イラクで成立に向けた動きがある「石油法」にちょっと興味があったので、石油法に反対する主旨の集会に参加してきた。
「平和と民主主義をめざす全国交歓会」(ZENKO)が主催する、『イラクから全占領軍撤退!石油法反対! 7/30イラク石油法戦線議長スブヒ・アルバドリさん来日歓迎集会』(2008/7/30、星陵会館)だが、スビヒ・アルバドリ議長自身は、ビザの発行が間に合わなかったとのことで現れなかった。主催者の説明によると、日本にはヨルダンを経由して来るが、イラクにはヨルダン大使館が現在なく(運送会社が代行している)、難民流入の防止や、治安維持の観点からビザ発行には1.5~2ヶ月くらいかかっているという状況らしい。
開会前には、阿部知子衆議院議員(社民党)がことばを選びつつ、今年末にイラク駐留に関する国連安保理決議が終了してしまうこと、戦争を止めたいという大勢の思いを形にしたいこと、などの挨拶をされた。
次に伊藤成彦・中央大学名誉教授による短いスピーチ。
○米国の軍事介入から5年。大量破壊兵器の存在が虚構であったことが明白になった今、狙いは石油であったことがわかった。
○撤退によって治安が回復するのは明らかだが、米国の主張は逆であり、どうもオバマ候補もその方向にゆらいでいるようだ。
○侵略者が撤退し、イラクにまかせるべきだという世論を形成したい。日本にも米軍がいるが、それをモデルにイラクを永久占領しようとしている。
○石油法は国会で通らない状況。石油収入の60%が外資、40%がイラクという構図だが、後者にしても有力者に流れ、国民は使えない。
主催者側の基調講演では、国連安保理決議が年末に終了することにかわる、見えないところで調整されている米軍駐留協定の内容を整理していた。まだよくわからないとしつつも、米軍の無期限駐留、恒久基地の保持、不公平な地位協定、イラクの「安全保障」のコントロールなど、いかにもと思わせる内容ばかりが列挙されている。
イラクからは、議長が間に合わなかったため、子どもの教育に携わっているというアザト・アフメド氏と、カナダで労働組合の活動をしているアムジャド・アルジャハリ氏が報告をした。
●アザト・アフメド氏(イラク子ども保護センター代表)
○センターの活動としては、キルクークでの新しい方法による教育、遠隔地の村でのコンピュータ・美術教育、写真や絵をバグダッドで見せたりする平和モニュメント、キルクークでの子どもへの暴力に関する教師への教育、手術が必要な子どもへの経済的支援、などを行っている。
○子どもへの暴力に関しては、協力的な教師と、歓迎しない教師とがいる。後者に対しては、その実情をメディアを通じて開示すると言いつつ、正しいあり方を上から教えつける。
●アムジャド・アルジャハリ氏(IFC北米支部代表)
○イラクの労働運動は分裂している。これには、占領軍が民族や宗派で分割して統治していることも原因として挙げられる。
○例えば北部の労働組合はクルド人のみ、南部の労働組合はシーア派のみといった具合であり、実際には大っぴらな差別はしないが背景の異なるメンバーの入会は歓迎されない(入れない)という状況である。
○誰でも入ることができる労働組合をつくりたい。
○労働者自らが発言できる環境をつくりたい。
○この理想に向けた大きな会議を、2009年2月に開催する。既にイラク国内では15以上の組合が呼応しており、また米国などの団体からも反応があった。
○石油法に関しては、企業は倫理を謳っていても、「カネは原則を持たない(Money does not have principle normally.)」が真実だとおもう。実際に、人権重視を謳っている商社は、35年間もサダム・フセインと付き合っていたではないか。イラクの富や未来について干渉したところで、今後民主的な選挙に基づく政権ができたとき、それが無に帰する可能性はある。
○イタリア政府がリビア政府と最近合意し、占領時に奪っていたものを返す(pay back)することとなった。イラクにも同じことがあってほしいと信じる。
○石油法は、イラクにおいては、別の種類の占領(経済占領)だと信じられている。国会で通過しないままにとどまっているのは、メディアを通じた活動が奏功していることが大きい。
実際に、大西圓(JETRO)『イラク石油法を巡って』(中東協力センターニュース、2007/10/11、>>リンク)を読むと、(石油という)国富の放棄、同時に米国などの利益の増大、宗派・民族問題の複雑化などを密接に関連していることが少し見えてくる。
たぶんこれだけでは視点が偏っているので、気をつけて追っていくべきかとおもっている。