デイヴィッド・マレイのオクテット(8人)といえば、ヘンリー・スレッギルのアルトサックスの存在感が際立っている『Ming』(Black Saint、1980年)や『Home』(Black Saint、1981年)、『Murray's Steps』(Black Saint、1982年)がとても好きで良く聴いていたのだが、最近、この『Dark Star [The Music of the Greatful Dead]』(astor place TCD、1996年)がわりと気になって何度も聴いている。グレイトフル・デッドのカバー集である。
スレッギル入りの3作が、不穏で怪しいムードのなかエネルギーに満ちた音楽だったとすれば、これは原曲がロックであるためか、ひたすら楽しく聴くことができる。マレイの変なサックスは登場するたびに待ってましたというところだ。ちょっと外れた音でこぶしをきかせまくるし、高音のフラジオもいつも通り過剰。去年はいけなかったが、またかぶりつきで聴きたいものである。全体をひっぱるドラムスと、グルーヴィーな雰囲気を醸すオルガンがまた良い。
とは言いながら、グレイトフル・デッドのことは、ギタリストのジェリー・ガルシアがオーネット・コールマン『Virgin Beauty』(Sony、1987年)に参加したということしか知らない(ジャズファンとしてのみの一面的な知識)ので、図書館で2枚借りてきた。
マレイ盤に入っている曲のうち、「Shakedown Street」は同名のアルバム『Shakedown Street』に、「Estimated Prophet」と「Samson & Delilah」は『Terrapin Station』に収録されている。1977年、78年に録音されたものだ。もっとやかましくノイジーなものを期待していたが、一聴(というか何度聴いても)、昔のロックは上品だったのだなという印象しか抱かない。このあたりは、そのうち誰か詳しい人に教えてもらおう。他にもグレイトフル・デッドをとりあげたジャズはあるのかな。
このあと、マレイのオクテットは、コルトレーン曲をとりあげた『Octet Plays Trane』(Justin Time、2000年)を発表する。やはりマレイの入っているワールド・サキソフォン・カルテットのマイルス・デイヴィス集ほど衝撃的ではなかったが、こういう企画なら、一昔前の日本制作の変な商売ネタCDとは違って、大歓迎なのだった。
オクテットの記録は、スレッギル参加作、このデッド集、それからコルトレーン集のほかに幾つかある。そのうちのひとつが、日本盤も出てスイングジャーナル誌でもてはやされた『PICASSO』(DIW)だ。いつだかに四谷のジャズ喫茶「いーぐる」でマレイをリクエストしたところ、探したけどこれしかないと言われ、(いろいろな意味で)がっかりしたたことを思い出した。
>サックス兄弟の契り
よくわかりませんが(笑)、いいですね。オクテットも良いですが、ワンホーンも捨て難いところです。