大島渚『飼育』(1961年)を観る。前年の『日本の夜と霧』騒動で松竹を退社したあとの、最初の作品である。配給は、新東宝から派生してできた大宝による。
わたしは、90年代に、池袋にあったACT SEIGEI THEATERで「大島渚オールナイト」で本作を観た。しかしもう眠く、あまり覚えていなかった。
敗戦直前、長野県の山村。撃墜されたB29からパラシュートで脱出した黒人兵が、村人たちによって捕らえられる。山村とはいえ、働き手の若い男を軍隊に取られ、東京からの疎開者も多く、食糧事情は厳しい。そのような中で、「いずれ憲兵隊に表彰される」という理由で、村人たちは、黒人兵を農作業小屋の鎖につなぎ、食べ物を与える。やがて、諍いがあり、戦死の報があり、村人たちの間に大きな歪みが出てくる。かれらは、その原因を黒人兵の出現に見い出し、殺すことにする。
日本の田舎固有の硬直し歪んだ権力関係や、むき出しの性欲や、支配欲や、暴力欲が、何のオブラートにも包まずに、これでもかと見せつけられる映画である。そして、外部から視れば如何に異常なことが行われていようとも、最後は、「丸くおさめよう」との意思がすべてに勝利する。
カリカチュアだとはいえ、突飛な世界だとは思えないのは、<日本>であるからか。
ところで、脚本協力に「松本俊夫、石堂淑朗、東松照明」とある。東松照明は何を請われたのだろう。
●参照
○大島渚『忘れられた皇軍』(1963年)
○大島渚『青春の碑』(1964年)
○大島渚『アジアの曙』(1964-65年)
○大島渚『大東亜戦争』(1968年)
○大島渚『新宿泥棒日記』(1969年)
○大島渚『少年』(1969年)
○大島渚『夏の妹』(1972年)
○大島渚『戦場のメリークリスマス』(1983年)