Sightsong

自縄自縛日記

大島渚『Kyoto, My Mother's Place』

2015-05-04 07:28:10 | 関西

大島渚『Kyoto, My Mother's Place』(1991年)を観る。

大島渚が、英BBCから依頼されて撮った1時間弱のテレビドキュメンタリーである。なお、大島の意向により16ミリフィルムが使われており、フィルムならではの淡く美しい映像となっている。『戦後50年 映画100年』に収録されたシナリオを読んで以来ずっと観たいものだと思っていたが、2014年にようやくDVD化された。

京都は大島が生まれた場所ではない。瀬戸内の海の近くに生まれ(そのために渚と命名された)、「王子」のような幼少時代を送っていたが、小学1年を終えたころ、父親の死により、母親の実家がある京都に越してくることになる。そこは、タイトルにあるように、自分の土地ではなく母の土地であった。

開放から閉鎖へ、明から暗へ。大島は京都を憎んだ。

「権力者にはそむかず……
 隣近所に気を使い……
 摩擦を起こさず……
 火事を出さず……
 美しく飾り……
 何事にも堪え忍ぶ……
 こうして美しい京都は完成した。
 若い私にはそれが我慢ならなかった。
 どうして堪え忍ばなければならないんだ。
 京都なんか燃えてなくなればいいんだ。
 私は中世末期の戦乱の中の英雄、織田信長のことを考えていた。」

この怨嗟の声を裏返しにするとまさに大島渚の作品になる。大島が(外国向けということもあってか)外から第三者が観察したように京都の歴史を語ってみせることも興味深い。町家や街路や寺を撮るカメラアングルには、悪意が漲っている。

その一方で、語りの中と声の表情に、憎しみとは正反対の愛情も同時に強く感じられることが、実に面白い。

●参照
大島渚『飼育』(1961年)
大島渚『忘れられた皇軍』(1963年)
大島渚『青春の碑』(1964年)
大島渚『アジアの曙』(1964-65年)
大島渚『大東亜戦争』(1968年)
大島渚『新宿泥棒日記』(1969年)
大島渚『少年』(1969年)
大島渚『夏の妹』(1972年)
大島渚『戦場のメリークリスマス』(1983年)


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