Sightsong

自縄自縛日記

1972年のエルヴィン・ジョーンズ

2018-09-08 09:28:39 | アヴァンギャルド・ジャズ

1972年のエルヴィン・ジョーンズといえば、名盤『Live at the Livehouse』の第1集と第2集(Blue Note、1972年)である。

Dave Liebman (ss, ts)
Steve Grossman (ts)
Gene Perla (b)
Elvin Jones (ds)

はじめて聴いた当時はサックスの違いがよくわからず、またゴリゴリすぎてあまり馴染めなかった。いま改めて聴いてみると、最小限のメンバーでエネルギーを放出しまくっていることが実にクールでカッコよく思える。特にスティーヴ・グロスマンの独特の情が入ったブロウには痺れる。これと比較すると、後年にメンバーを頻繁に入れ替えてエルヴィンが父親のように振る舞ったジャズ・マシーンが、緊張感に乏しいショーケースのように思えてしまう。

『Mr. Jones』(Blue Note、1969、72年)は『Lighthouse』の影に隠れている。しかし、特に1969年よりも72年のセッションがやはり良い(『Lighthouse』の約2か月前)。パーカッションやコンガの打楽器を増やしていることは気にならない。エルヴィンが圧倒的なので居ても居なくても同じようなものだ。72年の5曲中3曲では、われらがヤン・ハマーがピアノを弾いていることが面白く、これがサウンドの手触りの大きな違いとなっている。どちらも悪くない。とはいえ、ハマーがピアノを弾かず、デイヴ・リーブマンも吹かず、スティーヴ・グロスマンが管楽器ひとりで情感たっぷりに演奏する「Soultrane」が白眉かと思えたりもする。

1969年
Joe Farrell (ts)
George Coleman (ts)
Pepper Adams (bs)
Wilbur Little (b)
Elvin Jones (ds)
Candido Camero (cga)

1972年
Dave Liebman (ss, ts)
Steve Grossman (ss, ts)
Pepper Adams (bs)
Thad Jones (flh)
Jan Hammer (p)
Gene Perla (b)
Elvin Jones (ds)
Frank Ippolito (perc)
Albert Duffy (tympani)
Carlos "Patato" Valdes (cga)

『Paris 1972』(Jazz Time、1972年)は『Lighthouse』の翌月、パリにおけるライヴ2枚組。1枚目では1曲でアート・ブレイキー、2曲でロイ・ヘインズが加わる謎編成だが、何かフェスででもあったのかな。ただそういうものは別に面白くはない。90年代にどこかのジャズフェスで、エルヴィン、ロイ・ヘインズ、それと誰かが3人並んで叩くという企画を観たが、くだらなくて忘れてしまった。

もちろん『Lighthouse』のメンバーであるから聴き所満載。特に、ここでもグロスマンがワンホーンで吹く「Soultrane」か。

Elvin Jones (ds)
Dave Liebman (ss, ts, fl)
Steve Grossman (ts)
Gene Perla (b)
Art Blakey (ds)
Roy Haynes (ds)

グロスマンとリーブマンの強力ツインサックスを置いたグループだとこんなところだが(録音は他にもある)、さらにこのあとの11月には、菊地雅章、ジーン・パーラとのピアノトリオでの傑作『Hollow Out』(Philips、1972年)を吹き込んでいる。充実した年だったのだな。

Elvin Jones (ds)
Masabumi Kikuchi 菊地雅章 (p)
Gene Perla (b)

●エルヴィン・ジョーンズ
エルヴィン・ジョーンズ(1)
エルヴィン・ジョーンズ(2)
チコ・フリーマン『Elvin』(2011年)
ベキ・ムセレク『Beauty of Sunrise』(1995年)
ミシェル・ドネダ+エルヴィン・ジョーンズ(1991-92年)
ソニー・シャーロック『Ask the Ages』(1991年)
エルヴィン・ジョーンズ+田中武久『When I was at Aso-Mountain』(1990年)
エルヴィン・ジョーンズ『Live at the Village Vanguard』(1968年)、ジョージ・コールマン『Amsterdam After Dark』『My Horns of Plenty』(1978、1991年)
アルバート・マンゲルスドルフ『A Jazz Tune I Hope』、リー・コニッツとの『Art of the Duo』(1978、1983年)
エルヴィン・ジョーンズ『At Onkel Pö's Carnegie Hall Hamburg 1981』(1981年)
高橋知己『Another Soil』(1980年)
菊地雅章+エルヴィン・ジョーンズ『Hollow Out』(1972年)
フィニアス・ニューボーンJr.『Back Home』(1969年)
藤岡靖洋『コルトレーン』、ジョン・コルトレーン『Ascension』(1965年)
ロヴァ・サクソフォン・カルテットとジョン・コルトレーンの『Ascension』(1965、1995年)
マッコイ・タイナーのサックス・カルテット(1964、1972、1990、1991年)
『Stan Getz & Bill Evans』(1964年)
ソニー・シモンズ(1963、1966、1994、2005年)
ジミー・フォレスト『All The Gin Is Gone』、『Black Forrest』(1959年)


纐纈雅代@Bar Isshee

2018-09-08 08:14:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

千駄木のBar Issheeで纐纈雅代ソロ(2018/9/7)。

Masayo Koketsu 纐纈雅代 (as)

最初の一音の圧力で思わずのけぞる、わかってはいても。30分ほどのフリーの演奏は、そのように鳴らし切るアルトがハコの中で反響した。それだけでなく、周波数によっては鼓膜が共振し、その耳内の鼓膜のぎゅわんぎゅわんという物理的な動きの音がエレクトロニクスのように聴こえた。大きな共鳴の中からまた別のフローが出てくるサウンドだった。

セカンドセット。『Band of Eden』でも演っているオリジナル「カラスの結婚式」、それから「天の岩戸」。続いて、チャーリー・パーカーの「Kim」と「Parker's Mood」。ここでは最初のフリーとは違ってバップらしく音節を細かく切っていくスタイルなのだけど、パーカーのアルトがドライに小気味よくカーブを曲がっていくような感覚であるのに対し、纐纈さんのアルトはより生々しいものに聴こえた。そして、「Autumn In New York」では、その中で、「April In Paris」、「Lover Man」、「I'll Remember April」をメドレー的につないでいった。

たまに体感するとまた迫力が増していて驚かされる纐纈雅代サウンド。

ところで「秘宝感」の話も出た。仮に再結成が難しいとしても、当時の音源はいろいろと聴いてみたいものである。2012年にいちどだけライヴを観たが底なしに愉快だった。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●纐纈雅代
纐纈雅代トリオ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年)
纐纈雅代@Bar Isshee(2016年)
板橋文夫+纐纈雅代+レオナ@Lady Jane(2016年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)
鈴木勲セッション@新宿ピットイン(2014年)

渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)
秘宝感とblacksheep@新宿ピットイン(2012年)
『秘宝感』(2010年)
鈴木勲 フィーチャリング 纐纈雅代『Solitude』(2008年)