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孤高のメス (2010/日)(成島出) 75点

2010-06-16 13:45:59 | 映画遍歴
この映画、単なるブラックジャック医師の孤高性を表現してもそれなりの評価しか出ない。そこで、ある看護師の日記を通して、心を伝える告白として愛を描くことで広がりのあるいい映画となっている。

【夏川結衣】がいい。白衣の天使たる看護師の仕事に嫌気をさして、もうどうしようもない日常だったのが、ある医師の登場で医学の本質を知りそしてその医師に好意を持ち始める。あれほど厭だった手術も医師の出現で全く違ったものになる。女子高生が教師を好きになって苦手な数学を好きになっていくのと同じだ。

医師の手助けになろうとビデオを見ながら練習を繰り返す。医師は彼女の気持ちに無頓着で仕事の話しかしない。でもこういうことは日常的にもよくあることです。彼女の熱い視線さえ気付かない医師はデクノボウか。

で、話は急に脳死肝移植に舞台を変える。この辺りはちょっと性急気味の脚本で、法律違反までして手術を行おうとする医師、そして賛同する同僚、院長。いくらなんでもねえ、と嘘っぽく見えるのだが、それを悪医者の医長がマスコミを先導するなど下種っぽい展開が追い打ちをかける。

本当の主題はひょっとしたらこの辺りなんでしょうが、映画では簡単に医師も承諾し、ドナーの家族も恐らく息子の遺志だろうということで手術に入ることになる。もっと深くこの部分を掘り下げていたら、実に深い映画になったろうに、映画は敢えてこの部分を避けたかのように、通俗的になってくる。

高校生のドナーに対してもう老い先幾ばくもない老人の患者という取り合わせは法律違反までして行う種類のものでもないと僕は思える。ましてやそんな大手術を小さな市民病院で執刀するというのも疑問。

とか、いろいろ言いたい部分もありますがここまで。

話は戻り、そんな医師も転院して行く。看護師は見送るとき、気が動転して椅子に座りこみ立ち上がれないほどだが、もちろん医師はそんなことを知る由もない。病院の同僚は気を利かせて記念写真の際医師の隣に彼女を立たせる。それでも何とも思わない医師。

そして車で去っていく医師に思わず走り寄り愛の告白をする彼女。だが、それは手術中カセットから流れていた都はるみが好きになりました、という間接的な告白であった。医師はただほほ笑むだけでまだKYである。

その看護師も今は亡く、息子がある病院の医師として赴任する。院長の部屋に待っているとそこには、あの記念写真が机の上に置かれていた、、。

冒頭の看護師の葬式から始まるこの愛の告白話はとても美しい。KYだった医師も本当はKYの振りをしていただけかもしれないが、【堤真一】が熱演。映画の構成がとても素敵な映画でした。歳月を超え人を愛するという人間の純粋な気持ちを高く謳った映画でした。心が洗われます。佳作です。

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