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自縄自縛日記

園池公毅『光合成とはなにか』

2014-02-13 23:21:27 | 環境・自然

電子書籍で、園池公毅『光合成とはなにか 生命システムを支える力』(講談社ブルーバックス、2008年)を読む。

著者によれば、光合成の説明として、「植物が光によってデンプンなどを作る働き」とするのは小中学生レベルの答え、「植物が光によって水を分解して酸素を発生し、二酸化炭素を有機物に固定する反応」となれば高校生レベル、さらに「光によって環境中の物質から還元力を取り出し、その還元力とエネルギーによって二酸化炭素を有機物に固定する反応」が大学生レベル、そしてまたさらに先がある。実に奥深い世界なのである。

太陽光エネルギーを得る方法も、エネルギーやマテリアルのフローも、種や環境によってまったく異なり、一筋縄では捉えることができない。また、植物は単なる受け手ではなく、環境に応じて能動的に光合成のあり方を変えてみせる。もう不思議と言うほかはない。

そもそも、この世界の多様な植物はどのように進化してきたのか。27億年ほど前、好気性のシアノバクテリアが登場した。それは1回限りの出来事であったとしても、結果として生まれた光合成生物は、他の生物との共生を繰り返した。つまり、葉緑素をもつ生物が、他の生物と合体していったわけである。へええと簡単に済ませる話ではない。

また、地球環境と光合成は切っても切り離せない関係にあるわけだが、著者は、最近の気候変動についても、実に真っ当な見方を提供する。

しかし、今では、どうしようもない陰謀論や一見わかりやすい科学が、その低水準(たとえばこのようなもの)にも関わらず、社会に一定の影響力を持ち続けている。バカバカしい限りなのだが、どうすればいいのだろう。このような言説は、歴史修正主義のように、論破されても、論理とは関係ない隙間からまた生えてくる。

●参照
只木良也『新版・森と人間の文化史』
上田信『森と緑の中国史』
そこにいるべき樹木(宮脇昭の著作)
東京の樹木
小田ひで次『ミヨリの森』3部作
荒俣宏・安井仁『木精狩り』
森林=炭素の蓄積、伐採=?
宮崎の照葉樹林
佐々木高明『照葉樹林文化とは何か』
多田隆治『気候変動を理学する』
小嶋稔+是永淳+チン-ズウ・イン『地球進化概論』
米本昌平『地球変動のポリティクス 温暖化という脅威』
ノーム・チョムスキー+ラレイ・ポーク『Nuclear War and Environmental Catastrophe』
ダニエル・ヤーギン『探求』
吉田文和『グリーン・エコノミー』
『グリーン資本主義』、『グリーン・ニューディール』
自著
『カーボン・ラッシュ』