調布市の仙川まで足を運び、東京アートミュージアムで、田村彰英写真展『仙川の変遷 1995~2012』を観る。
本来の目的は、まもなく取り壊されるという故・安部公房邸を一目見ることだったが、それはまたあらためて。
東京アートミュージアムというところは、ずいぶん細長いハコだった。実は、このことと、本写真展のなりたちとは密接に関係している。
1980年代後半からのバブル景気。このあたりに広大な農地を持っていた地主は、土地の売却や相続税の支払いに悩む。さらに、土地を貫く道路建設計画が浮上。結果として、中途半端な細長い敷地の利用を含め、新道路周辺の設計が、安藤忠雄氏に依頼される。また、田村彰英氏には、変わりゆく土地の撮影が依頼される。
以上のようなことが、おそらくは美術館と写真群の意義である。
撮影はタチハラの8×10を使ってなされたようであり、そのため、大きなプリントも精密で見応えがなくはない。しかし、どうも面白くない。ざっくりいえば、当事者に意味のある都市開発の歴史と、その定点観測という依頼仕事に過ぎない。しかも、肝心の写真が、はるか上の天井近くに展示されていたり、狭い階段からしか観ることができなかったりと、妙なコンセプトである。
これまで、わたしはこの写真家の作品に、ぞくりとするような色気を感じていた。それだけに残念である。
(ところで、SNSでも、おかしな陰謀論が展開されていることに気がついた。)