井上剛『その街のこども 劇場版』(2010年)を観る。
NHKで放送されたヴァージョンを再編集して劇場公開された作品。テレビドラマ版以来3年ぶりに観たわけだが、また沁み入るような気持ちにさせられてしまった。
1995年1月17日早朝、阪神・淡路大震災。そのときに小中学生だったふたりが、15年目のその日に、神戸で出逢う。異なる体験を抱えるふたりは、何故か、真夜中に神戸の街を延々と歩くことになる。
渡辺あやの練られた脚本が良いことに加えて、大友良英の音楽、まるでホームヴィデオのようにアンビエント性を摂り込んだ撮影、それに主演ふたりの演技(森山未來、佐藤江梨子)が出色。やっぱり名作ではないか。
阪神・淡路大震災から15年目、後で振り返ってみると、東日本大震災の1年前。映画では、15年間という時間により、実際に消えたもの、記憶のなかで薄くなったもの、別の形で熟したものが、提示されていた。
いまは、東日本大震災から丸3年。出鱈目な政策を見るにつけ怒りを覚える。まだ美しく包むべきではない。
●参照
○テレビドラマ版『その街のこども』
○テレビドラマ版『クライマーズ・ハイ』(井上剛演出)