。相変わらずセリフが少々聞き取れない部分もあったが、、。
分かる、分かるけど、ちょっと強引かなあ。言い方を変えれば少々説教ぽく感じたのも事実。母親が自宅に帰って死んでゆくときもちょっとくどい。奄美独特の唄、踊りまで披露されるが、、。
少年の、まだ女を卒業できない母親への不信は、思春期特有のわ . . . 本文を読む
コーエンの映画は気になっていつも見ているけれど、今回はいやにオーソドックスだね。まず映像が今までになくやけにきれい。冒頭部で驚かされる。
そりゃあ、売れないシンガーの、のらりくらりの日常を描いているから今までの映像ではちょっときついのかもしれません。
コーエンとの相性は僕はそれほどいいとは思っていない。「バートン・フィンク」「オーブラザー」「ノーカントリー」は認めるが他は正直僕にとっては退屈だ . . . 本文を読む
まあ日本メジャーの娯楽作品で、特に期待するところはなかったが、突込みどころは多いけれど、最後まで見られるというのはまあまあの出来というべきか。
一番不愉快なのはやはりあの12枚の絵のトリックなのです。松坂くんが見事解いちゃうわけだけど、解くも何も、2枚取って残った一枚を返すところはやはりオカシイ。(返す必要はないでしょう)こんなの無理に作ったトリックでっせ。不快だよ。(だいたい万能鑑定士たる綾瀬 . . . 本文を読む
前作からまだ3カ月ぐらいで新作。見ている方は嬉しいけどやっている方は大変なんだろうなあ。そしてまたまたすこぶる面白い演劇を見た感じがする。
7つの寸劇をただ見せるのかなあと思っていたら、それらを切れ切れにカットし、重層的に見せつける。
まずこの方法だったら観客は面白いけれど、俳優は大変。カットしてその2秒後に別の人物を演じる羽目になる。気持の入れ替え。多少同情はする。そして演出家福谷の残忍な顔 . . . 本文を読む