「中東カフェ」(>> リンク)が楽しかった。聴いてくださった人たちは楽しかったのかどうか不明だが。ネオリベ的排出権なんてことをじわじわと考えてみようかとおもった。
一昨日、パースで仕事が終ってしまい、スーツ姿で深夜便に乗るまで行き場所を失ってしまった。郊外に行くほどの気力もなく、「Cinema Paradiso」という映画館で、たまたまやっていた『The Band's Visit』(エラン・コリリン、2007年)を観ることにした。7ドル。
監督のエラン・コリリンはイスラエル人。幼少時には、イスラエルでも、エジプト映画の人気があったということで、その記憶がこの映画にも反映されている。
エジプトの警察音楽隊が、イスラエルの「アラブ文化センター」の招きで、演奏のため訪れる。何かの間違いで、空港には誰も出迎えがきておらず、独力で着いたその街には小間物屋兼レストランが寂しく建っていた。店の女主人は、「アラブだろうとイスラエルだろうと、文化なんてもんはここには無いね!」と、ばっさり。しかし人情に篤く、従業員と手分けして楽団員を泊めてやることにする。イスラエル人も、エジプト人も、それぞれに悩みや心の傷を抱えていて、一晩のうちにそれを見せ合い、お互いの壁が崩れていく。
若手の楽団員がやんちゃで面白い。空港で皆が途方にくれているとき、窓口の女性に対して「貴女には眼がある・・・チェット・ベイカーを知っている?」と言って、『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』を唄ったりする、かなり浮いた存在。イスラエルの田舎町で泊まるときにも、楽団のリーダー(この人が固くてまた面白い)は、監視の必要があると思い、店の女主人宅に一緒に泊まらせる。けれども、若者はやはり、「チェット・ベイカーを知っている?」をはじめ、トランペットを吹いたりする。このとき、固い楽団のリーダーが、「チェット・ベイカーなら全ての録音を持っている。ハリー・ババシン楽団でのデビューから、1988年に亡くなる前まで。」と、意外な側面を見せつつ、若者の思いいれたっぷりのトランペットに対しては「いい演奏だ。でも低音がちょっと弱いな。」などと、相変わらずの堅物ぶりで客席の笑いを誘っていた。
笑いはこれだけではなく、何回も観客席(20人くらいしかいなかったが・・・)から自然な笑いがわきおこった。それからほろりと来る人情。思いがけず、かなりいい映画だった。ちょっと前という設定であり、おそらくは90年代の中東和平の気運が盛り上がったころなのだろう。
帰国後調べてみたら、日本でもつい最近、『迷子の警察音楽隊』というタイトルで公開していた。
なぜかオーストラリアでは、オーストラリア人も日本人も、オーストラリア料理のようなものを薦めない。1人では、なおさら何か珍しいものを食べようという気にまったくならない。旅先での1人のゴハンはつまらない。どうでもよくて、中華料理とか日本料理とか、何も考えなくていいものを食べた。
パースでは日本人向けに『The Perth Express』というフリーペーパーが出回っていて、最新の号が「アジア麺大特集」だった。「FOUR SEAS CHINESE BBQ」では「ワンタン&BBQポーク入りヌードル」を、「JAWS回転寿司」では妙な回転寿司何皿かとうどんを食べた。寿司屋はたくさんあって、だいたい日本人や中国人が作っているようだ。ただ、値段がやたらと高く、回転寿司一皿が500円くらいしたりする。3皿とうどんでもう2,000円。どこで何を食べても高い。日本の定食屋は偉い(?)。