電子書籍で、園池公毅『光合成とはなにか 生命システムを支える力』(講談社ブルーバックス、2008年)を読む。
著者によれば、光合成の説明として、「植物が光によってデンプンなどを作る働き」とするのは小中学生レベルの答え、「植物が光によって水を分解して酸素を発生し、二酸化炭素を有機物に固定する反応」となれば高校生レベル、さらに「光によって環境中の物質から還元力を取り出し、その還元力とエネルギーによって二酸化炭素を有機物に固定する反応」が大学生レベル、そしてまたさらに先がある。実に奥深い世界なのである。
太陽光エネルギーを得る方法も、エネルギーやマテリアルのフローも、種や環境によってまったく異なり、一筋縄では捉えることができない。また、植物は単なる受け手ではなく、環境に応じて能動的に光合成のあり方を変えてみせる。もう不思議と言うほかはない。
そもそも、この世界の多様な植物はどのように進化してきたのか。27億年ほど前、好気性のシアノバクテリアが登場した。それは1回限りの出来事であったとしても、結果として生まれた光合成生物は、他の生物との共生を繰り返した。つまり、葉緑素をもつ生物が、他の生物と合体していったわけである。へええと簡単に済ませる話ではない。
また、地球環境と光合成は切っても切り離せない関係にあるわけだが、著者は、最近の気候変動についても、実に真っ当な見方を提供する。
しかし、今では、どうしようもない陰謀論や一見わかりやすい科学が、その低水準(たとえばこのようなもの)にも関わらず、社会に一定の影響力を持ち続けている。バカバカしい限りなのだが、どうすればいいのだろう。このような言説は、歴史修正主義のように、論破されても、論理とは関係ない隙間からまた生えてくる。
●参照
○只木良也『新版・森と人間の文化史』
○上田信『森と緑の中国史』
○そこにいるべき樹木(宮脇昭の著作)
○東京の樹木
○小田ひで次『ミヨリの森』3部作
○荒俣宏・安井仁『木精狩り』
○森林=炭素の蓄積、伐採=?
○宮崎の照葉樹林
○佐々木高明『照葉樹林文化とは何か』
○多田隆治『気候変動を理学する』
○小嶋稔+是永淳+チン-ズウ・イン『地球進化概論』
○米本昌平『地球変動のポリティクス 温暖化という脅威』
○ノーム・チョムスキー+ラレイ・ポーク『Nuclear War and Environmental Catastrophe』
○ダニエル・ヤーギン『探求』
○吉田文和『グリーン・エコノミー』
○『グリーン資本主義』、『グリーン・ニューディール』
○自著
○『カーボン・ラッシュ』