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ふみ子の海 (2007/日)(近藤明男) 70点

2007-12-09 14:14:31 | 映画遍歴
昭和初期と言えば日本全体で政治的にも経済的にも重ぐるしい日常が周囲を取り巻いていた時期である。言わば悪すぎる時代のやはり哀しい話である。
栄養状態が悪く失明する人が当時多かったと言うこと自体初めて知ったが、大部分の人たちが貧乏だった時代である。女で盲目で家が超貧乏となれば子供の時から按摩か瞽女(ごぜ)になるしか取捨選択はなかったのだろう。
盲学校での教育なんて夢のまた夢の話なのだ。だが、人間には希望が要る。希望がなければ生きていけない。ふみ子も心に希望を持って毎日を生きようとする。だからこそ彼女には海の光が見える。周りの人の心の光が見える。
この映画で一番ジーンとしたのはふみ子と生活を共にしていたサダの死である。
彼女はいつも「私たち何故生まれてきたのだろうかのう、、」と問うていた。生まれてかなたつらいことのみで楽しいことのひとかけらもなかった彼女たち。やはり彼女もふみ子が目指した学問と言う光を唯一の希望としていたのだ。だから、ふみ子が置いていってしまったヘレン・ケラーの点字本を持って彼女に届けようとして凍死してしまう。
ふみ子の周囲では唯一と言えるやさしい存在の人間である。彼女がいなかったらふみ子はあれほどの大きな人間になれたかどうか、、。
いい話である。現代日本人が見なければいけない話である。
ただ、映画としてはスケールが小さいかなあ。俳優人はみんな立派だが、高橋恵子の演技でさえ力が入りすぎている。彼女にしてみればこんな役は初めてだろうが、自然さが少し欠けていたようだ。
だが、映画の出来不出来以前に、日本人として人間として見なければならない映画があると言うことも私たちは知らなければならない、と思う。

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